【読書記録】江國香織著『物語のなかとそと』に寄せて
敵わないなぁと思う。
そりゃあ私は自分の文章を愛しているしそれは私にしか書けないものでもある。それでも、それは私がしたいこととこんなに違う。
自分の文章に疑いの気持ちを向けてしまうのはこういう時だ。もしかしてすごくありふれてしょうもないものなのかもしれない。悲しくはないけれど少し絶望する。
しかしながら、自分の中で渦巻く言葉や感情を文章にして外に出すことを教えてくれたのは江國さんだし、私はそうせずにはいられない。
江國さんの物語に出逢っていなくても書いていただろうけれど、それは文中の言葉を借りるなら「辞書なしで、いきなり世界と向い合う」ことになっていただろう。
どうせやめることなんて出来やしないから。
素晴らしい文章を読んで自分のしていることに疑問を抱きそうになった時、噛んで含めるようにそう言い聞かせる。
見返しの青が美しかった。これは江國さんか編集者さんか、この本を作るのに携わった誰かが選んだ色なのだろうけれど、表紙よりもこの本を表しているような気がする。
私は青という色に憧れがある。それは私の肌にはっきりとした青が似合わないせいもあるだろうし、単純に青の持つ静謐さと凛としたたたずまいを昔から好んでいたこともある。
この見返しの色合いは完璧で、美術館でただこの青に塗られた一枚の絵があったら買っていたかもしれない。
そういえば家の壁に飾っている絵葉書のうち二枚は青を基調としているし、海や空を眺めるのも好きだ。
気づかないうちに青は私の一部となっていたのかも。
それにしてもいいなぁ、この青。切り取ってこれだけ飾ろうかしら。見返しを眺めながら少し得をした気分になった。
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