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ファッションブランドとアイドルの親和性

最近、朝電車に揺られていて気づいたのですが、今時の中高生ってよく電車の中でPV(MV)を見ているなあと思います。

しかも、K-POPのガールズグループのPVを見ていることが多い。これってよく考えたらけっこう不思議な現象だなと思います。

PVは「プロモーション・ビデオ」の略であり、その音楽の広告的な要素も含んでいます。

本来であれば見過ごされるどころか嫌われてもおかしくないはずのものが、能動的に見られている。これはすごいことだと思います。

逆に見る側の心理を考えてみると、そのアーティストが好きという以上に、PV自体の世界観に惹かれている側面もあるのではないかと思います。

そしてその違いが、AKB48のPVではなく韓国アイドルのPVを見るという行動に現れているのではないかと思います。

例えばAKB48の「恋するフォーチューンクッキー」と少女時代の「Gee」のPVを見比べてみると、その違いがよくわかります。

▼「恋するフォーチューンクッキー」のPV

▼「Gee」のPV

これは男女の好みの違いだと思うのですが、AKB48のかわいさにはある種の野暮ったさがあり、全員同じ「ステージ的な」衣装です。

対して少女時代は原色をふんだんに使ったカラフルな衣装を身につけてダイナミックなダンスを披露しており、女子目線の「かっこいい」を意識したかわいさを感じさせます。

日本のアイドルで同じように「女子ウケ」を狙っているのがE-girlsだと思いますが、日本市場において女子ウケを意識している女性アイドルは少ないため、ほぼ一人勝ちなのではないかと思います。

▼「Love ☆ Queen」のPV

こうした女子ウケ戦略は、CD売上の面では王道アイドルに負けてしまうものの、ファッションブランドとタイアップしやすいという利点があります。

実際、E-girlsには雑誌モデルとして活躍しているメンバーも多く、サマンサ・タバサやRight-onといったブランドと多数コラボしています。

AKB48にもファッションブランドを立ち上げたり、雑誌モデルとして活躍しているメンバーもいるものの、もともと男性ウケをメインで活動してきたこともあり、女子ウケへのモードチェンジに苦労している人が多い印象です。

女子ウケを狙えば、本業である音楽だけでなくファッションの分野まで活動を広げることができる。

これはアイドルとしてのひとつの生存戦略なのではないかと思います。

ファッションブランドは、もっと「アイドル」という装置を利用すべきなのではないか

また、電車内でPVを見る女子高生を見て感じたのは、ファッションブランドはもっと「アイドル」を有効活用すべきなのではないか、ということです。

以前「ファッションブランドこそ動画に注力すべき理由」の中で「『あんな風にかわいくなりたい!』という憧れを醸成するという意味で、動画はファッションブランドにとって相性のいいツールなのではないか」と書いたのですが、ドラマまでいかずとも、きちんと作り込めばたった3分のPVも熱心に見てもらえるわけです。

例えば前段で紹介した3つのPVのうち、少女時代とE-girlsなら「あのPVで○○ちゃんが着てる洋服はどこのだろう!」と思って検索される可能性があります。

それは、単に彼女たちが身につけているというだけではなく、全体の世界観が魅力的だからです。

もちろんAKB48のPVもかわいくて魅力的なのですが、女の子が「真似しよう」と思うにはあまりに非現実的だし、男性向けアイドルだからこそ世界観よりも個人を魅力的に撮るカットが多いため、憧れの醸成には向きません。

例えば、Perfumeと伊勢丹のコラボのように、単にアーティストをCMで起用するのではなく、それぞれの世界観を重ね合わせることで、お互いにブランドイメージを強固なものにすることができるはずです。

さらに言えば、もはやファッションブランド自身が、自分たちのミューズとしてのアイドルを作り出すところまでいってもいいのかもしれません。

PVはもちろん、ライブもテレビ出演もすべて自社ブランドで固め、その世界観を広めてくれる広告塔としてのアイドル。

新規事業として「アイドル事業に乗り出します!」と言えるアパレルブランドはなかなかないと思いますが、avexあたりと組んでメインスポンサーとしてアイドルを育てるって誰もやっていない&アジア市場ならではの戦略なので、けっこう勝機があるのでは?と無責任に妄想したりしています。

モノ単体の魅力よりも、ストーリーとしてのブランドが必要とされている今、ファッションモデルよりも「アイドル」の方が女子の心に火をつける、のかもしれません。

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(Photo by tomoko morishige)

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