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【探究学習】「『人』としての自分が試される」。生徒に伴走した「メニコン」社員の「自分事の体験」

探究学習プログラム「クエストエデュケーション」の企業探究コース「コーポレートアクセス」では、各企業のミッション(お題)をもとに、生徒はオリジナルの企画を考え、その成果を披露します。

山あり谷ありの探究活動に伴走するのが、ミッションを提供する企業の社員のみなさん。職場から学校に「越境」し、生徒、先生と探究学習に向き合う環境に飛び込みます。

生徒からの思いもよらない問いかけに揺さぶられたり、試行錯誤の姿を目の当たりにしたりする経験は「自己変革」(自己リマスタリー、自社との出会い直し)やフォロワーシップ型のリーダースキルを得るきっかけになり、業務への姿勢にも変化が生まれます。

どんな出会いと変化を経験したのか、参画企業の一つ株式会社メニコン社員の間野愛也さんに語っていただきました。

間野 愛也さん:株式会社メニコン 国内マーケティング戦略室 学術教育研修部 大学卒業後、メニコンに入社。販売店スタッフや店長として勤務後、本社ブランド戦略部の定額制コンタクト「メルスプラン」のブランドマネージャーに。現在は学術教育研修部で、コンタクトレンズ販売における専門スキルに関する研修を展開する「Menicon Academy」の企画運営、販売店のインナーブランディングの推進を通じて、社内外の人材育成を担当。メニコンがクエストエデュケーションのコーポレートアクセスに参画した2018年度から、生徒たちの探求に伴走してきました。

メニコンがクエストに初めて参画したのは2018年度。経営企画部と教育研修部の連携によるプロジェクトの一環でした。間野さんも当時の上司の推薦で参加することになりました。

間野:この少し前に子供を授かったこともあり、子供の教育や未来に目が向くようになっていたので、関心はありました。社内の異なる部門のメンバーとつながることもうれしかったですし、クエストの目的やビジョンにも共感でき、自分に向いている活動だと思いました。

参画企業のメンバーは、各地の学校の探究学習の授業や校内発表会に参加し、生徒の壁打ち相手や、企画のブラッシュアップ支援、クエストカップの審査と幅広く関わります。間野さんも、コロナ前は年間12〜13校を訪問したそうです。

学校訪問は5月ごろから始まります。生徒たちが取り組む企業を研究したり、企業からの「ミッション」を解釈したり、テーマ探しのブレストをしたりする時期です。

最初の訪問校では、生徒たちが「来てくれてありがとう」と大歓迎してくれて、その真っ直ぐさに驚きました。企業のこともしっかり調べていて、思っていた以上にやる気があって。「中高生って、もう子供じゃないんだな」と感じました。

次の訪問校では、男子生徒たちが「めんどくせえなぁ」と、斜に構えた感じで授業に臨んでました。こういう態度にも親近感が沸きました(笑)。中高生時代の自分は、どちらかというと彼らと同じように、斜に構えるタイプだったので。

今振り返ると、最初は少し気負っていたと思います。何か意味のあることを教えなければ、効果的な助言をしなければ、と。でも生徒たちから「作品を見て欲しい」「これはどう思うか」とアプローチしてくれることが多くて、そのうちフランクなコミュニケーションに変わっていきました。

教室では、盛り上がっている子もいれば、そうでない子もいます。ディスカッションがうまく回らずに、うつむいて資料を見つめているだけのチームもあります。そういう時はさりげなく声をかけて、気持ちを受け止めます。やる気がなくて「めんどくさい」「くだらない」と言う子には「俺もそういう感じだったよ」と寄り添ううちに、自分からいろいろ話してくれるようになることもありますね。

別の学校では、ある生徒が授業後も僕にいろいろ質問してくれて、そのひたむきさに心を打たれて、大人として最大限役に立ちたいな、とグッときました。帰りの新幹線の時間を後ろにずらして、生徒が気のすむまで対応しました。

いろんな生徒がいます。ただ、どういう状況にしろ、対等な立場で関わることを心がけるようになりました。僕との会話で何か面白みを感じてもらったり、あの時こんなおじさんが来ておしゃべりしたな、という程度で良いと思います。その後の学びに、ほんの少しだけでもなにか影響を与えられたら、と、学校訪問を続けてきました。

学校訪問で生徒たちの探究学習に関わる間野さん(左奥)

「思いもかけないような言葉」で揺さぶられた

間野さん自身も、クエストから影響を受けたことがあるといいます。

間野:クエストへの参画を通じて、「研修」のような、あらかじめプロセスやゴールがしっかりと設計された場ではなかなか得られない「自分事の体験」を得られたと思っています。

探究活動は、どこにどう進んでいくのかがわからないことも多いので、そうしたプロセスに立ち会うなかで、生徒からの思いもかけないような言葉で揺さぶられたり、問いが生まれたり、心が動いたりすることがあるんですね。そういう場面に、自分事として向き合うなかで、「人」としての自分が試され、「人」としての成長につながっていくと感じています。むしろ仕事で行き詰まっている人こそ、おすすめです。

また、自分自身に経営的な視点が身についたとも思っています。

生徒たちはメニコンという企業が掲げているビジョンや、生徒向けのミッションなどを独自に捉え、社会とつながる企画を考え、自分たちのこたえを企画にします。

そうしてクエストカップ全国大会にエントリーされた作品を、メニコンの担当メンバーで1人約20作品ほど分担して審査し、全国大会に出場する作品を選びます。

審査の評価項目は、メンバー間である程度一致させたうえで臨みますが、私の場合は、話の筋道が通っているか、言い換えれば「ストーリー」として成り立っているかという点を特に重視して審査します。ビジネスコンテストではないので、事業性の有無よりもまず、目指すゴールが明確か、きちんと現状分析できてしているか、自分たちが取り組む理由に説得力があるか、という点が問われます。企業の経営層も、まずそうした点を見るだろうと思います。

こうした数多くの企画に触れる中で、メニコンという企業のビジョンや社会的価値という観点から企画の内容を評価する視点が養われたと思います。

「プレイヤー」の立場で普段の業務にあたる立場にいながら、経営層の俯瞰の視点を持てたことで、関係者の共感を意識したストーリーづくりを、企画立案の際に考えるようになりました。

また、仕事で自ら企画する数も増えました。クエストで生徒たちが試行錯誤しながら、失敗を恐れずに取り組むなかで、新たなものを生み出していく様子から教わったからだ、と思っています。

コロナ禍の間に生徒や学校の様子も変わったかもしれません。今の時代に合わせた形で、生徒のみなさんの探求の体験に寄与していきながら、自分自身も成長し続けていきたいと考えています。

【参考】
自ら課題を発見し、その解決を探究する「ソーシャルチェンジ」のサイト
探究学習はじめの一歩!【実例】探究学習のテーマ16種
「探究学習」の最先端 教育と探求社の総合パンフレット
教員向けイベント情報

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