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アメリカとヨーロッパはブランドのつくり方が違う。

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」 コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。

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Voicy No.25  2121年8月28日収録
アメリカとヨーロッパはブランドのつくり方が違う。

ブランドといえば

ブランドと言えば、ナイキ、アップル、マクドナルド、コカ・コーラとか、結構出てきますよね。今言ったのはアメリカブランドです。自分がブランドを学びビジネスをずっとやってきているのはフランスが多いので、ヴィトン、シャネル、エルメス、ディオールはフランスブランドなのです。

今言ったものだけで色合いが違うと感じる方がいると思います。ナイキ、アップル、マクドナルド、コカ・コーラと、ヴィトン、シャネル、エルメス、ディオールは、「ブランドと言えば」という両陣営ですよね。アメリカとフランスのブランドとしてよく聞く名前を両方ともブランドだと認識していますが、実は全く別物です。

ヴィトン、シャネル、エルメス、ディオールと、イタリアのフェラーリもヨーロッパブランドのつくり方でできているブランドとして、日本には両方とも入ってきて、両方とも結構わかる。ビジネスとか生活する上ではアメリカのものも入ってきて、ヨーロッパのものも好きで、さらに日本は東洋ですからアジアのものも入ってきていて、西洋と東洋の交差点みたいな感じは日本の良さかなと思います。

けれども、ナイキ、アップル、マクドナルドとヴィトン、シャネル、エルメスでは、何か色合いが違う。これがアメリカとヨーロッパのブランドのつくり方の違いです。アメリカのブランドは技術とかビジネスシステムをベースに置いて、ビジネスの拡大のためにブランドを活用するというか利用します。

俺の言い方だと、これらはコマーシャルブランドなんです。アメリカの覇権主義の中で、ビジネス拡大をするために名前を知られたほうがたくさん売れるだろうというのが、アメリカブランドの基本的な構えです。技術とかビジネスシステムに基づいて、それを磨いていって勝ちにいく。

フランスのヴィトン、エルメス、ディオール、シャネルとかは、歴史に基づいていて、少数、手作業を大事にして、ブランドとしてのステータスを上げていくやり方です。看板自体を上げていくことがすごく大事で、ポジションをしっかり取り、立ち位置を守り切ることが大事で、量産品でたくさん売れることを「あり方」として重視していません。

アメリカ型のブランドの特徴は、とにかくコマーシャル。知名度じゅうたん爆撃みたいなのが大得意。それに対してフランスのブランドは、テレビCMをばんばん打って数多く売れるという知名度優先型では全然ない。そこが大きな違いだったりします。

日本で一般的にブランドといった場合、「ブランドは知名度があること」となります。それはアメリカ型のコマーシャルブランドというか、マーケティングブランド的なやり方がブランドと認識されているのだと自分は捉えていますが、それを個人とか中小企業がやろうと思ったら、うまくいきません。

露出量を高めるためにコマーシャルを増やそうとしたら資本力が多いところが有利で、資本力の多いところが勝つから、なぜ中小企業や個人事業主が知名度を上げて勝とうとしているのか疑問というか、俺に言わせれば無理ゲーです。でも、なんか知名度を上げたくなっちゃうんだよね。

ヨーロッパブランドのあり方、伝え方、つくり方は、流行を追わない。スタイルの積み上げ。「自分たちはこういうことが重要だと思っています。こういうスタイルとセンスでやっています」というベーシックなところはあまり変えず、過去からのアーカイブ、歴史に基づいた形で、自分たちのスタイルをしっかり持ってやっていきます。

そうすると、時間をかけていけばいくほど、「このブランドはこういうスタイルだ」とわかってくるから、それが好きなファンは離れず、ずっと付いてくるのです。

アメリカの今のナイキ、アップル、マクドナルドとかは短距離走の考え方で、コマーシャル量で一気に売り切りたい。ヨーロッパブランドは一気に売り切るよりも、きちっと積み上げていって、長く売れていくことを志向する考え方の違いはあると思っています。

さらには、アメリカのブランドは旬のスターをよく活用するんです。ナイキがまだ世界トップのスポーツブランドと認識されてなかったときにマイケル・ジョーダンと契約をして、旬のスターを持ってくることで認知度を上げていました。コマーシャル的には、とてもうまい。

ナイキはその後どんどん新しいスターを青田買いして、未来を見せるやり方を取ることが多かったんですが、フランスとかヨーロッパのブランドは、過去から見せていくという流れが結構多い。

なぜこんなに考え方に違いがあるかというと、アメリカには歴史コンプレックスがあるから。アメリカが世界の覇権を取る前に大英帝国というイギリスの時代があって、ヨーロッパから出てアメリカができていくから、アメリカは建国してからの長さからいえば、深い歴史に基づいたものが少ないのです。

