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ドイツ語をすっかり忘れた私が、AIのおかげで30年ぶりにドイツ人との友情を復活させた話

前の投稿で前に住んでいた家を整理したことを書いたが、その時古い手紙をいくつか見つけた。その一つは30年以上前に交換留学生としてドイツに留学した時に仲の良かったドイツ人の友人からのものだった。

日本に帰ってからしばらく文通していたが、筆不精なのとドイツ語から遠ざかって行くうちにドイツ語で手紙を書くのが億劫になり、関係が途絶えてしまった。
 
彼女の手紙を見て楽しかった日々を思い出し、懐かしくなって彼女の名前をググってみた。SNSはやっていないようで少し時間がかかったが、仕事関係のウェブサイトに心理学者として名前が載っていた。当時彼女は心理学を学んでいたので間違いないと思いメールを出してみた。ちなみにドイツ語は完全に忘れたのでメッセージは英語で書いた。
 
翌朝起きてみると、早速彼女からの返信があった。ドキドキしながらメールを開けてみる。30年ぶりくらいなので、友達は本当に私からのメッセージなのか少し警戒しているようであった。それで私はいくつか思い出を書いて送ったらすぐに「やっぱりリリコイなのね!」と返事がやってきて、昔の人懐っこい調子が戻ってきた。ちなみに友達のメッセージは「英語は理解できるが、書くのは苦手」なのでドイツ語だ。ChatGPTの助けを借りながら読んでいる。
 
あるメッセージで彼女は、「私、お寿司は好きじゃないけど、リリコイの作ってくれた寿司だけはすごく美味しかった、と友達に話したばかり」と書いてくれた。私は色んな意味でびっくりしてしまった。まずお寿司を作った記憶が全くないのだ。当時はまだ日本の食料品は手に入れにくかったので、そんな中で自分がまがりなりにもお寿司を振る舞ったらしいことに驚いた。でも一番びっくりしたのは最近でも、私の話題が出るほど私が彼女の中で生きていたということだ。

その後、もっとびっくりすることを教えてくれた。私があげた法被と箸をまだ持っていているというのだ。その法被は航空会社の名前が入ったもので、なぜ私が持っていたか分からない。それを仮装パーティに行く時に貸した記憶はある。箸の方は全く記憶にない。お嬢さんがその箸を使おうとすると、「大事なものだから」と使わせないようにしていたと冗談めかして書いていた。

貧乏学生だったから持って行ったのはそれほど高価な箸ではないだろうに、それを30年以上も捨てずに使ってくれていたことに感動してしまった。

当時の私は悩みが多くて鬱っぽいのに、弱みを見せないように強がっていた。その当時の自分のことがあまり好きではないのだが、その私をこんなに大事に思ってくれた友人がいたことを知り、当時の私はダメダメだけではなかったのだなと、ちょっとホッとするような、癒されるような気持ちになった。

今はWhatsApp(LINEのようなもの)で繋がり、頻繁にテキストしあっている。ドイツ語のリハビリも兼ねて英語で書いたメッセージをChatGPTでドイツ語に翻訳して、それを友達に送っている。彼女によるとそのドイツ語はとても自然だそうだ。下手な英語も翻訳する時に上手なドイツ語に直してくれているらしい。ChatGPTは超優秀な秘書に例えられるが、私にとっては超優秀な通訳だ。

ドイツに住んでいた時はしょっちゅう一緒にいて電話でもよく話していたが、30年以上の歳月を経ても同じノリで話をできるのが不思議だ。当時は自転車で5分か10分くらいで行ける距離に住んでいたが、今は時差が12時間ある地球の反対側に住んでいて、共通言語であるドイツ語も私が使えなくなってしまった。その私たちのコミュニケーションを助けてくれる、メールやインターネット、アプリ、AIなどテクノロジーの進歩を本当にありがたく思う。

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