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福島で学んだ責任の取り方

こんにちは、QoiQoiの大橋悠太です。
今回は僕らが福島での取材を行った際に学んだ、犯してしまったミスに対する責任の取り方について言葉にしてみたいと思います。

僕らは今もまだ未熟で、成功体験をお伝えすることは難しいのですが、失敗をありのままに語り、そこから学んだことを共有することは多少なりとも価値があるのではと思っています。
成功の仕方に正解はないけれど、失敗の仕方には確実に共通点があると思うので、同じような失敗をした際やそうならない為に小耳に挟んで置いて頂けたら幸いです。

ちなみにこの記事で話す失敗とは、こちらの記事で少し触れています。
先に読んで頂くと前後関係がはっきりするかなと思いますので、宜しければこちらもお読みください。


目次
1、犯してしまったミスは取り返しがつかない。
2、ミスに対して僕らが行ったこと。
3、謝罪・洗い出し・即改善
4、まとめ


1、犯してしまったミスは取り返しがつかない。
この話は2019年8月頃に遡ります。
当時、僕らはanoという団体名で活動しており、その年の2月に旗揚げ公演を行ったばかりでした。そんな僕らは次の作品のテーマを「福島の復興と今を考える」と定め、自分たちでも初の試みとなる映像作品の制作に取り掛かりました。しかもこれまた初となる、クラウドファンディングにも挑戦していたのでした。

そんな中、2度目の福島取材に赴いた7月末。
福島県の浜通りではひときわ大きな伝統行事である「相馬野馬追」を取材し、甲冑を着込んだ騎馬武者の「お行列」に圧倒されたり、「甲冑競馬」や数十騎の騎馬が壮絶な取り合いを繰り広げる「御神旗争奪戦」などを間近に見て興奮したり。
前回の取材では感じられなかった、現地の人々の気風や活気、土地や伝統への想いを感じられる取材になりました。
そして野馬追を取材した後に、双葉郡大熊町という場所に訪れました。当時一部の地域で避難指示が解除になったばかりだった大熊町は、未だバリケードが設置され町の大半が帰還困難区域となっていた場所でした。(現在は常磐線も開通し、かなり入れる場所が増えています。機会があればぜひ訪れてみてください! おいしいイチゴのジャムも売っています)
そこで現地に住む方の案内の元、大熊町を一周しながら町の事などを聞かせて頂き、とても有意義な時間を過ごすことができました。

問題はその後で現地で見てきたこと考えてきたことを、クラウドファンディングの活動報告として記事にしたときに発生しました。
大熊町に関する記事を公開しその記事を、案内してくださった大熊町の方にも見て頂いた際に、ご指摘とお叱りを受けたのです。
僕らの勉強不足が大きな原因で、現地の放射線量の値や情報や名称が一部間違っていたり、その方のお名前などを安易に記載してしまったりしていました。更には意図とは違う話を書いている箇所や風評被害と言えるのではないか、というご指摘も頂きました。

……今考えると、ここまで全ての地雷を踏み抜けるかというほど、明らかにしてはいけないミスを犯しまくっていたワケなのですが、当時の僕らにとってはそうしたネットリテラシーや取材手順などの知識も全くと言っていいほど無く、2人で手探りのまま制作を進めていました。
そのためお叱りを受けた時には、まさに寝耳に水と言った状態で、正直震え上がりました。


2、ミスに対して僕らが行ったこと。
指先が震え、スマホを何度も取り落としそうになりながらお叱りのメールを読んだ、池袋のカフェドクリエの夜を僕は生涯忘れないと思います。
しかしそんなことをしていても犯したミスは消えることなく、むしろ現在進行形でガンガン自分たちの信用というものを地に堕としていくばかり。
あまりにも慌てた分、気持ちを切り替え冷静になるまでの時間を短くできたのが救いでした。

