『ワトソン力』と『にわか名探偵』収録作品のタイトルの元ネタ
拙作『ワトソン力』とその続編『にわか名探偵』は、収録作品のタイトルを、先行するミステリのタイトルをもじったものにするという趣向を持っています。タイトルをもじった作品はいずれも、私が敬愛し、愛好するものばかりです。それらを野暮を承知で明かさせていただきたいと思います。タイトルをもじった作品は、拙作一編につき複数ある場合もあります。
『ワトソン力』
・第1話「赤い十字架」
→G・K・チェスタトン「青い十字架」(『ブラウン神父の童心』所収)
・第2話「暗黒室の殺人」
→綾辻行人『暗黒館の殺人』
・第3話「求婚者と毒殺者」
→ジョン・ディクスン・カー(カーター・ディクスン名義)『殺人者と恐喝者』
・第4話「雪の日の魔術」
※この作品だけ、先行作品のタイトルをもじったものではありません。本作は学生時代に発表した同題の犯人当てが原型で、「雪の日の魔術」という言葉を気に入っていたためにあえてタイトルをもじりにしませんでした。今後、改題の機会があったら、そうするかもしれません。
・第5話「雲の上の死」
→アガサ・クリスティー『雲をつかむ死』(早川書房)またはアガサ・クリスティ『大空の死』(東京創元社)の原題"Death in the Clouds"の直訳のもじり。また、三谷幸喜脚本のテレビドラマ『古畑任三郎』のエピソード「追いつめられて」の放映時のタイトル「雲の中の死」のもじり。
・第6話「探偵台本」
→我孫子武丸『探偵映画』
・第7話「不運な犯人」
→佐野洋「不運な旅館」(『銅婚式』所収)
『にわか名探偵』
・第1話「屍人たちへの挽歌」
→マイケル・イネス『ある詩人への挽歌』および今村昌弘『屍人荘の殺人』
※作中に登場するゾンビ映画『屍人たちへの挽歌』の監督・米狩稲史(よねかりいなし)は、マイケル・イネスのもじりです。苦しい……。
・第2話「ニッポンカチコミの謎」
→エラリー・クイーン『ニッポン樫鳥の謎』
・第3話「リタイア鈍行西へ」
→麻耶雄嵩「シベリア急行西へ」
・第4話「電影パズル」
→パトリック・クェンティンのパズルシリーズ諸作および有栖川有栖『孤島パズル』
※法月綸太郎「死刑囚パズル」は敬愛する作品ですが、「死刑囚」が三文字なので直接のもじりの対象とはしていません。
・第5話「二の奇劇」
→法月綸太郎『二の悲劇』
・第6話「服のない男」
→ドロシー・L・セイヤーズ「顔のない男」(『ピーター卿の事件簿2』所収)および北森鴻『顔のない男』
・第7話「五人の推理する研究員」
→阿津川辰海「六人の熱狂する日本人」(『透明人間は密室に潜む』)および浅倉秋成 『六人の嘘つきな大学生』
※さらにさかのぼれば、テレビドラマ・映画『十二人の怒れる男』と三谷幸喜脚本の舞台・映画『十二人の優しい日本人』がありますが、「〇人」の数字が二桁なので、直接のもじりの対象とはしていません。