手打ちそば屋 かんだた

長野市の善光寺に程近い古い街、権堂の路地裏で、小さな手打ちそば屋をやっています。老体に…

手打ちそば屋 かんだた

長野市の善光寺に程近い古い街、権堂の路地裏で、小さな手打ちそば屋をやっています。老体に鞭打って、ああ、腰が痛いなどと言いながら、毎日そばを打っております。

最近の記事

そばに年貢だなんて、そんな杓子定規な、、、。(役にたたないそば屋の話10)

 今回は時代劇です。  みなさんも江戸時代を  懐かしく思い出しながらお読み下さい。  家康が江戸幕府を開いて百数十年。  信州のとある天領(幕府の直轄地)に  一人の旗本が、代官として赴任してきた。    その代官は、江戸幕府の誇るエリート中のエリート。  重鎮の間では将来を嘱望される存在。  その名を「杓子定規(しゃくしじょうぎ)」と呼ぶ。    ちゃんちゃんちゃん。  さて、地元の百姓たちは、  びくびくしながら新しい代官を迎えた。  なにしろ、代官のさじ加減一つ

    • ドラえもんが打った「そば」は「手打ちそば」?(役に立たないそば屋の話9)

      近頃は、悩み事があってどうもよく眠れない。 夢の中でも、う〜んどっちだろうと迷っていたりする。 その悩みとは。 もし、鉄腕アトムがそばを打ったら、 「手打ちそば」というのだろうか。 リモコンで動く鉄人28号が、そばを打ったらどうなるのか。 スーパーロボットであるエイトマンが(古キャラばかりで申し訳ない) 鉢巻きをしてそばを打っても、「手打ちそば」というのだろうか。 なんだ、そんなことかと笑われそうだが、 私にとっては、とても深刻な問題なのだ。 若い時に、というから、

      • 「そば前」も「中割り」も「箸洗いも」。(役に立たないそば屋の話8)

         私の知り合いの中には、  こんなことを言う方がいる。  「おおい、酒の後にそばを喰いたいねえ。」  エエイ、駄目駄目、  「酒の後にそば」なんて言う人には、  酒もそばも出してあげない。  「ええと、そばの前に酒をもらおうか。」    おっ、うれしいね。  こういうことを言う人には、  どどんと、酒もそばもお出ししたい。  いつの頃からか、そばには、酒がつきものになっている。    「そば前」といえば、  そばを食べる前に飲む酒のこと。    「中割り」といえば、

        • 殿様の召し上がる御前そば。(役に立たないそば屋の話7)

           「そば屋の出前」といえば、  催促されたことに、  その場で適当な言い訳をすることの  代名詞となってしまった。  そば屋に出前の注文を入れたのに、  なかなか来ない。  催促の電話を入れると、  「今、でました。」と返事をされる。  実際は、忙しくて、まだ作っていなかったりするのにね。  「そば屋の出前」状態で、  言い訳をしいしい、仕事をこなしている、  忙しい方もいらっしゃることだろう。  お得意さまからは、  「そば屋の出前じゃないんだぞ。」  と釘を刺されたり

        そばに年貢だなんて、そんな杓子定規な、、、。(役にたたないそば屋の話10)

           石臼ゴロゴロ。(役に立たないそば屋の話6)  

            「そばほど贅沢な食べ物はないですよ。」 そばの製粉の機械を作っている方が、こうおっしゃっている。 「これだけ食べるのに、手がかかる食べ物は、  まず、他にはないでしょう。」   そう、そば畑から、そば屋のせいろに盛られるまで、 そばは、実にたくさんの手数を掛けられているのだ。 そば屋だって、粉から麺にするまで、 ずいぶんと時間と手間がかかる。 特に、私のような手打ちの場合は、 なおさら体を働かせなければならない。 だけど本当は、その前の仕事、 そばの実から粉にするまで

           石臼ゴロゴロ。(役に立たないそば屋の話6)  

          そばののし板は、何年かかって作られる。(役に立たないそば屋の話5)

