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クオラに散らばめられた、プロの意識~マモリエあいら編~

こんにちは。経営企画室の亀崎です。

今回は、今年の1月からスタートした連載シリーズ『クオラに散りばめられたプロの意識』をお届けします。

『クオラに散りばめられたプロの意識』では、クオラの幅広い事業を支える皆さんに潜んだ『プロの意識』を、私たちの言葉で記事にすることで医療福祉を生業(なりわい)とする皆さんに触れてほしいという思いのもと生まれたシリーズです。

過去記事はこちらから⇩

今回は『マモリエあいら編』ということで、マモリエあいらの取組をインタビューや過去の資料をまとめる形でお送りしたいと思います。

マモリエあいらのプロの意識との出会い

クオラグループでは、2019年4月からの働き方改革関連法の施行に伴って、「クオラは働きやすい職場づくりに取り組んでいます」ということを誰の目から見ても分かるようにしていきたいという思いから、企業認定を取得することになりました。

企業認定取得をきっかけに、医療法人、社会福祉法人ともに、メディアへ取り上げられる機会やその他の表彰等に推薦される機会も増えてきています。

そんな中で、マモリエあいらは、国の「介護職員の働きやすい職場環境づくり」表彰において、「厚生労働大臣 奨励賞」を受賞しました。

介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰とは
この表彰は、国が令和4年12月に取りまとめた「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」に基づき、職員の待遇改善、人材育成及び介護現場の生産性向上への取組が優れた介護事業者への表彰を通じた好事例の普及を図ることを目的に、令和5年度から始まったものです。

クオラグループホームページより⇩
https://www.qoler.jp/mamorieaira/hatarakiyasui-shokuba_20230830/

厚生労働省からの表彰でしたので、「これは話を聞かせてもらわなければ」と、マモリエあいらに取材を申し込みました。

『厚生労働大臣 奨励賞』を受賞した取り組みを聞きたい!と思い申し込んだ取材でしたが、話を聞いていくうちに、賞を受賞するために何かに取り組んでいたわけではなく、日々の取組の結果が評価につながったのだなと感じました。

ここからは、マモリエあいらの平野部長、杉浦事務長、山口課長のお話しを交えながらマモリエあいらの歴史をたどっていきたいと思います。

マモリエあいらの遍歴

特別養護老人ホーム マモリエあいらは、平成21年、鹿児島県姶良市でグループ初のユニット型施設として開設しました。

初のユニット型施設だったこともあり、開設当初は、職員全員がユニットケアの経験がなく、すべてが手探り状態で、入居者対応に追われる日々でした。結果的に、職員は身体的・精神的に疲弊し離職者が増え、職員が定着しない状況が続きました。時間外勤務も多くなり、ケアも画一的となり最悪な状況となっていました。
また、新人職員を育成する余裕もなく、知識や技術に不安があってもユニット型という特性から、互いに確認できる環境にないことなど、教育体制が不十分でした。

そもそもユニットケアのノウハウも分からない。で、それをどうやって展開していこうかっていうことで、いろんな取り組みを始めました。
私の信念としては、介護職も専門職なので、“プロフェッショナルとしての人材を育てたい”っていうのは、私の第一の目標でした。そうするために何をやっていくかってことで『利用者さんの豊かな暮らしを継続すること』『職員がやっぱりここだったらずっと働いてもいいなと思える環境づくり』この2つをずっと考えて取り組んでいきました。

平野部長談

平野部長のこんな思いから、現在に繋がる取組がスタートしたわけです。

マモリエあいらの取り組み

開設当初の最悪ともいえる状況を打破すべく、以下の3つを軸に取り組みを進めていきました。

①1日24時間の業務分析をもとにした職員配置の見直し
②職員の健康・生活面に着目した働き方改革
③職員のモチベーション向上

①1日24時間の業務分析を職員配置の見直し

1ユニット10名の入居者のサポートをするということは、多岐にわたる業務があります。
例えば、洗濯管理やリネン交換、物品補充、環境整備など様々な業務がありますが、これらを介護職が全て担っていました。
これらの業務を細分化することで介護職の精神的な余裕ができ、利用者支援に密に関わることができるのではないかと考え、介護業務補助職員を配置しました。いわゆる間接的介護を担う職員となります。

