余命宣告されたマックイーンが挑んだ最後の映画
<バーアテンダント3>
「この映画は絶対おすすめ」とアメリカ人の友人にすすめられた。
スティーブ・マックイーン主演「トム・ホーン」(1980)。原作はトム・ホーン本人というレアな作品です。
トム・ホーンとは、勇敢なアパッチ族の酋長ジェロニモを捕らえた、名うてのガンマンだった。
でも、たかが、さすらいのガンマンの娯楽映画なのに、どうしてすすめるのか。
友人は言った「人生を考えさせられる映画だから、ぜひ観てほしい」。
トムが、訪れたワイオミングの街で、射撃の腕を見込まれて、牛泥棒の追跡殺害と、保安官助手として街の警備を依頼されます。
トムは、見事に役割を果たします。
しかし、次の州議会議員を目指す保安官にとって、人気者の保安官助手は邪魔な
存在になります。
ある日、牧童が60発の銃弾を浴びて、殺害。その銃弾は、トムの使っていたライフル銃から発射されていたことがわかります。
トムが撃ったとは限らないのですが、よそ者に罪を着せるのが、そのころの決着のつけ方。
牧童殺しの濡れ衣を着せられ、彼の絞首刑が決定します。
「最後に何か言うことはないか?」と問われても、彼は無言をつらぬきます。
不条理を受け入れて死ぬことが、自分の運命だと観念したようです。
トム・ホーンの死刑が執行されました。
とてもつらい映画でした。
実は、この映画が、スティーブ・マックイーンにとっても最期になりました。
彼は、予想もしなかった、アスベストが原因の肺がんで亡くなりました。
撮影中の激しい咳こみ。不条理の死を彼も受け止めていたのでしょうか。
この映画をすすめてくれたアメリカ人も、今ごろ、余命宣告をされた友人とタイ旅行をしています。
追記)トム・ホーン、本人による自伝なので、ほぼ実話だろう。
犯罪者とはいえ、トム・ホーンは、多くの人々を狙撃し、殺した自身の罪深さも
感じていただろう。
だから、濡れ衣の殺人罪を受け入れたと思われる。キリスト教でいう罪深い自身の「原罪」を受け入れて、死刑に無抵抗だったのかと想像。
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