見出し画像

ハラスメントの基礎知識

こんにちは。経営企画室の亀崎です。

令和5年度も下半期に入り、医療法人ではハラスメント相談窓口担当者に一部変更がありました。この機会に改めてハラスメントについて皆さんにお伝えしたいと思います。

一部管理職向けの内容になっているところもありますが、読んでいただくことでハラスメントへの理解が深まると思いますので最後までご覧いただければと思います。

ハラスメントとは

「嫌がらせ」や「いじめ」行為を指します。 職場においては、上司や同僚の言動が本人の意思とは関係なく、 相手を不快にさせたり、傷つけたり、不利益を与えたりすること で、就業環境を害する行為が該当します。

代表的なものを挙げると、セクシュアルハラスメント(セクハラ)妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)パワーハラスメント(パワハラ)があります。

例えば…
◎職場のエレベーター内で上司がたびたび腰を触るので苦痛に感じて就業意欲が低下している
セクシュアル ハラスメント

◎妊婦健診のために休暇を取得したいと上司に相談したら「病院は休みの日に行くものだ」と相手にしてもらえなかった
妊娠・出産等に関する不利益扱い/ ハラスメント

◎蹴られたり、殴られたりした 
◎同僚の前で、上司から無能扱いする言葉を受けた
◎達成不可能なノルマを常に与えられる
◎先輩、上司に挨拶しても、無視され、挨拶してくれない
パワーハラスメント

他にも、性別を理由にしたハラスメント「ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)」、モラルに反した言葉や態度による嫌がらせや暴力「モラルハラスメント(モラハラ)」、飲酒に関連した嫌がらせや迷惑行為「アルコールハラスメント(アルハラ)」などもあります。

最近では、コロナ禍の在宅勤務とともに増えているリモートワークに関する嫌がらせ「リモートハラスメント(リモハラ)」だったり、上司が部下に対して業務上適切な指導を行った際に、部下がハラスメントだと騒ぎ立てる行為「ハラスメントハラスメント(ハラハラ)」も多くなってきているといいます。

ハラスメントに関する法的整備

ハラスメントに対しては、事業主に防止措置が義務づけられています。直近では、令和4年4月1日より労働施策総合推進法が改正され職場における パワーハラスメント対策が中小企業の事業主にも義務化されました(クオラは令和2年6月1日の改正労働施策総合推進法施行時に義務化対象となり、対策を実施しています)。

男女雇用機会均等法(セクハラ)
職場において行われる性的な言動に対するその雇用 する労働者の対応により当該労働者がその労働条件 につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当 該労働者の就業環境が害されることのないよう雇用 管理上必要な措置を講じなければならない。 (男女雇用機会均等法第11条)

妊娠・出産・育児介護休業等(マタハラ)
【不利益取扱い禁止】
• 妊娠・出産を理由とする不利益取扱いの禁止 (男女雇用機会均等法第9条 第3項)
• 育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いの禁止 (育児・介護休業法第10条等)
【ハラスメントの防止措置】
• 上司・同僚からの妊娠・出産等に関する言動により妊娠・出産等をした女性労 働者の就業環境を害することがないように防止措置を講じること (男女雇用機会均等法第11条の2)
• 上司・同僚からの育児・介護休業等に関する言動により育児・介護休業者等の 就業環境を害することがないように防止措置を講じること (育児・介護休業法第25条)

労働施策総合推進法(パワハラ)
職場において行われる優越的な関係を背景とした言 動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたも のによりその雇用する労働者の就業環境が害される ことのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適 切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用 管理上必要な措置を講じなければならない (労働施策総合推進法30条の2第1項)

また、厚生労働省が公表しているデータによると、民事上の個別労働紛争における相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数の 全項目で、「いじめ・嫌がらせ(いわゆるパワハラ)」の件数が最多となっています。

『厚生労働省:「令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します』より

またセクシュアルハラスメント、職場における妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いやハラスメントも身近なところで多く発生しています。

『令和元年度 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)での 法施行状況』より

ハラスメント詳細

ここからは、代表的な3つ「セクハラ」「マタハラ」「パワハラ」について詳細を確認していきます。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場におけるセクシュアルハラスメントは、『職場』※1において行われる、『労働者』※2の意に反する『性的な言動』※3に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されることです。

※1「職場」とは 事業主が雇用する労働者が業務に従事する場所を指し、 労働者が通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれます。

※2「労働者」とは正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約 社員などいわゆる非正規雇用労働者を含む、事業主が雇用するすべての労働者を言います。