頭に思い浮かんだ選択肢は3つ。
1、直接会いに行って謝罪する。
2、お電話にて謝罪する。
3、メールにて謝罪する。
相手の方は福島にいらっしゃるので、今すぐできることとしては2か3で、メールが届いた瞬間ではどこが間違っていて、なにが問題なのかすら自分たちでは判断がつかなかったため、電話ではお話する中で更に間違ったことを話してしまうかもしれないと考え、とりあえずメールでお返事を返すことにしました。
僕らはすぐに謝罪と記事の修正をする旨、公開中の記事の削除を行うことをメールしました。今思うとすぐに返事をすることが出来て本当に良かったと思います。早ければ早いほど更なる問題の発生が起こっていたかもしれません。
そして今回のどこがいけなかったのか、どこでそのミスを回避できたか、今後どうすればいいか話し合いました。
今回で言えば、勉強不足は知識を蓄え修正していくことと記事のダブルチェック、取材ノウハウを記録し同じミスを犯さないよう事前の取材交渉を徹底する、誰かの事を記事にする際には投稿前に必ず確認を取ることの徹底をする、ということを洗い出し改善点を学べました。

なにより大きなことは、失敗をした瞬間に判断を止めてはならない、ということです。

失敗は誰でもするしそれは仕方がないけれど、それを自分たちにとっての学びに換えることができるかが、その時に問われていると思います。
失敗をそのままにして後悔に耽ったり、誰かを責めたり、必要以上に悩んでしまうのはただの怠慢で、失敗した時にこそ「被害を最小限にするための決断」と「そこから学べる知恵を引き出す」ことをしなければならない。
ミスした次の瞬間には、改善に向けて動き出しているのが理想的だと思います。


3、謝罪・洗い出し・即改善
ミスした時こそ素早く決断して、即座に行動する。
立ち止まる瞬間など一瞬たりともあってはならない。やるべきことと学ぶべきことが、そこでは山ほど同時に存在しているからです。
「謝罪・洗い出し・即改善」これが一番大事だと学んだと同時に、明確な自分たちのミスの部分と、価値観や主張・表現の違いと言ったものの差異の部分を、その当時はしっかりと分けて考えることが出来ていませんでした。
実際改めて考えてみると、記事の内容では事実と違う部分は確かにあるが、相手の方の主張がすべて正しい訳ではない部分もありました。
ある人は風評だと言い、別の人は事実だと言う、その別々の主張があること自体は紛れもなく僕らが見てきた現地の現状でした。

しかし僕らはその時に、その事実すら謝罪してしまいました。
それは別の意味で僕らの信用を堕とす行為であったことを、今にして思います。僕らは自分たちが間違っていないと思うことは謝罪をせずに、その差異や僕らの考えを伝えて対話するという機会を自ら手放してしまった。
それは時に、作り手自身の信念を裏切ってしまう行為でもあると思います。
だからこそ現在では、自分たちの表現に疑問や批難が飛んできても、それを受け止め、常に自分たちの考えを伝えられる状態にして作品を作っています。
自分の表現に信念を持ち、貫く」これも福島の取材で学べた大切な事でした。


4、まとめ
いかがでしょうか。
自分で書くのも憚られる情けないミスではありますが、それだけで終わらせずに、その失敗をどう次に活かすか、ご自身の活動でも考えて頂けたらと思います。
また、作品を作る上では色々な失敗が襲い掛かってくると思いますが、その対応の軸となるのは「自分の表現への信念」だと思います。
それがあるからこそ、自分の責任というものを自覚して活動ができるのだと思いますので、もしも自分の表現の信念が分からない方がいたら、一度とことん向き合い考えて、答えを出してみるのをオススメします!

お付き合いいただきありがとうございました!
今回はここで失礼します、またお会いしましょう。
ではまた。

QoiQoi 大橋悠太



QoiQoiプロフィール
2018年2月9日に大橋悠太と吉次匠生によって結成されたアートユニット。 当初はano(アノ)として活動していたが、2020年10月1日より団体名を改めQoiQoi(コイコイ)として新たな活動を始めている。

また、「想像力を創造する」を信念に演劇、映像、インスタレーションなどさざまな分野を飛び越え作品制作を行う。団体名のQoiQoiもquality of imaginationが由来である。 また、社会問題から個人の体験まで幅広い事象を可視化し、常に観客に「当事者性」を提示する作品作りが特徴である。

このnoteでは作品制作のことを中心に、被災地のことや原発のこと、その他考えたことなど、読んでくれている方へなるべく為になるような記事や僕らをより知っていただける記事を書いていくことを目指しています。
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