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視線誘導を考える〜ベーシック編〜

Minto STUDIO シニアアートディレクターのみやながです。

今回は視線誘導について私見を語ってみます。
前回同様5分で読めますので、構えずにご覧頂ければ幸いです。

視線誘導と聞いて何を思い浮かべますか?
グーテンベルク?Z型?大小?
色々な手法がありますし、調べればいくらでもネットで見つけられると思いますが、
ここでは少し違う切り口でお話しをさせて頂きます。

◆人は、見たいものしか見ない
◆人は、見たいように見る

心理学みたいな言い方ですが、これは真理です。(韻を踏んでますよ?)
どんなに見せ方に手を尽くしても、【見間違い】【早とちり】は起こります。
人は、結局のところ、思い込みでものを見るからです。

理由は多々ありますが、全てのトリガーになっているのは、【最初に印象を強く持ったものに囚われる】からでしょう。ヒヨコが、最初に見たものを親だと思い込むのと同じ。

「じゃあ何をやっても無駄なのでは?」

ある意味でそういうところはあるかも知れませんが、やや早計です。
最初に印象を強く持ったものに囚われるなら、その印象自体をある程度操作してやれば良い。それも、人間の特性に沿ったやり方で。

それによって、ある程度【思い込みを作り出す】ことができるハズです。
それを行うには、人間のクセ・特性を利用します。

人間には、特定のものに目を奪われやすい特性があります。
目の前の景色を見る時、自動的に行われる優先順位づけのようなものです。

1.人間
2.動物
3.動くもの
4.周囲より明るいもの
5.周囲より著しく鮮やかなもの
6.視界内の他に比して大きいもの

多少の誤差はあるでしょうが、概ねこの順序で「目を奪われる」傾向があります。どんな人でもそうです。他人になったことがないので多分ですが。

風景写真の中に人間や動物がいると、自然に目がそれを捉えてしまう。
風に舞い散る花びらがあると、無意識にそれを見てしまう。
空に大きな雲があると、ついそれを気に留めてしまう。
こうした経験の一回や二回、ありますよね?

防波堤上の二人の人に目が行きますよね。その後、遠くにうっすら浮かぶ島に視線を移す感じ。

これは自然と犬を見ちゃうと思います。海面に斜め一列に浮かぶブイもまた、犬に視線を誘導する役目を果たしています。

これは、鮮やかな青空に浮かぶ画面左上の大きな白いグラデーションの雲を気にしながら中央の島を見ちゃう。

光と陰の間に鎮座したタイヤに目が吸い寄せられませんか?特にその光沢、日の光が反射して輝いた部分。

つまり、です。

絵や映像で画面を構成する際にこれらを利用してやれば、目を奪わせる箇所を決められる。即ち、印象の操作が可能になる。その画面・ページの中で「どこを気にしてもらうか」「どこを覚えてもらうか」。印象に残るものは、ある程度設計できる、ということです。

これは使わない手はありません。
と言うか、使わないと視線が定まらない=注視点がボヤけた、何を見せたいのかわからない画面ができあがってしまうということです。
絵はとても上手いのに、なんだか印象が弱かったり、読み続けたり観続けるのがやや億劫に感じる場合、往々にしてこれが潜んでいます。絵が上手いことが逆にこれを隠してしまうんですね、見事に。

実際の画面構成上では、いくつもの要素を組み合わせて、複合的に印象を作り出すわけですが。また、「人間」と一口に言っても、その人間の中でも目の行く順序があります。全身からはまず顔に目が行く、顔の中では目を最初に見てしまう等、これらもとても重要。

いずれにしても、これの得手不得手で、残せる印象が大きく変わってしまう。画面全体の動感・リズム感も自在にできちゃう。
これ、webtoonにも完全に当てはまる、非常に大切なことの1つです。
webtoonの場合は、閲覧環境の特性上、視線の遷移がほぼ完全にタテに固定される(ヨコへの視線移動が著しく少ない)ため、それを意識した操作・誘導が必要で、そこが既存の映像メディアとの大きな差異となりますが。

こんな絵で上(奥)から下(手前)↓に視線を誘導して…

こんなカットにつなげるとか。
上から下に視線を誘導して来て、その行き着く先に靴(足)を置いてそこで視線を止めてやる。カメラをズーミングしながらティルト(縦パン)して止めたようなイメージ。
こういった縦方向=奥行き方向の視線誘導が、横版面のマンガや横型の映像よりも、より効果的に行えるのが、縦画面に特化した webtoonの特徴であり、面白さです。

アレコレ色々語ってますが、上手い描き手はこういうのを無意識にやっちゃうんですよね。本当にすごい。
一所懸命意識してやってるうちはまだまだ。
Minto STUDIO でも、引き続き力を入れてやっていきます。

では今回はこれにて!


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