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自分らしく生きるのが、こんなにつらいことなのか

ほんとうに助けてほしいのに、誰も助けてくれない。覚悟していたことだったけど。

身体が落下していく。止まらない。

顔をセロテープで縛られた。あらゆる憎しみがおそってきた。

「ナチュラルウーマンnatural woman(2017)」チリ・ドイツ・スペイン・アメリカ合作。
監督セバスティアン・レリオ、主演ダニエラ・ヴェガ
ベルリン国際映画賞金熊賞の候補作。アカデミー賞外国語映画賞にチリ代表作として史上初受賞


トランスジェンダーのマリーナが、既婚の男を愛したことからすべてが始まった。

ある夜、男は階段から落下し、死亡した。彼女は、救急車を呼び、家族に迷惑のかからないよう、病院を去った。

女刑事は、マリーナが、病院から逃げ去ったことに疑問を持った。

女刑事は、彼女が男と争い、男を階段から突き落としたと推測した。

争った傷跡がないか、マリーナの全裸撮影を要求した。

彼女は、全裸撮影を拒否したが、無罪立証のために認めさせられた。

女刑事が裸体の隅々まで目を光らせ、カメラマンがレンズを通してクローズアップした。5分が、1時間にも感じる屈辱だった。

彼女は無罪になった。


マリーナが家に帰ると、故人の息子が部屋にいて「出て行け。今日から、ここは俺の家だ」と言った。

彼女は、ローカルのプロ歌手、そしてウエイトレスとして働き、自立していた。

男から1ペソももらっていなかった。家は彼女のものだった。家族や息子はそれがわかっていなかった。

街を歩くと、故人の親戚の不良たちが、罵声を浴びせかけてきた。

とっても大切な人を亡くした人間に、さらに鞭打ってくる人びとがいた。

マリーナは頭が混乱した。

彼女の相談相手、ヴォイス・トレーナーのもとに行き、「愛の意味を教えて」と尋ねた。

「愛に正解はないよ。愛は与えるものであって、与えられるものではない」と
初老の男が答えた。

腑に落ちた。
祝福されるだけが愛ではない。ひっそりと想いを寄せる静かな愛があると思った。

男の妻が、家族の世間体を考え、マリーナの通夜や葬儀参列を猛然と拒んできた。

マリーナにとって、楽しいときを過ごせたパートナーに、最後のお別れを言いたかっただけだった。

葬儀場がダメならと、警備の手薄な火葬場に忍び込んで、惜別を告げた。

ナチュラルウーマンの楽曲が流れている。

♪私の魂が、忘れ物置き場にあったことを、あなたは教えてくれた

あなたのそばでは、ありのままの女性の自分でいられた♪

キャロル・キングのナチュラルウーマンは、溶けて、マリーナの細胞に宿った。


⭐️⭐️⭐️⭐️
映画を離れても、リアルなトランスジェンダーのダニエラ・ヴェガには、差別の日々は少女の頃から続いていた。トラウマになりながら、差別される女を演じたダニエラの演技を讃えたい。

この映画は、トランスジェンダーがどれだけ迫害されているかを教えてくれる。
トランスジェンダーにとっては容赦のないストーリーだった。自分らしく生き抜く権利を守ってあげるダイバーシティを遵守する大切を再認識した。


お付き合いいただき感謝申し上げます。


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