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【小説】私をくいとめて

📚私をくいとめて
🖋️綿矢りさ

黒田みつこ(32)は、1人で生きてゆくことになんの抵抗もないと思っていた。それも、彼女の頭の中には"A"という彼女の分身がいた。悩みや相談ごとは"A"が解決してくれるのだ。

「おひとりさま」という言葉ができて、ひとりで過ごすことに抵抗が無くなってきたように感じます。いつも誰かと一緒にいなくてはならないという縛りがなくなり、主人公のみつこも「おひとりさま」を楽しみながらも、頭の中に"A"という存在がいます。"A"は話しかければいつでも返事をくれて、優しく彼女を励ましてくれるので、いつもみつこは"A"と頭の中で会話をしています。

月に1度みつこの家にやって来る多田くんは、みつこの会社の取引先の営業マンで、家が近所なこともあり時々夕飯のおかずを分けてもらいにやって来る。
玄関で彼の持ってきたタッパーにおかずを入れて渡すだけの不思議な関係だった。みつこはある出来事から恋愛に積極的になれなくなってしまい、多田くんとの関係に進展は見られなかった。


個人的に会社の先輩のノゾミさんが好き。理想的な関係。会社の休憩室でいつも2人でくだらない話をするシーンは楽しかった。ノゾミさんが推している変わり者の『カーター』もいいキャラクターです。

頭の中の"A"は、みつこの分身ながら意見や考え方が違うのも面白かったです。みつこを否定したりすることはしないけど、こうした方がいいと前向きになれるアドバイスをくれます。まさにこんな人が側にいたらいいなーという感じ。

みつこのようなアラサー女性はたくさんいるんじゃないかなと思います。仕事でほとんどの時間を過ごして休日は溜まった家事をする。友達も仕事や結婚などでいつでも会えるわけではなく、恋愛も何年もしていない。日々自問自答して過ごしていると、だんだんひとりでいることが当たり前になっていく。
自分の"外側"の人と関わらなくなっていく。

わかるなぁ〜と思いながら楽しく読めました!

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