九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より
九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より

業務補助職員も、介護職・看護職と同様にユニット担当を振り分け、役割分担することで、多職種との連携が深まり、責任感ややりがい意識の向上にもつながっています。結果として、より専門性を活かしたケアの実践へとつなげることができています。

また、業務分析と見直しにより確保できた時間を職員の知識・技術等の習得にも活用しました。

・ノーリフト⇒腰痛予防・剥離予防
・排痰ケア⇒吸引頻度減少
・口腔ケア⇒誤嚥性肺炎予防
・排泄リズムの把握⇒個別の排泄ケア

上記で、私が個人的に注目していたのが『ノーリフトケア(=持ち上げない・抱えない介護)』です。

実は、平成28年にこのノーリフトケアの取り組みについて当時の一億総活躍担当大臣である加藤大臣による視察を受けています。

クオラグループホームページより⇩
https://www.qoler.jp/mamorieaira/20160305_soukatsuyaku/

ノーリフトケア導入の目的
ノーリフトケアに取り組み、自分たちのケア技術を見直すと共に、入居者の負担軽減及び「生活の質」の改善を目指す。

ノーリフトケア実施のための道具はいくつか存在していて、介護補助手袋ハーティーグローブやスライディングシート、また、介護機器の導入も積極的に行なっており、マモリエあいらでは現在は3種類の介護機器を使用しています。

ROBOHELPER SASUKE<通称:サスケ>
床走行式リフト Golvo 9000<通称:リフト>
床走行式リフト SABINAⅡ<通称:スタンディング>

介護機器を使うと職員はもちろんですが、介助される利用者側の負担もかなり少なくなります。結果的に、職員にとっても、利用者にとっても優しい介護が実現できることになります。

また、身体への負担はもちろんですが、介護機器を使用することで、体格や性別関係なく同じ質のケアを実施することができるのもメリットだと感じています。

②職員の健康・生活面に着目した働き方改革

ワークライフバランスを実現するために、会議・研修の開催方法の見直しを実施しました。

九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より

見直し前
現状の業務スケジュールに合わせ、職員が一人でも多く会議や研修に参加できるようにするため、早出業務が終了する16時~18時頃に開催。

見直し後
勤務者が多く、勤務時間内で参加できる時間帯へ変更。
開催時間の変更や同一内容の研修を複数回実施することで、全職員が勤務時間中にもれなく研修を受けることが可能となった。

時間外勤務の削減、職員への負担軽減を図ることでワークライフバランスを保つことが可能になりました。

その他の取り組み
<健康面>
・定期健康診断に基づく、管理栄養士や産業医による個別健康管理指導
<休暇面>
・有給休暇を使用しての連休取得や誕生日に有給休暇を取得推進
<働き方>
・育児等のライフステージごとの柔軟な働き方の選択

③職員のモチベーション向上

マモリエあいらでは、これまでに様々な検討や取組を経て、職員指導や育成に関するカリキュラムを構築しています。

九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より

<入職時>
入職時研修カリキュラムとして、5日間の座学、実技等の研修を行ないます。この入職時研修カリキュラムは、新卒入職者だけでなく、中途入職者にもしっかり行なわれます。研修カリキュラムの最後には、ユニットでの育成担当者だけでなく、施設長や所属長をはじめ、上司にあたる職員や、他職種の代表者が集い交流する時間を設けています。入職した側、受け入れた側の双方にとって、この交流の時間は働いていくうえで大変重要だと考え、カリキュラムの中に位置づけています。