だからヨーロッパのブランドと同じような戦い方ができないので、ビジネスシステムとコマーシャルによる知名度で、世界中にそれを売りさばく形で、ブランドというかビジネスを展開せざるを得ません。

ただヨーロッパは、アートにしても洋服にしてももともとのルーツがある場所なので、過去の歴史やアーカイブを活用して、アメリカの多くの人に買ってもらうコマーシャル重視作戦に差別化をしているとも言えます。これが互いにルーツ、ヒストリーから来る、ブランドやビジネス観の違いがあるのかなと自分は捉えていたりもするのです。

では、日本がどっちを向いていて、今どっちをやっているのか。

アメリカはコマーシャル重視で、ブランドがつくり上げるには露出だというところは、ビジネスをやる上ですごく大事です。1960年~1970年代の日本が経済成長していて、とにかくつくれば売れる時代では、コマーシャル量とか量産体制を整えるとか、数を売る前提でビジネスを組めばよかった。

けれども日本は人口が増えないから、とにかく数を売ったところで、一番必ず売れるところでさえ頭打ちになってしまいます。アメリカ型の「コマーシャルをして、ただたくさん買ってもらおう」だけでは難しいのではないか。

アメリカはコマーシャル重視

日本においてビジネスや生活様式に大きな影響があったのは、1945年に太平洋戦争に負けたときです。アメリカがいったん占領した状態で、さまざまな経済システム、生活スタイルをアメリカ型に合わせていって戦後アメリカ型になったわけだけど、本来、実は日本はヨーロッパ型です。

お茶の世界や着物世界には、付加価値に対してお金を払う考え方があります。日本人は商品に対して、「いくらでつくったから、いくらの金額ですよね」という原価から売値を決めていました。

それだけではなくて、「代々続く窯元で、このお茶わんは焼いたんですよ」みたいなことにも「もともと土じゃん。原価いくらだよ」ではなく、技術とか、その道を究めようとしている姿勢が載っているものに対して、昔は価値を認めていたのです。

今もありますが昔はそういう傾向が強くて、途中からアメリカの考え方や高度経済成長もあって、「たくさんつくればいい。コマーシャルでたくさん買ってもらおう」となったので、いったんそっちが強くなっています。

けれども、そもそも日本はヨーロッパブランドのつくり方ができる素養があるというか源流があるし、それを理解して消費者が価値を認めることもできるのです。

フランスのワインが産地で金額が決まるように、日本もお茶とか大間のマグロとか、産地や、どうつくっているか結構気にするでしょう。それによって金額が違うことにも納得するし価値を認めるところがあって、戦後アメリカ型のビジネスシステムとか文化様式が本当に一般的になりました。

今でこそ自分はこんな感じで話せるようになったけど、アメリカの文化がすごく子どもの頃からかっこよく見えたし、それは戦後の占領政策の中でやってきたことが影響していると思います。

それが自分の場合は、たまたまビジネスをやって広げていくためにフランスのブランドオーナー家と話をする中で、あれ? 今までの日本的なビジネスのやり方と違うぞと、日本的なビジネスのやり方=アメリカ型ビジネスの影響が大きかったことに気付きます。ヨーロッパブランドのつくり方をきちっとやっていけば、いいファンの方やお客さまに買ってもらえる、いいブランドができると思っています。

この話は誤解のないように、最近補足するようにしています。

俺は会社を経営しているから売上拡大は目指しています。当然、拡大したほうがいいと思っているので、ヨーロッパ的ブランドのつくり方を学んだからといって、のんびりと100年後に花が咲くようなブランドづくりはする気はありません。ちゃんとやれば売上が上がるように転換していくのは、そんなに時間がかからないのです。

けれどもブランドというものを考えたときに、ただ露出量を増やして、露出量だけで買ってもらって、認知だけで買ってもらって、ファンができなくて露出量が減ってきたら、そのまま買ってくれる人が減るみたいなビジネスをやっても短命で終わります。

だからこそ、ちゃんと露出量を増やしたりアピールしたり告知したりバズったりして、売れている間にブランドづくりをしましょうということ。短期的施策と長期的施策両方をいっぺんにやろうという考えです。決してアメリカ型のビジネスが良くないというわけでもなく、集客とかマーケティングが全然重要じゃないとは思ってないです。

俺は1つめの会社を大きくして数十億にし、いろいろ合わせてどんどん会社が大きくなったときに、一番重視していたのが集客策とかマーケティング策でした。ヨーロッパのブランドのつくり方と、アメリカのコマーシャルをうまく使った方法の両面を理解した上で、ビジネスをやっていきましょう。

以上、久々野智小哲津でした。


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