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事業づくりは、居場所づくり。糸島に宿やお土産屋さんを作り、地域とつながれる場所に

2021年7月以降、quodはもともと目指していた「地方の在り方」「地域への関わり方」に対して気持ちを新たにし、チームとして一歩踏み込んだプロジェクトを進めている。

quodが拠点とするのは、福岡県糸島市、富山県西部地区、長野県茅野市・立科町の3つの地域。具体的にどのような取り組みをしているのか、地域ごとに深く関わるメンバーに話を聞き、進めているプロジェクトを深堀りしていく。

今回焦点を当てるのは、福岡県糸島市。博多からわずか30分ほどの距離にありながら、豊かな自然の恵みとともに生きている糸島は、多くの人を引きつける。そんな糸島に自ら土地を購入し、月に何度も訪れながら計画を進行中の中川に、ここでの“暮らし”を発信するプロジェクトの全貌を聞いた。

よそ者が地方に関わる“サステナブルな”ビジネスのあり方って?

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── 以前お話を聞いたとき「今年7月以降、パワーをかけて突っ込んでいく」と話していましたが、現在どのようなビジョンやミッションを描いていますか?

まずは、糸島、富山、長野と何度も地方に足を運んでいる僕自身が感じていることから話せれば。

quodが地方にビジネスとして関わる中で、地方企業との関係性を考えるようになったんです。例えば、PRや広告という領域にしても地方企業はかけられるお金が少ない場合も多い。東京の案件と比べて同じ予算の重みが違うし、それなのに地方での仕事のほうがやるべきことは多く、結果を出すのもより難しい。それを同じような感覚で仕事をしちゃうと、ズレが生まれてきたりするんです。だからといって地方に貢献したい気持ちだけで動いていると、都心の企業が「良いこと」をしてるっぽい、で終わってしまう。

でも、それってサステナブルなビジネスのあり方なのかな?出せる価値が他にあるんじゃないかな?都心の企業と地方の企業のあるべき関係性って、もっと違う形なんじゃないかな?と思うようになったんです。最終的には、ちゃんと結果を出して成果としてお金を生まない限り、「仕事」という観点で本当にいい関係は築けないなと。

一方で、都心部に住む僕らが地方との関係性を築くには、「仕事で」よりも「暮らしで」関わることが必要だとも感じています。仕事のためだけに行ってホテルに泊まって……ではなく、その地方に「居場所」があって、そこで過ごすことが自分にとっての日常になる、ということです。それは自分の土地や家を持つという意味の「居場所」だけでなく、そこに友達がいる、行きつけの店がある、ということも「居場所」になると思います。その地域の一員になることがとても大切なんです。

そんな思いから、「僕らと地方企業がお互いwin-winになれる関係性やビジネスのカタチを作り、地域の一員として機能すること」がquodのこれからのミッションだと考えています。その第一歩として、quodが地方で自分たちの事業を作れればいいなと。それが今年の7月以降「パワーをかけて突っ込んでいく」チャレンジです。

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── 設立から4年間、quodの強みを生かした取り組みをしてきたと思います。このタイミングで次のチャレンジへ移行しようと決めたきっかけは?

quodは設立当初から「これからの地方に貢献できる仕事を」という意識でやってきました。飯塚とはよく「地方でやるなら“現代版百姓”にならないとダメだよね」と話すんです。畑を耕して、種を撒いて、水をやって育て、収穫して売るところまで自分でやるように、ネタを作って、必要なところに交渉をして、映像を撮るなりして、広めるところまでquodが担う。PRは広報担当、市場調査はマーケティング部署、と大企業のように役割分担するのではなく、quodの人間が行けば何でもできるチームを作ってきたんです。

たとえば僕が糸島で、全国に知ってほしい企業を見つけたとして、「じゃあPRをしましょう」と言っても、大したことはできないんです。PRしたからって全てが急激によくなるわけでもないし。商品の生産や会社の内部体制など、いろんな要素が関わり合って初めて本当の意味で変わることができる。モノを作るにも、広める方法を実行するにも、一人が何役も担わなきゃいけない。だから“何でもやる”は、地方でビジネスを作っていくために必要なスキルだし、この4年間で培ってこられたのは本当に良かった。

一方で、それだけでquodのビジネスは成り立たないし、会社を成長させて地方にも貢献するには、ずっと今のままを続けるわけにもいかない。ビジネスモデルを作ってサイクルを回す実践を重ねてきて、地方との関係性を構築できてきたことも実感しているから、土台はもうできています。次のステップに進もうとしています。

PRマンが感じる「情報やマーケティングよりリアルな出会い」

── 「パワーをかけて突っ込む」、糸島ではどんなことから取り組んでいきますか?