           強烈だった暑さも、  やっと緩んできたかと感じられる季節。  「かんだた」のある長野市の中心部、  善光寺に続く表参道の街路樹も、  濃い緑の中に、少し焼けた葉が混ざっていたりする。  その緑のざわめきの向こうに、  仁王門の屋根が踊っているのが見通せる。  このあたりの街路樹は、  ちょっと珍しい桂(かつら)の木。  少し浅めのハートの形の、小さな葉っぱが特徴的だ。  二十数年前に植えられ、地元の商店街の方々が、  大切に世話をして育てたと聞いている。  どうしてこの

          そばののし板は、何年かかって作られる。(役に立たないそば屋の話5)

          「令和」とは、どんな割り箸? (役に立たないそば屋の話4)

           丁六、小判、元禄、天削、利久、卵中。  ほお、けっこういろいろあるものだ。  えっ、いきなり、なんかのおまじないかって。  これは実は、割り箸の種類の名前。  よく、食べ物屋でお世話になっているけれど、こんなにいろいろあるんだね。  これに、使う材質の違いがある。  杉や檜のまさ目を使ったり、白樺や、アスペンと呼ばれる安い輸入材もある。  日本人の清潔感と実用性にあったこの割り箸の文化。  調べてみると、明治になって、機械式の製材機が普及してから広まったのだね。  

          「令和」とは、どんな割り箸? (役に立たないそば屋の話4)

          宮本武蔵はそばを食べたか? (役に立たないそば屋の話3)

          宮本武蔵は二刀流を生み出した、 江戸時代の初めの剣豪。 その生涯は吉川英治の書いた長編小説「宮本武蔵」で、 詳しく描かれている。 この小説は、過去に何度も映画やドラマになり、 広く知られている。 誰が主人公を演じるかによって、 印象が変わってしまったりするのだよね。 この小説の中で、 武蔵がそばを食べるシーンがある。 江戸の旅館で、そばを食べるのだが、 その時に、そばに集まってくるハエを、 箸でつまんで取り除いていたという。 えっ、動いているハエを! ちょうど、武蔵に文

          宮本武蔵はそばを食べたか? (役に立たないそば屋の話3)

          そば屋に「庵」の付く屋号が多いのは、なぜ。 (役に立たないそば屋の話2)

             名前を決めるのは、とかく苦労するもの。  だから、その世界で名を上げた人や、価値の定まった呼び名などから、  その功績にあやかるように、と願って付けることも多い。  この頃だったら、「翔平」と名付けられた男の子も多いことだろう。  私の時代には、人気の映画から「真知子」「小百合」と名付けられた女性も多かったなあ。(いつの時代の話だろう?)  そば屋の名前も同じ。  賑わっているそば屋と似たような屋号をつけて、その人気にあやかりたい、という気持ちが見える店がある。

          そば屋に「庵」の付く屋号が多いのは、なぜ。 (役に立たないそば屋の話2)

          花魁の好んだ辛いそば汁 (役に立たないそば屋の話1)

              紀伊国屋文左衛門 (きのくにや ぶんざえもん)といえば、江戸時代中頃に活躍した材木商人。  大もうけをして、派手に遊んだという話が伝えられている。  当時遊ぶといえば、江戸の吉原。  ここにはきれいな女性が揃い、おいしい食べ物が、豊富にあったそうだ。  文左衛門は、二千人の遊女がいたといわれる、この吉原の門を閉めさせ、つまり、貸し切りにして、小判をばらまき、豪華に遊んだと言う話が残っている。  そして「お大尽(おだいじん)」として、江戸中の人々の評判となったそうだ。

          花魁の好んだ辛いそば汁 (役に立たないそば屋の話1)

          路地裏の小さな手打ちそば屋です。

          善光寺のお膝元、長野市の路地裏の、古い蔵のなかで、小さな手打ちそば屋をやっています。 皆さんに、いつも、こんなにわかりにくい場所で、、、とお叱りをいただいております。すみません。 郊外から、今の場所に移って20年。そば屋を始めてからは、30年余りになります。 手作りのため、手が回る程度の限られたメニューで、昼のみの営業です。 食べ物というのは、今日明日のエネルギーとなるだけでなく、一年後、二年後の、あるいはもっと先までの、ご自身の身体を作っているものです。 ただ、口に旨い

          路地裏の小さな手打ちそば屋です。