<職種等級ごと 研修体系>
グループ内で同じ評価基準を使用して指導育成することで、事業所ごとでの介護の質の差については見られなくなってきました。

<マイスター、インストラクター制度>
段階的なキャリアアップと併せて、社内認定制度となるケアマイスター制度を設けています。
認定取得後の職場での役割創出として、施設内における職員へのケア技術指導を担ったり、職員入職時の研修科目などを担当することで、モチベーション向上につながっています。

ケアマイスター制度については、過去に詳しく書いておりますので、そちらをご覧ください。

活動の成果と評価

これまで紹介した取り組みの成果をグラフで示します。

九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より

こちらは、開設以降の入居者の年間入院者数と総入院日数の推移を示しています。両データともに年々減少傾向となっており、入居者の施設における安定した暮らしの継続が可能となりました。

九州老人福祉施設職員研究大会発表資料より

こちらは職員の時間外勤務、有休取得日数、離職率の推移です。時間外が減少するのとは逆に有休取得日数は増加し、離職率も開設当初からすると、大幅に減らすことができました。

今回の「厚生労働大臣 奨励賞」もですが、周りからの評価を得ることは、外部への広報だけでなく、内部に対しても大きな効果があると考えています。

やっぱり日々仕事をしていると、「ほんとにこれでいいんだろうか」、「もっと他のやり方があるんじゃないか」とか、色々迷っちゃう部分が出てしまうじゃないですか。そんなとき頑張れば頑張るほど迷うからですね。
だから、何か賞を1つ取ると、「あ、やっぱり自分たちのやってきたこと間違いじゃなかったんだ」っていう風に思えるっていう点も大事かなと思っています。

杉浦事務長談

大切にしている『理念教育』

仕事をしていると、自分たちが何のために働いているのか迷ったりすることがあると思います。迷ったときに立ち返る先となるものとして、または職員が一致団結して仕事をしていくための目標として、理念を大事にしないといけないと考えています。

クオラグループ理念
『よりよい暮らしを実現するパートナーとして地域社会に貢献します。』

クオラには、上記のグループ理念がありますが、そこに加えてマモリエあいらでは施設理念も掲げています。

マモリエあいら施設理念
『私が私であるために』

マモリエあいらの施設理念は『私が私であるために』です。

施設においてもその人らしい暮らしを守るため、施設で生活される「入居者」だけでなく、入居者にとって大切な「家族」、日々身近でサポートさせていただく「職員」も含めて、それぞれの暮らしを大切にする視点を持つ。入居者、家族、職員それぞれが「私らしく暮らす」ことで、入居者のより良い暮らしの実現を目指すというものです。

亀崎:働くうえで大切にしていることって何ですか?
山口課長:理念を体現する、そこに尽きます。理念に基づいてより良い暮らしを実現することもですが、そこを継続できるかも大事だと思っています。そのために、利用者様はもちろんですが、職員も、利用者様のご家族のためにもなにができるのかを考えて仕事をしています。

山口課長インタビューより

記事を振り返って

今回のシリーズは偶然に出会う、現場や職員にとっての当たり前を取り上げることに意味があると考えて特集しています。職員にとっては当たり前に取り組まれていたことかもしれませんが、周りからしてみたら当たり前じゃなく、スゴい取り組みであったからこそ、大臣による視察を受けたたり、今回の厚生労働大臣表彰 奨励賞を受賞されることに繋がったのだと思います。

マモリエあいらで働いている職員の方はじめ、クオラの職員は当たり前だと思って取り組まれている仕事も、もしかしたら自分たちが想像しているよりもスゴいことをしているのかもしれません。

今回の記事から、皆さんの日頃の仕事が、患者様、利用者様、その家族、そして皆さん自身のより良い暮らしに繋がっていることが伝われば嬉しいです。

取材と記事作成にご協力いただきました平野部長、杉浦事務長、山口課長、マモリエあいらのスタッフの方々、ありがとうございました。

次回は、どんなプロの意識に出会えるのか楽しみにしていてください。

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