※3「性的な言動」とは性的な内容の発言および性的な行動を指します。
①性的な内容の発言例
⇒性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報(噂)を流布すること、性的な冗談やからかい、 食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話すことなど
②性的な行動例
⇒性的な関係を強要すること、必要なく身体へ接触すること、わいせつ図画を配布・掲示すること、 強制わいせつ行使、強姦など

取引先、顧客等も職場におけるセクシュアルハラスメント の行為者や被害者になり得ます。 また被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、性的な言動であれば、セクシュアルハラスメントに該当します。

「行為者」「被害者」について
セクシュアルハラスメントでは、男性職員が「行為者」、女性職員が「被害者」となる ケースだけではなく、以下の点も考慮しておくことが必要です。
●男性が「行為者」、女性が「被害者」となる場合だけでなく、男性が「被害者」や女性が「行為者」になる場合もあること、また、同性同士もセクハラになること
●職員同士だけでなく取引先や顧客もセクハラ対象となり得る

セクシュアルハラスメントの背景になり得る言動について

「男らしい」「女らしい」など、固定的な性別役割分担意識に基づいた言動も、セクシュアルハラスメントの原因や背景となってしまう可能性があります。

• 結婚、体型、容姿、服装などに関する発言
• 「男のくせにだらしない」「家族を養うのは男の役目」
• 「この仕事は女性には無理」
• 「子どもが小さいうちは母親は子育てに専念すべき」 など

このような言動は無意識のうちに言葉や行動に表れてしまうものです。 日頃から自らの言動に注意するとともに、上司は部下の言動にも気を配り、 セクシュアルハラスメントの背景となり得る言動についても配慮することが大切です。

妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)

『職場』におけて行われる上司・同僚からの言動(妊娠・ 出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業等を申出・取得した男女労働者等の就業環境が害されることです。

妊娠・出産等に関するハラスメントは2種類あります。

(1)制度等の利用への嫌がらせ型

①解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの ※1回の言動でも該当

【典型例】産前休業の取得を上司に相談したところ、「休みをとるなら辞めてもらう」と言われた。

②制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの ※上司は1回の言動でも該当 同僚は繰り返し又は継続的なものが該当

【典型例】育児休業の取得について上司に相談したところ、「男のくせに 育児休業を取るなんてありえない」と言われ、取得を諦めざるを得ない状況になっている。

③制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの ※繰り返し又は継続的なものが該当

【典型例】上司・同僚が「所定外労働の制限をしている人に大した仕事は させられない」と繰り返し又は継続的に言い、専ら雑務のみさせられる状況となっており、就業する上で看過できない

(2)状態への嫌がらせ型

①解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの ※1回の言動でも該当

【典型例】上司に妊娠を報告したところ、「他の人を雇うので早めに辞めてもらうしかない」と言われた。

②妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの ※繰り返し又は継続的なものが該当

【典型例】上司・同僚が「妊娠するなら忙しい時期を避けるべきだった」と繰り返し又は継続的に言い、就業する上で看過 できない程度の支障が生じる状況になっている。

妊娠・出産等に関するハラスメント予防策

①妊娠中・出産後の働き方について、軽易業務転換などの必要性や育休、短時間勤務の取得希望を労働者に確認する
②今後の代替要員の確保など、職場の体制について検討
③総務課に連絡を取り、休業期間、休業中の賃金等の取り扱い、休 業後の労働条件等について労働者への説明
④休業中の業務の引継ぎや担当は、部下任せにせず、管理職が関与する
⑤復職者に対しては、仕事と育児の両立がうまく進んでいるか確認する
また、周囲の労働者に対しては、業務の偏りが生じていないかを確認し、必要に応じて業務分担の調整を行う

パワーハラスメント(パワハラ)

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることです。

職場におけるパワハラの3要素

パワハラの6類型

(注)すべてを網羅するものではありません

パワハラ予防策の一例

①コミュニケーション活性化やその円滑化のための研修等の実施

<例>
・日常的な会話を心掛ける
・定期的に面談やミーティングを行う
・コミュニケーションスキルアップ、マネジメントや指導についての研修 等の実施や資料の配布 等

②適正な業務目標の設定、長時間労働の是正等の職場環境の改善

<例>
・適正な業務目標の設定や業務偏重の評価制度の見直し
・適正な業務体制の整備や業務効率化による長時間労働の是正 等

ハラスメントには該当しない 『業務上の必要性』に基づく言動

ここまで確認いただくと、「全部の発言や行動がハラスメントに該当しそうで何もできないじゃない…」と思われる方も多いと思います。

業務分担や安全配慮等の観点から、客観的に見て、 業務上の必要性に基づく言動はハラスメントには該当しません。

【具体例】 「制度等の利用」に関する言動の例
a. 業務体制を見直すため、上司が育児休業をいつからいつまで取得するのか確認すること
b. 業務状況を考えて、上司が「次の妊婦健診はこの日は避けてほしいが調整できるか」と確認すること
c. 同僚が自分の休暇との調整をする目的で休業の期間を尋ね、変更の相談をすること

