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ブランディングを始めるタイミングって?

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」 コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。



このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で
語った内容を文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
Voicyもお聞きください。

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Voicy No.0026  2121年8月30日収録
ブランディングを始めるタイミングって?

ビジネスが成り立ってない。

自分のところに来るご依頼は、最初は大手だけしか受けていませんでした。営業をしなくてもアドバイスとかプロデュースという仕事が成り立つので、そんなに気にならなかったんです。マーケティングとかブランディングは、ある程度、人やお金をかけてやるという認識もありました。

それが今は、ブランディングが個人事業主とか中小企業の方にも最も必要なことかなと思ったので、2年前ぐらいから、そういうお仕事を受けるようにしたのです。

小哲津ゼミという勉強会も始まりました。いわゆるオンラインサロンですが、リアルでもコロナに配慮しつつやっています。

ビジネスを普通にやっていると、ブランディングしようという話が出てきます。ブランディングを始めるタイミングではないと思うクライアントとかビジネスをやっている方が、話を聞いていていると気付いたのね。

まず、全く食えていない状態、ビジネスとして成立していない状態でのブランディングは、始めるタイミングとして、とても難しいです。

今でこそ経営経験もあり、まあまあ大きな会社の社長もやり、ビジネスをこういう形で皆さまと一緒に考えるようなお話ができるようになりましたが、俺も出だしの会社のときはキャッシングしてやりくりしていたからね。26歳の小哲津青年は、全く経営能力もなく自転車操業でしばらくやっていたので、そのときの俺がブランドをつくろうと思っても、難しいです。

それはなぜかということと、どうやってブランディングを始めるかという話を順にお伝えします。

まず、食えていない状態とかビジネスが成立していない状態では、売れるために何でもやる感じです。ブランディングよりは先にマーケティングをやるほうがいいし、マーケティングよりも先にセールスをやったほうがいい。

効果のスケールとその特性を解説しますが、これは本題じゃないので短めにいきます。

ブランドオーナーやビジネスオーナーが直接お話しして、目の前の方に納得いただいて買ってもらうことが一番早いです。それが成立していないのであれば、多分そのビジネスはズレているので修正が必要です。

自分の周りの人が誰も欲しがってない商品やサービスを提供しているから、セールスが成立しないのです。ビジネスオーナーが直接説明をすること以上に、熱を持ってうまく伝える方法はありません。

マーケティングはSNSでデジタル化したりして薄めるだけなので、直接1対1で話すこと以上の説得力は発揮できません。セールスよりもマーケティングのほうが特性としては広範囲。マーケティングとか集客は、さまざまな人に知ってもらえます。ただ、熱量とか納得度は絶対に下がるんです。

セールスは納得していただく可能性も高いし、相手の反応に合わせてお話ができるのでいいけれども、量的なものが「自分が1対1で売っているので」となります。自分の周りの人にお話をして、「それいいね。すてきだね」と買ってくれる状態ができてきて、もっと広くの方に、これをお知らせしていけば売上規模が上がるかなということでマーケティング。

多くの方に買っていただけて興味を持っていただける状態になり、マーケティングのかたちができてきたので、ブランドづくりも一緒にやろうかなというのが一番望ましい順番ではあります。

誰も買ってくれない。誰も興味を持ってくれない……。もしかしたら、それは会う方が悪いのかもしれないけど、多くの場合、ビジネスオーナーの狙いがズレています。厳しいけど、需要がない、何かがズレているという状況でブランディングしたところで、それはブランドづくりの問題ではないのです。

ビジネスモデルに無理があるとか、売っているプロダクトのレベルがご購入いただくレベルに至ってないという根本的な問題があります。そこをいじらずして、セールス・マーケティング・ブランディングというステップを踏もうとしても、それは無理ゲーです。

三輪車でF1のレースに出るようなもので、そもそもプロダクトや商品サービス自体が何かおかしいか、それをビジネスとして展開するビジネスモデルが成立しないような、何か構造的欠陥がある。そこをまず見ないと駄目かなと思っています。

商品やプロダクトも、ポジショニング的にも差別化するかたちとしても、お客さまがご購入いただくような状況と需要があるか、潜在ニーズにはまっていて、ビジネスモデルとしても少しずつ構築していく前提条件があって、ブランディングをやったほうがいいです。本当はね。

何がよくないかというと、売れないときに自分のプロダクトとかコンセプトとかポジショニングの見直しをしないからです。ブランディングをやれば売れるんじゃないか。ブランディングは魔法の薬だ、と思っている人が結構多いからです。

商品、プロダクト、ご自身がやっていることの魅力が全く足りていないのに、広くあまねく知ってもらえさえすれば売れると思っている。

プロダクトの魅力があって、ポジショニングもしっかりできていて、その上で広く知ってもらうからブランディングに意味があります。広く知ってもらうのはマーケティングで、ブランディングとはまた別の話です。

こういうことがあるので、ブランディングを始めるタイミングは、全くビジネスが成立していない状況だとやりにくい。売るために変えなければいけないことが結構多いからです。

そもそもブランドとは、損得を超えて守り通したい思想やスタイルがあるものだけど、それは「たけている」から言えること。ビジネスとして成立していて、もっと売るなら、こういう方法があるとか、こういうデザインで売ってみたらとか言われたときに、「自分たちのブランドのあり方として、そういうものは出さないと決めている」というのがブランドです。

