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『ワトソン力』と『にわか名探偵』収録作品のタイトルの元ネタ
拙作『ワトソン力』とその続編『にわか名探偵』は、収録作品のタイトルを、先行するミステリのタイトルをもじったものにするという趣向を持っています。タイトルをもじった作品はいずれも、私が敬愛し、愛好するものばかりです。それらを野暮を承知で明かさせていただきたいと思います。タイトルをもじった作品は、拙作一編につき複数ある場合もあります。
『ワトソン力』
・第1話「赤い十字架」
→G・K・チェスタト
共犯関係に関するトリック分類
私はトリック分類を読むのが大好きなのですが、どのトリック分類にも欠けている項目があるように思えます。それは、「共犯関係に関するトリック」です。
たとえば、江戸川乱歩の「類別トリック集成」の「犯人(または被害者)の人間に関するトリック」という項目では、「犯人が被害者に化ける」例や「共犯者が被害者に化ける」例のように、犯人、共犯者それぞれの弄するトリックは挙げられていますが、犯人と共犯者のあいだの
アリバイトリック、十一番目のパターン
有栖川有栖氏の傑作『マジックミラー』で語られる有名なアリバイ講義では、アリバイトリックが九つのパターンに分類されています。有栖川氏は講談社ノベルス版のあとがきで、さらに「手順の盲点」という十番目のパターンも提案されています。
この「アリバイ講義」を何十回となく読み返すうちに、「こういうパターンもあるのでは?」と思うようになったので、それを十一番目のパターンとして提案させていただきたいと思います
法月綸太郎さんの「心理的瑕疵あり」に挑戦
法月綸太郎さんが、東京創元社の雑誌『ミステリーズ!』名物の懸賞付き犯人当て小説企画で、「心理的瑕疵あり」という作品を書かれました。法月ファンのはしくれとして、挑戦しないわけにはいきません。『ミステリーズ!』vol.100掲載の問題編を熟読して推理してみました。
真相を見抜けたような気がしたので、vol.101をいただくとすぐに解答編に目を通したのですが……犯人の正体も、メインの謎も、見事に答
人間消失トリック分類
本稿では、消失した人間を「消失者」、消失を成立させる証言をする者を「証人」、消失が起きた空間を「消失発生空間」、消失が起きた時間を「消失発生時間」と呼びます。
1.消失者が消失発生空間に初めからいなかった場合
消失者が消失したと見なされるのは、消失者が初めは消失発生空間にいたという前提があるためです。そこで、消失者が実際には消失発生空間に初めからいなかったのに、何らかの手段でいたように見せる