➢ b.やc.のように制度等の利用を希望する労働者に対する変更の依頼や相談は、強要しない場合に限られます。


【具体例】 「状態」に関する言動の例
a. 上司が、長時間労働をしている妊婦に対して、「妊婦には長時間労働は負担が大きいだろうから、業務分担の見直しを行い、あなたの残業量を減らそうと思うがどうか」と配慮する。
b. 上司・同僚が「妊婦には負担が大きいだろうから、もう少し楽な業務に変わってはどうか」と配慮する。
c. 上司・同僚が「つわりで体調が悪そうだが、少し休んだ方が良いのではないか」と配慮する。

➢ 上記の配慮については、妊婦本人にはこれまでどおり勤務を続けたいという意欲がある場合であっても、 客観的に見て、妊婦の体調が悪い場合は業務上の必要性に基づく言動となります。

事業主が講ずべき措置

職場におけるハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置について、厚生労働省の指針により定められています。 事業主は、これらを必ず実施しなければなりません。

事業主が講ずべき措置
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
④職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因 を解消するための措置
⑤併せて講ずべき措置

相談を受ける時のポイント

以下の発言は、いずれも不適切な相談対応を示しています。 相談者の気持ちをよく考えて、言葉や態度で傷つけないように配慮しましょう。

・相談者にも問題があるような発言
「あなたにも隙があったのではないか」
・不用意な慰め
「あなたが魅力的だから、ついそのようなことをしてしまったのでは」
「あなたが優秀だから、将来を考えて言ってしまったのでは」
・行為者を一般化するような発言
「男性(女性)はみんなそのようなものだ」
・きちんと対応する意思を示さない発言
「時間が解決してくれます」
「彼(彼女)も悪い人ではないから大げさにしないほうがよい」
・相談者の意向を退け、担当者の個人的見解を押しつけるような発言
「上司に謝罪させたりしたら、職場に居づらくなるのではないか」

職場におけるハラスメントに関する相談を受けた時は、 以下のことを心掛けてみてください。

相談者のプライバシーに配慮すること
相談者に対して、秘密を厳守すること、相談したことによって不利益な取扱いを決してしないこと をあらかじめ伝えましょう。相談者と同性の相談対応者を含む複数名で対応するようにします。ま た、行為者や第三者に対して事実確認をする場合には、必ず相談者の許可を得てから対応すること もあわせて伝えましょう。
相談者がリラックスして話せるように配慮すること
相談を受けている時は、自分の意志は抑えて、相談者の話を傾聴しましょう。相談者が話しやすい ように、真正面に向き合うよりも90度の角度や斜めの位置に座り、友好的な態度をとることが望ま しいでしょう。
相談後にねぎらいの言葉をかける
勇気を出して相談したことに対して、ねぎらいの言葉をかけましょう。管理職は相談者に対して、 誠実な姿勢で対応することが重要です。

職場におけるセクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハ ラスメントを未然に防止するための職場づくりに取り組みましょう。

➢ 妊娠・出産等についての知識や制度について知っておきましょう。
➢ 妊娠中・育児中の制度を利用しながら働いている社員に対しては、業務 の状況とともに、周囲とのコミュニケーションに関しても目配りするよ うにしましょう。
➢ 「子どもが小さいうちは家にいた方がいいのではないか」など、自分の 価値観を押し付けないようにしましょう。
➢ 自分の行為がハラスメント行為になっていないか注意しましょう。
➢ 隠れたハラスメント行為がないか、周囲のメンバーの変化に注意しま しょう。
➢ お互いを理解し合い、尊重する職場の雰囲気を醸成しましょう。

ハラスメントについて考える(クイズ)

ここまで読んでハラスメントについての理解を少しは深めることができたのではないでしょうか。最後にクイズを用意しています。これまでの内容を理解できた方はきっと全問正解できるはずです。自分自身が理解できたかの確認の意味も込めてクイズに答えてみてください。

クイズ①
クイズ②

答え・解説はこちら

おわりに

ハラスメントは身近に潜んでいます。「おかしいな」「嫌だな」など、少しでも悩むことがあれば、各事業所に配置している相談窓口までお気軽にご相談ください!また外部の相談機関等もありますので、それらを有効に活用してみてください。


この記事が参加している募集

オープン社内報

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?