最近の放送で例に挙げたように、例えばヴィトンが、モノグラムという家紋のような紋章がデザインされた鞄を出していますよね。ヴィトン柄はもちろん好みの問題で、好き嫌いはめちゃくちゃあるデザインです。

鞄全体にヴィトンだとわかるものがあったら恥ずかしい。なんであれがいいと思うんだという人もいれば、ヴィトンのファンの方、これじゃなきゃ駄目という方は、あれをやめてもらったら困るわけです。


「ライスワーク」と「ライフワーク」

そこで「これが嫌だという人もいるな」ということで、ヴィトンがモノグラムをやめるとします。「なんで?」「もう流行っていないので」みたいなことでやめるなら、それはもうブランドではない。嫌なもの、誰も支持していないものを貫き通せということではありません。ブランドとして成立しているものには、「自分たちの思想から来るスタイルなので」というところがあるのです。

「コーヒーも売るんだったら、ハンバーガーも売ったらいい。ポテトとハンバーガーのセットで380円とか安いのを売れば?」みたいなことを、例えばスタバに行って提案する。スタバのSを大きくしたらマクドナルドに対抗してハンバーガーは売れると思うけど、スタバはやらないですよね。

それはコーヒーを大事にするという考え方だからです。「マクドナルドの業績が今コロナ禍でとても上がったんだ。マクドナルドのポテトが売れているらしいよ」と言われても、コーヒーのおいしさを中心に据えるというブランドのあり方からすれば、スタバはやらないじゃないですか。

ブランドには、ある種自分の守り通したいものがないと、ファンの方が「これじゃなきゃ駄目」と言ってくれません。そう考えると、ビジネスとして成立せず食えていないときに、自分たちのポリシーとか思想とか哲学を強く持ち続けるのは難しいのです。

いくつか例を挙げたので整理します。

ビジネスモデルが成立していることと、ブランドになっている状態をつくりあげること。この2個が両方できるようになれば、ビジネスは非常にやりやすい。

そもそもビジネスモデルが成立していない、全く売れていないという状況であれば、そこに手を付けるのが先。それをブランディングの力のみでどうにかできるみたいな魔法の力を期待しないほうがいいと思います。もしかすると商品、サービス、コンセプト自体が間違っているかズレている可能性が高いので、そこを直す。

でも、この話をすると、「じゃあ、どうしたらいいんですか。立ち上げたばかりで新しい事業もなかなか売れないから、ブランドづくりをやりたいんです」となってきます。

それにはやり方がありまして、さすが小哲津ちゃんみたいな感じですよね。プロなので、やり方はあるんです。それは「ライフワークとしてのビジネス」と「ライスワークとしてのビジネス」を分けて進めるのです。

「自分はこれを守り通したい。こういう考えでやっています」というライフワークとしてのビジネス、ライフワークとしてのブランドと、ライスワークとしてのビジネスを分けて進めるというやり方があります。

自分の例を話しますね。

会社を立ち上げたのは相当前ですが、自分はIT関連の会社で起業して、中小企業のサポートをしていたんです。

まだITバブルの前夜というかIT革命が起こる辺りだったので、あまりITを企業が導入していなかった。サポートの仕事をやっていましたが、サポートの仕事は、売る側に技能とか事例を積み重ねて実績を積まないと、なかなか高額な契約を頂けないので、IT関連のサポートの仕事をやるというブランドを守りつつ、もう一方で、パソコンとかを売るというライスワーク(食べるための仕事)をやっていたのです。

これを同じブランド名でやるとごちゃごちゃしてしまうので、ブランド名というか、活動名を分ける必要はあります。自分のブランドで大事にしたいこと、中心に据えたい価値感とかスタイルとか思想があるものをライフワークだけど成立させるために、やるものの横に、全く別な名前で稼げる仕事を始めてしまうということです。

これを同じ名前でやってしまうと、ブランドとしてのコンセプトがずれてしまったり思想と合わなかったりするので、分けるのです。

ブランドとしてのあり方に直結しているものと、ビジネスとして稼ぐためにやることは、意外と大きなブランドでもやっています。

スターバックスは何のブランドかというと、最初はスペシャリティー・コーヒー・ブランドという立て付けです。なので、一応コーヒーを出しているところという認識はあると思う。けれども実際に稼いでいるのはフラペチーノです。ライフワークとしてのコーヒーと、ライスワークとしてのフラペチーノ。これをスタバは1個の名前でやっていますけどね。

マクドナルドも実際にそうで、あり方として「マクドナルドといえばハンバーガー」です。チーズバーガーとかビッグマック。これはライフワークで、ブランドの思想とかあり方に直結しているものですが、実際に稼いでいるのはポテトと飲み物の利益率が高く、あとはシーズナル商品です。マックフルーリーといったものでガンガン稼ぐ。そちらがライスワークで、「食うために」という収益を上げる商品群は、やっぱり分けています。

おそらくハンバーガーで手間を掛けたものを出すときは、まあまあな原価がかかっていると推測されるので、「ポテトと飲みもの」には利益で勝てないです。マックは、全体の利益のかなりの比率をハンバーガー以外のところで上げていると推察されます。

これを中小企業とか個人事業主でもやればいいのです。

自分のビジネスでブランドを確立したい、ブランディングをやっていきたいのであれば、しっかり1つのブランドを育てていき、ブランドのポリシーやスタイルがあるものをやりながらライスワークを横に置く。「一緒にやっています」と言わなくても全然いいけれども、その間にブランドのファンをきちっとつくっていくやり方がいいと思います。

以上、久々野智小哲津でした。

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