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漫画から学ぶ愛の講座

ハチミツとクローバーより

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父が死んだのはオレが小学生の時だった
父は体が弱く背が高くてやせっぽちで手が大きくて

やさしく笑う人だった

最後の夜 病室で
父のあの細い手が信じられない強さで
オレの手を握った

(・・・お母さんを頼む・・・)

あの手がどうしても 忘れられなかった

お母さんをたすけなくちゃ
2人で幸せにならなくちゃ
マジメに勉強して地元で就職してお金を稼いで
いつか2人で住む家を買って・・・


そして高2の終わり


「はじめまして 合田稼頭男です」

母が連れてきた人は
父とは全く逆のタイプの人で

オレはその岩のようにゴツゴツした手を握った時 ぼんやりと思った

ああ母は
今度は
丈夫な人を選んだんだ
・・・と


「もう母さんの事ばかり考えなくていいのよ」
「自分の夢を考えていいのよ」

そう言われて初めて
オレは自分の中身がカラッポなのに気が付いた


それまでは
「でもボクは母の面倒を見なくちゃいけないから」
というコトバで
色んなモノを目かくしして来たのが
急に
「もう好きにしていい」と
解放される事によって

野球選手にも
F1ドライバーにも
サッカー選手にもなれそうにない自分と

いきなり向き合わなければならなくなってしまった

自分に何のとりえがあるかも解らなかったが
手でモノを作ることはスキだと思えた

それだけを頼りに家を出た

父は今のオレを見たら何というだろう


河が汚れるからと母はイヤがったが
夕暮れになると灯がともるこの山を覆う亜鉛工場が

父とボクは好きだった


「わーっっ!!!!!」

「ギャーーーーッ!!!!!カカカカ カズさんっっ」
「お久しぶりです でも 何でここに?」

「いや なかなか来ないし電話は通じねーし」
「したら 美津さんがここにいるんじゃないかって」
「・・・久し振りだな」


(もしかしてアンタ カズさんが嫌で帰ってないとか?)
図星だった
オレはこの人が ちょっと苦手だ


「なぁ どうしてあんまり帰って来ない?」
「お前さんが帰らんと 美津さんが淋しがる そうするとオレもツライ」

「・・・淋しがる? カズさんがいるのに?」

「誰も 誰かの代わりにはなれん」
「オレも最初は亡くなったダンナさんの代わりに美津さんを幸せにと思った でもそれじゃあ上手くいかなかった オレでは祐一さんの代わりにはなれなかったんだ 家族に変えはきかないんだと思い知った」
「だからオレはオレで 頑張って美津さんの側に居続けるしかないって思った」


ボクはこの人が苦手だ
ボクはいつもコトバを選んで 選んでは
口をつぐんでしまうのに
この人はこんなに たどたどしくても カッコ悪くても
一生けんめいにコトバを尽くして
キモチを伝えて あっという間に 母をさらって行ってしまった

「ホレ 帰んべ」

「・・・はい」

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「母さん・・・」


枕元には

カズさんが揃えたのであろう品々がキッチリピッチリ並べてあって

母が今 いかにカズさんに大事にされているのかが良くわかった

きっとこれがカズさんの言った

「頑張って側に居続ける」ーーーーという事なのだろう


「・・・・・また大きくなった?」

「そうかな?母さんの方が・・・」


小さくなったんじゃないの?と言いかけて口をつぐんだ

多分その両方なんだ


「やっと顔が見れた」

母はそれきり何も言わず
あとはただただ僕の手を握り続けるばかりだった


どうしよう
あんなに約束したのに
ボクは母にこんなカオをさせていたのだ・・・

「・・・・ごめん」


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「・・・・・帰ってきてくれてありがとな」
「もっとちょこちょこ顔見せてくれよ」

「あの・・・カズさん」

「あっそうだ!これ好きだろ?持ってけ!」


オレはこの人がちょっと苦手だ
何でも力まかせで
背も声もデカくて
直球ばっかりでモノを言って
ガサツで
ーーーでも優しくて

まぶしいのだ

かなわないと思わされてしまうのだ

「・・・・・でもいつか きっと・・・・」


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いかがだったでしょうか。

漫画と違い文字だけを文章にしているので多少分かりにくいところが
あったかもしれません。

また、文章だけで分かりづらいところは少し変えていますのであしからず。
気になる人はぜひ、漫画を読んでみてください。


この話の中で、ぼくが特に強く思ったことは

人が幸せを感じるという裏には
悲しい思いをしたことがセットであるんだ。

と、いうことです。

豪快に大きく楽しそうに笑う人は
太陽のように周りに笑顔や力を与えるけど
その人も悲しさや辛さを抱えていて
 
優しく笑う月のような人が見せる笑顔には
悲しさや辛さだけじゃない力強さも感じる
 
ボクはこの話のカズオのように太陽のように笑う人に憧れる。

けれどそれはイコール自分がダメだという事にはならないわけです。
どっちがいいとか悪いとかではなく、どちらも必要なのです。

どんな人も悲しい思いや辛い思いをしたことはあって
だからこそ、幸せを感じることができる

「幸せを幸せと感じることができるようになる」

のではないでしょうか。


そう思えたらほら
あれもこれもそれも
色んな出来事が必要だったわけで。

だからきっと必要のない事なんてない。
必要のない人なんていない。

誰かの何かのおかげで
この世界は成り立っている。

この僕は存在しているのだと思うのです。


もし、今のあなたがどうしようもない悲しみや辛さを抱えていたとしても
だからこそ、未来にはより幸せを感じれるようになれると思うのです。

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