見出し画像

2、3年でなくなっちゃうブランドって??

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
Voicyもお聴きください。

-----------------------

コテツさんVoicy No.0039 2021年9月16日収録
2、3年でなくなっちゃうブランドって??

広告費の大量投入

ブランド・ブランディングの話を人とするときに、そもそもブランドというものがとても曖昧な正体不明なものなので、人によって解釈がバラバラなのです。有名なもの、昔からあるものがブランドだと思っている人もいるし、多くの人が支持していればブランドだという人もいます。けれども、ブランドはそういうことではないんだよね。

まず言葉の定義というか、お互い思っているものが違ったら、話がかみ合わないですよね。おいしい料理を食べたいよねと言っても、俺の言っているおいしい料理と、あなたの考えているおいしい料理はおそらく違う。

俺が日清カップヌードルで、相手がブタのショウガ焼きを考えていたら、あなたのおいしい料理はどういうものという確認が必要。おいしい料理を食べに行こうと友達5人が拳を振り上げたところで、5人のおいしい料理は全然違います。

おいしい料理は、みんな食べたいじゃないですか。
でも、そういうことは世の中、多いんだよね。

世界平和に反対する人はいないけれども、概念としての世界平和は全員賛成だと思います。でも平和の在り方が人によって全然違う。覇権主義の大国にとっては、自分たちの国のルールが世界に広まることが世界平和だし、ある主義主張や思想を持っている人は、その思想を世界中の人が信じることが世界平和だと思っているから紛争や戦争が起きる。

今日は政治の話をしたいのではないので話を戻します。

ブランドという言葉は、とても曖昧です。

ほかの放送でも話していますが、自分にとって「それじゃなきゃダメ」という状態ができていることがブランドです。商品、サービス、人のファンでもいいけれど、似たようなものは絶対ある。けれども、自分からすると似たようなものと比べるまでもなく、これに関しては「これ」と決まっていたら、その人にとっては、それがブランドです。

キリン、アサヒ、サッポロとビールが3種類あったときに、どれでもいいやという人もいると思う。でも、「俺はサッポロの黒ラベルに決めている」という人がいればサッポロ黒ラベルはブランドで、どれでもいい人にとっては、サッポロの黒ラベルはブランドじゃないので、すごく個人的なものです。「これじゃなきゃダメ」という人の数が、たまたま多いか少ないかです。

ほかにも、ある人にとってあるものはブランドだけど、ほかの人にとっては全く「これじゃなきゃダメ」という対象になってなければブランドではないという捉え方もあるので、「みんなのブランド」はないわけです。

ヨーロッパや日本ではブランドという「のれん」を掲げたら、それをつむいで長く続けていく。長い関係の中でファンの方の期待に応え続けていくという考えがある。

それに比べてアメリカ型のブランドは、コマーシャルブランドというか、マーケティングブランドという性質が結構強かったりするのです。それはファンをつくっていくよりは、マスマーケティングというか、マスに訴えて広告料で買っていただくという大量生産型のやり方だったりします。

アメリカは歴史がない新しい国なので、ビジネスシステムやハリウッドを含めたカルチャーをどんどん輸出して、文化振興というか世界中で受けるようにしていきました。それがアメリカの考え方です。

イタリアやフランスだと、自分たちが大事にしているものが広がれば喜ばしいと思っている。ですから、それをハリウッド映画のように世界中に売って歩いて、ハリウッドのアカデミー賞のように世界中の頂点に立つような賞をつくってという、ビジネスモデルとしてのカルチャーの売り出しみたいなものを、あまり熱心にやっていません。

話が脇道にそれかかっていますが、コマーシャルブランド、マーケティングブランドと、ファンとの関係を大事にして生き続けようというブランドとは、ちょっと違いがあります。

「2、3年でなくなっちゃうブランド」というのは、サービス名を立てて、特に思想とかスタイルに強いこだわりもなく、マーケティング的に展開されるブランドのことを言っています。

これも誤解のないようにはっきり伝えたいのですが、それがいい悪いではなく、性質が違うのでビジネスのやり方が違うのです。2、3年でなくなる、マーケティングで売りさばく前提ものがよくないと言っているわけではないので、そこは誤解しないでいただきたい。

俺がそういうブランドに関わることも結構あります。例えば、資生堂の椿という商品カテゴリーがあって、2006年に資生堂の椿は鳴り物入りで、社運を賭けて初年度40億とも60億ともいわれている広告宣伝費を使って、女優さんを5人~6人使って異例のコマーシャルをしました。

