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本と映画と、エトセトラ。

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読んだ本・観た映画について気まぐれに。 (photo by tomoko morishige)
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#映画感想

やり場のない感情に光を与える、柔らかなまなざし

やり場のない感情に光を与える、柔らかなまなざし

いまさらながら、李相日監督の「怒り」を観た。

李監督の作品を観たのは「流浪の月」がはじめてで、その映像の美しさと物語の組み立て方に一気に心を掴まれた。

他の作品も観てみたいと思いつつなかなか時間がとれずにいたのだけど、ひょんなことから「怒り」を観たら、「流浪の月」のときよりさらに圧倒されることになった。

物語のテーマは、タイトルそのままの「怒り」。登場人物それぞれが、やり場のない、どうしよう

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美しく滅びゆく「私のすべて」

美しく滅びゆく「私のすべて」

家の中を片付けていると、存在すらも忘れていた懐かしいものに出会うことがある。それまで記憶の片隅にもなかったはずなのに、たったひとつのモノがきっかけで当時の匂いや温度がそのまま蘇る。きっとモノは思い出を閉じ込めておくための外付けハードディスクで、私たちはモノを通じて自分の歩んできた道を記録しているのだろう。

普段の生活では特に役に立たないけれど、生きるために必要なもの。私が私であるために、必要なも

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