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罫線あり

ノートは無地か、罫線ありか。
人それぞれ、考え方も、好みも違う。

生きてます。ひさしぶりな、本の読書記録。
最近は電子で書籍を買うこともあるが、やはり紙の本が読みやすいとあらめて思う。

そして今回、記録するのはコチラ

文庫版「傲慢と善良」辻村深月さん

累計70万部突破!映画化も発表されたベストセラー作品

(部数は「傲慢と善良」公式ホームページより)

いろんなジャンル読んでいる、と言いつつも、こうしてnoteに記録した数冊で、自分の嗜好が透けて見えますね。

さて、さっそく本題に参ります。

私が「傲慢と善良」を読むに至ったのは
知り合いの勧めである。

そう、知り合い
なんとも曖昧な関係性はどこまで自分の気持ちを伝えてよいのかと悩ましく、断れなかった

私は乗り気ではなかった。

辻村深月さんの作品は何作か読んでおり、好きな作品もある。
ならば、なぜ乗り気でないのかと言えば、恋愛ミステリと銘打たれているからだ。

嫌いではないが、好きではないジャンル

と、これもまた曖昧な部分があり、自ら進んで読もう!と言う気持ちにはなれなかった。

が、避けられなくなった今回、読むか!腹をくくった

そうして、ずっしりと重い手で本を開いた。

ミステリーな伏線を思わせる独白が飛び込んできたかと思えば、よくある恋愛の行き違いがはじまった……

しかし、だらっと読んでいた姿勢は気付けば前屈みになっていた。
途中途中、重苦しい空気を吐き出さずにはいられなかった。

読後の感想=結論は
この作品は【恋愛ミステリ】なのか?

という、問いだった。

辻村深月さんの作品は数作しか読んでいない読者の戯言であるが、作品ごとに雰囲気ががらりと変わると驚いた。

でも共通している部分もある。

実体験したかのような心理描写だ。
取材したから、作家だから、の言葉だけでは成立しないものがあるような気がしてならないくらい、物語内に出てくる言葉がチクチクと胸を的確に刺す。

だが、このチクチクとした痛みが
わからない人にはわからないだろうな。
とも同時に思う。

まさに、この物語に出てくる人物たちのように。

『わからない人にはわからない』と感じた理由

※以降、ネタバレはないと思うが、"恋愛ミステリ"を楽しむなら、本編読了後に読んでください。

▶周囲の評価を気にしているか? 


ここ最近、令和は特に多様化という言葉を目にするようになった。また個人の尊重も。

昭和や平成に比べたら、生きやすくなった部分もあれば、どれが普通や常識なのかと、迷う部分も出てきた。

個人的には、ジェネレーションギャップのような感覚が近いように思う。
最近話題にもなったドラマ「不適切にもほどがある」のように、現在ではNGとされることが十数年の間に変わっているのだから仕方がない。

もちろん、それだけじゃない地域性や家族や人間関係などの生い立ちにもよって常識は変わる
あくまで年代は1つの目安のようなもので、同じ年代でも谷底のような溝が潜んでいる。

たぶん、周囲の評価や違いについて、悩んだことがあるかないかで、この物語の主な登場人物であるカップルに対して、それぞれの考え方を理解するか、苛立ちを感じるか、分かれるだろう。


▶恋愛ミステリ、なのか?

主な登場人物は男女カップルだ。
たしかに恋愛要素ではある。
結婚間近のアラフォー&アラサーカップルは、とある事情で、その過程を振り返ることになる。
その振り返りはミステリーだった。
しかし、恋愛と銘打たれているわりに、想像していた甘いものも、劇薬のようなドロドロしたものもない。

そのため、私は恋愛ミステリという言葉にはやはり疑問符が出てしまうし、

これは恋愛ミステリという羊の皮を被った、人間ドラマという狼ではないか?

と。ただ婚活経験者や結婚を考えている人にとって、恋愛ミステリと感じるだろうとも同時に思う。

以上の2点から、

わからない人にはわからないし、ベストセラーの恋愛ミステリとして紹介するには難がある。

結論:恋愛ミステリという"先入観なし"で読んでほしい。


もしかしたら、私の感じる違和感(恋愛ミステリ?)はすでに、本作品の戦略にまんまの乗せられているのかもしれない。

ただ、個人的には先入観なしに読んでもらったほうが、この【傲慢と善良】というタイトルについて、感じやすいのではないか。と思う。

確実に私自身にはチクチクと刺さる言葉があった。

謙虚で自己評価は低いのに、自己愛だけはやたら高い。だから傷付くことや変化を怖がる

「傲慢と善良」本文より

文字通りの人間ではないが、どこか、なにか、心当たりがあるような。
そして、主なカップルを取り巻く人物たちにも。思わず「あぁ…」と声を漏らしたくなる。そう、

私にとって、ある意味、共感性が高かった。


ただ、同時に。

さらに周囲の評価が気になり。若干の疑心暗鬼のような人間不信になった。

本作に置いて注意書きするとすれば、私のように、共感性が高すぎてしまう人は苦しすぎる読書になるかもしれない。ということ。

❴恋愛ミステリ❵


そう、銘打たれているように。
結婚などの恋愛的選択肢が見えている人には、ちょうどよい距離感で読むことができるかもしれない。

「傲慢と善良」本体表紙

こうなると、上に書いた自分の結論に反している

やはり、私は本作品の戦略に乗せられているのだろう。

傲慢なのか、善意なのか。

くしくも大変、考えさせられてしまう。



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