使っている金額も桁違いだし、コマーシャル=露出量だから、露出の取り方も桁違い。ドラッグストアとか売るべき所では棚を面できっちり取って、目に入る露出量をがっちり取った上で椿は大々的に売り出したのです。

女優さんを何人も使うことがなぜ異例で難しいかというと、コマーシャルに出てもらうときに、女優さん・俳優さん・タレントさんは並びの問題をすごく気にするからです。誰か1人だけがコマーシャルに出る場合、その人の名前が一番上に来ます。3人も4人使っても、キャリアや格や年齢が全然違うのであれば、並びの扱いはそんなに問題になりません。

けれども、同じような世代をファン層に持っていて、同じような年齢層で、キャリアもあまり変わらないとなれば、仮にポスターにしたとき一番上に誰を書くかとか、左側から順に書くときに、どの順番になるのかということがある。

資生堂の椿は、検索したら過去に出ていた女優さんが出てきますが、20代後半から30代半ばぐらいまでの女性を対象にしていると思われる旬の女優さんが、5人も6人も出てきます。

すると、写真を並べることに関しても各事務所の思惑がかなりあって、まとまらないことが多いのでやりたがらない。お金を積んでも誰々さんよりも低く扱われるこことには納得がいかない、みたいなことです。女優さん本人が納得いかないときもあるし、事務所が今の立ち位置的に「その中の何番手ではちょっと嫌ですね」みたいなことも、当然あったりするわけです。

資生堂の椿は異例中の異例。広告宣伝費や、かけていた陣容も、あれだけドラッグストアで棚を一気に取って、相当な人数でそのプロジェクトを動かし、女優さんもたくさん使ってコマーシャルとかマスマーケティングで露出量をかけました。しかし、その椿は、今ブランドがなくなるくらいの状況です。

タピオカ パンケーキ チーズドッグ

資生堂の椿のような日本の化粧品メーカーが出している商品名をブランドにしたものと、エルメスとかヴィトンとかフェラーリとか「とらや」とかスタバというのは、全く位置付けが違うものです。

大量露出して、売れるときにきちっと売り切っていって、旬が過ぎたら終わらせるという「商品カテゴリーの1つ」という捉え方は、ブランディングというよりは、露出戦略が売上を決めるところがあります。それはスタバとかハイブランドがやっているように、コマーシャルしないでファンをつくっていくのとは、そもそもブランドの在り方が違うのです。

ブランドとブームは全く違うというのはほかの放送で触れましたが、露出で一時的に売れるときに売る「需要の先食い」という表現を俺はするのだけど、ピークを前のほうに持ってきて、早めに一番売れる状態をつくるやり方は「あり」です。でも「需要の先食い」をしてファンづくりをする時間とお金を広告料につぎ込むので、寿命が短くなりますよね。日本の化粧品メーカーが出している化粧品ブランドが2年~5、6年で終わるのは、どちらかというとブームのつくり方に近いとみています。

原宿に行くと7~8年前はパンケーキブームがありました。そのあとチーズドッグがあり、タピオカがあり、カラー綿あめがあって、きのう原宿の竹下通りに行ったんですが、カラー綿あめ店はゼロだった。なくなっちゃっている。これがブームです。テレビで露出して売れるときに売れるだけ売って、数年で投資を回収して終わるのは、ブランドではないのです。

露出が多くても、ファンづくりをやらないとブランドにはなりません。

実質、タレントさんとか女優俳優の卵の方が出ているから素人参加番組かというと微妙だけど、恋愛リアリティーショーに、古くは「あいのり」とか、最近だと「テラスハウス」、あとはABEMAでやっている「オオカミくんには騙されない」という番組がありました。当然、露出番組をやっている間は数千万人がその人の顔と名前を知るのだけど、そういうものに出た方は、番組終了後に人気が続かないケースが多いよね。

これはどちらがいいか悪いかを言いたいのではありません。

自分がビジネスをやるとき、あるいは自分自身を商品として考えてみたときに、短期的な露出量を一気に増やして旬をつくって「この人、今が旬だな」、しばらくたったら「旬が終わったな」と思われるような形で、お客様づくり、ファンづくりをしていくのか。

それとも「あなたじゃなきゃダメ」という人を着々とつくり続けていくのか。

その際に露出を抑える必要はないので、知っていただく工夫をしながらでもブランドになるためにファンづくりをやっていくのか。

それを自覚した上で、ビジネスや自分のブランディングをやったほうがいいです。

以上、久々野智小哲津でした。

音声で聴きたい方はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?