お店の戦略を考える前に "そもそも"考えるべきこと #お店note
昨日はKATALOKooo代表の翠川さんをお招きして、「これからのブランドをつくるキーワード」をテーマにお話しました。
私も翠川さんも伝統的な小売業とWebマーケのどちらも経験しているので、小売業界とITの間にある誤解や溝への課題意識も共通しており、話が尽きない楽しい時間でした。
イベントの様子は #お店note のハッシュタグで実況してくださった方も多かったので、ぜひあわせてチェックしてみてください。
これからのブランドづくりから発信の方法、小売店舗や卸のこれからなど話題は多岐に渡ったのですが、個人的に一番共感したのは『ITの常識は小売の非常識』というワード。
特に成長スピードのイメージは、ITとリアルビジネスの間には大きな乖離があります。特に在庫回転と生産リードタイムの感覚が大きく異なるため、大型発注を受けて工場に製造を依頼したら事前入金の額が大きすぎてキャッシュフローが悪化し、黒字倒産するというケースも少なくありません。
前回のsnaq.me服部さんとのイベントでも在庫というキャップがあるからこそのリアルビジネスの難しさについて触れられていましたが、モノを扱うブランドの難しさは急激なスケールが不幸につながる点にあるのではないかと思います。
では受注生産にすれば解決するかというとそんなことはなく、そもそも受注生産型でユニコーンレベルまで成長した企業はほぼありません。(マットレスなど高額でそうそう買い換えないもの、じっくり検討する商材は受注生産に向いている場合もあります)なぜならコアファン以外は商品を数ヶ月も待つことができず、受注生産は在庫リスクが小さい代わりに機会損失が大きいからです。
さらに翠川さんいわく、受注生産はひと型ひと型個別に作らなければならない分工場側の負担も大きく、実はソーシャルグッドではない側面もあるそうで、その視点は私も目から鱗でした。
最近はITの文脈から小売やものづくりに着手するブランドも増えてきましたが、これまでのWeb業界のイメージで急激な成長カーブを描くと在庫管理とキャッシュフローの面で躓く危険もあると思います。今後小売とITどちらも経験があるハイブリッド型のCFO人材が求めらていくはずですが、今のところ両方の知見と肌感覚をもつ人材は極めて希少な人材なので、育成には数年かかりそうだよね、なんて話もしていました。
そしてイベント後にトーク内容を振り返りながらサクちゃんも交えてお店トークをしていたのですが(実はサクちゃんも20年近くお店をやっているエキスパート!)、一口に『ブランド』と言っても目指す方向性や規模感によっていろんな種類があるのに、そこが細かく分類されていないことが不幸の始まりなのかもしれないと思いました。
例えばお店と一口に言っても、すべてのお店が長く続けることをゴールにしているわけではありません。そのときブームになったもの、自分が興味を持ったものをベースに展開して2、3年で稼ぎきり、次の商材に移る企業もあります。そもそも人は飽きる生き物ですし、誰もが簡単にオンラインでお店を持てる時代になったからこそ、本業がお店ではない人たちもこれからたくさん増えていくはず。
そのときに『いつかお店を畳む日のこと』や『企業に売却すること』、『業態展開すること』などを加味しておかないと、売れなかったときよりもうっかり売れて人気になってしまったときの方が、辞めるに辞められず『こんなはずじゃなかった…』となってしまうケースが増えると思うのです。
できるなら大きくしたいという場合も、少なくとも小売業の力が強い日本においては完全に直販だけでスケールするのは至難の技ですし、ということははじめから小売に卸す価格設定をしておかなければならないということ。
はじめに何を目指すのか、何が自分たちにとっての幸福なのかを定義せずにゆるっとはじめてしまうと、『売れてしまったがゆえの不幸』がのしかかってくるのです。
小売に限らず、世の中に流通している情報は『成功するため』『もっと売上を増やすため』のものが多いですが、そもそも自分が目指すスケール感と実働年数のイメージはどのくらいで、そこで最低限負けないためにクリアしておくべき項目は何なのかからはじめるべきなのかもしれない、と改めて感じたイベントでした。
プロデューサー就任の所信表明にも書いた通り、note for shoppingで目指していきたいのは単に『売上が増えること』ではなく『お互いの心が豊かになる買い物体験を増やすこと』。
モノが売れること、活動を継続するためのお金を稼ぐことは全クリエイターにとってとても大切なことです。
ただ、そのために売上を数字で見て心をすり減らすのではなく、売り手も買い手も心が豊かになっていくような買い物体験を増やしていきたい。
それが私がこれからnote for shoppingというプロジェクトで目指していきたいことです。
小さいなら小さいなりに、大きくなりたいなら大きくなりたいなりに、それぞれのサイズ感や目指す姿にあわせた発信方法を私もこ模索していきたいと思います。
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