大きく2つのチャレンジがあります。ひとつは、お土産屋さん。糸島には、オーガニック野菜を育てている農家さんがたくさんいます。話を聞かせてもらうとみなさん本当に良い人で、思いを込めて一生懸命作っているんですよね。だから、情報発信だけをするのではなく、直接会ってもらえる場を作るのが一番いいなと思ったんです。

JA​糸島が運営する直売所『伊都菜彩』では、美味しい野菜がたくさん売られています。メディアでもよく取り上げられていて、市外や県外からの訪問者でいつも賑わっています。でも、オーガニック野菜は地域外や都心だと高く売れるけど、糸島だとそれが当たり前でそこまでの値がつかないんです。さらに、野菜を収穫して、包んで、出荷して、売れ残ったら回収……というのを少人数で、場合によっては一人でやらなければなりません。そうした農家さんたちとquodが組んで、お互いwin-winになれる仕組みが作れたらな、と考えたのが「お土産屋さん」構想の始まりでした。

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(写真:「伊都菜彩」のようす)

僕はPRが得意だし、quodとして築いてきた地方のみなさんとの関係性もある。面白くて何かのネタになるお土産屋さんという「居場所」をつくって糸島に来た人と生産者が出会うきっかけさえ作れれば、農家さんたちと美味しいを野菜をうまくPRすることができると考えています。

最近のPR業界や広告業界では「ストーリー」が重視されますが、僕はまず「モノ」が注目されるべきだと思うんです。情報発信の仕方でヨダレが出そうなほど美味しそうに見せることもできるけど、本当に美味しいかどうかなんて分からないじゃないですか。

やっぱり本当の美味しさを味わうには、モノを触ったり食べたり、作り手に直接会ったりという「リアルな出会い」が必要です。モノの良さを知るには、それ以上の体験ってないんじゃないですかね。リアルな場で「モノ」の魅力に触れてはじめて、背景にあるストーリーや作り手の想いを知る体験が意味をもってくると思います。「お土産屋さん」はそうした体験ができる場のひとつ。僕らよそ者だからこそ力を発揮できる分野だと思ってるんです。

そしてもうひとつが、「地域とつながれる宿」です。僕が糸島に買った土地に「地域とつながれる宿」というコンセプトの家を建てて、“主婦とシェフ”という企画をやろうと。糸島を訪れた人が、農家さんのところに収穫に行ったり、漁港に行って新鮮な魚を仕入れたりして、材料を現地で自分の手で調達する。その材料を使って糸島の「主婦」と「シェフ」が料理を作ってくれて最高の美味しいを体験できる、という企画です。我ながら、ネーミングセンスが良くないですか?(笑)

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(写真:中川が糸島に買った土地。ここに「地域とつながれる宿」を建てる計画)

サステナブルな地域循環を作っていく中で、その地域内だけで賄いきれない部分をquodが補いたい。その「課題」を見つける眼力と、アクション起こす行動力を養えてきたかなと感じています。

一番大切にしているのは、糸島を訪れた人と地域とのつながりを作ること。食材を集める中で地元の人との会話が生まれる。調理をしてくれる主婦やシェフとも、会話が弾む。さらに、農家さんは「収穫」「出荷」「回収」という作業の負担が減ります。農家さんにとっては、野菜の収穫は「作業」かもしれないけど、ちょっとした工夫や、面白い企画と組み合わせることで価値ある「体験」になるんですよね。

糸島に遊びに来た人に、ここでしかできない体験や、地元の人とのつながりを提供する。そうすると、糸島に「居場所」ができると思うんです。

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(写真:「泊まれるレストラン」の模型。建築出身の中川が、寝食を忘れて夜通し作ったらしい)

── 地方に「居場所」を作る、という冒頭のお話と繋がりました。これこそ、quodが次のステップで目指す取り組みなんですね。

糸島での「お土産屋さん」や「地域とつながれる宿」のようなアイデアって、地域外の人間じゃないと出てこないこともあるから。そういう“外からの”視点が地方で重宝されているとも感じるし、そもそも「関係性」がないと発想も実現もできないアイデアだということも、quodにしか出せない価値に繋がっているんですよんね。

自分から話しかけてアクションを起こす人には、地域の人も積極的に接してくれて、また「帰ってくる」のを楽しみにしてくれます。これまでは、時間をかけて関係性を築くことに重きを置いてきたけど、地方のみなさんと様々な取り組みをする中で、quodの強みや得意分野が見えてきました。今は直接訪問できなくても、アクションや言動で信頼関係を作ることができると思っています。そうした関係性の作り方にもquodらしさがあって、どこにも真似できないことなんじゃないかな。

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quodは地方でも事業をするけれど、その場限りの関係ではなく、必ず地域の今後につながるような事業を作っています。その取り組みが地域のPRになることはもちろん、「事業づくり」自体がquodメンバーや関わる人たちの「居場所づくり」にもなっていることが強みです。

個人的には、富山と糸島は似てる気がしています。富山でも漁業や農業が盛んで、BtoBのルートは出来上がってるけど、BtoCに課題があります。その整備とサイクルづくりが地域の力だけではできていないという場所では、quodに補える役割があるのかな、と。この続きは、飯塚に聞いてください。

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quodが3つの地方拠点で取り組む様々なプロジェクト。次は、富山で進めているプロジェクトの全貌をご紹介します。

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