大学院での留学のススメ

D3の半年間で北米に留学して思ったことを書きます。

1. なぜ留学したのか?

 私の分野での世界的権威の先生が北米の大学で教員をされていたためです。私の研究テーマは、博士課程の指導教員の専門分野とベース部分で共通しているものの、直接的な指導を行うのは難しいものでした。また、私の研究テーマは日本ではほとんど展開されておらず、執筆する論文の引用文献も海外のものばかりでした。私は自分の研究テーマが大好きだったので、今後も国内・海外で研究を展開するために、その分野に精通した先生のもとで指導を受けたいと感じ留学を決意しました。

2. 留学の時期がD3!?

 はい、そこですよね笑
 前の記事でも書きましたが、研究テーマの策定にD1の一年間を要しました。なので、この時点でD4突入が決定していました。26歳にして初の海外留学でしたが、学ぶことも多く、新しい経験に年齢は関係ないのだなと感じた次第です。

3.留学への準備・留学中の生活

 学内の留学プログラムの支援を受けたので、渡航費と半年分の生活費は大学に負担して頂きました。(本当にありがとうございました…!)
 渡航ビザの申請や保険加入についても全て大学の指示に従って行ったので、自分で調べて手続きしたことは殆どありませんでした。ただ、海外渡航関連の書類は申請に平気で1ヶ月以上掛かったりしたので、早めに行動するのが吉だなと思います。幸い、滞在中に体調を大きく崩すことはなく、病院のお世話になることはありませんでした。ただ、民間の海外滞在保険は数多くあるので、個人で留学される際は絶対に入っといた方が良いと思います。
 留学中の住居は指導教員お薦めの学生寮に入りました。留学生専用だったので、一緒にご飯を食べたりクリスマスパーティをやったりと、楽しく過ごせました。食事については、朝食はコーンフレークやパン、昼食は食堂でバイキング、夕食は外食か冷食でした。
 日本にいる頃は、研究室の事務仕事やアルバイトがあったり色々忙しかったですが、留学中は24時間全て自分の為に時間を使えます。この時間に研究活動に没頭し、自分自身について深く考えることが出来たのでは、今思うととても贅沢だったと思います。

4. 留学中にやったこと

 ”専用の施設を用いた実験””学術論文の執筆””国際会議での発表”の3つです。
 まずは現地での実験について。さすが世界的権威の研究室、自動化された実験デザイン、実験装置の充実度、実験スペースの広さ、研究テーマの幅広さ、共同研究の質と数、全てが驚きでした。研究環境の観点から日本で限界を感じて出来なかったことが、留学中に全て解決しました。
 次に学術論文の執筆。日本での実験結果についてディスカッションを行い、どのジャーナルに投稿するか、どういうストーリーを中心の据えるか等のアドバイスを受けながら執筆を進めました。結果的に、想定よりも格の高いジャーナルで論文を発表することが出来ました。
 最後の国際会議での発表。これは現地の近くで開催していたので、留学ついでに発表したといった感じです。論文でしか見ない著名な先生方から研究内容についてフィードバックを貰えて、とても良い経験になりました。

5. 留学中に感じたこと

<博士号に対する考え方が違う>
 恐らく日本の博士号(理系)は、論文1~3本あり、3年間在籍すれば形式的に授与されるもので、研究者として生きるための免許、といった所でしょうか。ただ、北米では博士号を取得するのはハードルがかなり高いようです。3年で博士を修了する人は稀で、中には10本以上の論文を持っていても「自分はまだ研究者として未熟だから」という理由で学位審査を受けず、研究に没頭する学生さんも居ました。審査も厳しく、”博士号は特別なもの”と捉えている人が多かったです。

<学生の意見の重要度が違う>
 大学によって違うのかもしれませんが、私の留学先の大学では、学生の声をとても重要視しているようでした。驚いたのは、大学教員を採用する際に学生との面談会を設けている点です。書類選考、現役教員との面接、模擬授業がある所は日本の採用試験と変わりませんが、その後の面談会では学生一人ずつから質問を受け、教育方針について話し合う機会がありました。こういった側面から、研究実績や現役教員との繋がりだけではなく、学生との相性や教育方針を重視する等、日本との文化との違いを感じることが出来ました。


6. 留学を終えて

 帰国後は、それまで自分を縛っていた固定観念が無くなった気がしました。日本では何となく「博士は3年間で出るのが当たり前」「新規性のない研究は価値が無い」「流行りの研究をやった方が生き残れる」など暗黙の了解がある感じがしますが、考え方次第で方針はいくらでも自分色に出来るんだなと感じました。やはり、行ってみないと分からないことは沢山あります。チャンスがあるなら、何か理由を付けてでも海外留学に行ってみると良いと思います。

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