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ブランディングと言語化の限界について

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicy No.0040 2021年9月17日収録
ブランディングと言語化の限界について


長く付き合えば、信念が伝わる

ブランディングというのは「在り方」です。「見せ方」じゃない。この「在り方」って何ですかという質問をコテツゼミ(勉強会)でも頂いたので、もう一度お伝えします。

ブランディングは在り方です。結局のところ、言葉にできる程度の魅力で人が引きつけられ続けることはないと強く思っています。企業のブランドもそうだし、個人のセルフブランディングというかヒューマンブランディングに関しても、魅力の表現として言語化というのは限界があります。

俺自身の話をすると、俺は26で会社を始めました。学がないバカなので、経営学を勉強してビジネススクールに行き始めたら、言葉をうまく武器にしてディベートをしたり、ケーススタディーといって、MBAのようなビジネスの勉強会では企業のケースを読み込んで、それに対して改善策とか戦略を策定するという授業がある。そのときもやっぱり言葉を駆使するわけ。論理と数字の裏付けを使って、コテツ青年は経営の領域を高め合ったりする学びをしたのです。

そうすると俺はバカなので、すごく影響されて、論理が重要だなとか、言葉が重要だなとか、言語化だ!みたいなことになって、いったんそっちにすごく傾倒して、30代をそっちに向けてみたときがあるんですよ。今思えば、あまり自分の脳がそっちのほうに性能が良くないのに、よせばいいのに論理的にしゃべろうとしたわけ。

30代で1つめの会社が伸びた時期だったので、すごくビジネスでいい思いをしたんだけど、社員が100人を超えて150名になっていく中で、朝礼でしゃべったり言葉で経営方針を伝えたりします。お客様に対しても、ネットのマーケティングを掛けていると言葉が重要なわけです。こっちの言葉のチョイスより、こっちの言葉のチョイスをするとコンバージョン率と購入率が上がるとか、ABテスト的なこともやってもこういう言葉の声掛けをしようとか、社員や幹部の方にお話する仕方を学んで工夫したりしました。

けれども、社内にいる近い方々に対しても、お客様とかファンビジネスをやるにしても、ファンの方に対しても、結局のところ言葉以外でも伝わるものの影響がものすごく大きいと気付かされていくのです。

これは得意不得意とか脳みその性質によってくる。俺の場合は、途中から自分がそんなに頭が良くないと気付いて、論理的にとか言語化だとか言ったところで、俺のその能力がものすごくたけているわけではないとなってきた。だからトータル的に伝えていこうと思ったわけ。

イタリア・フランスから高級チョコレートを輸入するという事業を始めてみると、ブランディングというのはマーケティングと違うところがありました。マーケティングは広くあまねく知っていただき、見込み客の方に購入前提で行動してもらうこと。お店に足を運んでもらうとか、サイトに足を運んでもらうのはコテツ的なマーケティングの捉え方だけど、マーケティングの話をすると長くなるので、ブランディングに戻します。

ブランドを学び始めてびっくりしたことがある。日本は太平洋戦争に負けて、戦後アメリカのビジネスのやり方が入ってきた。アメリカの支配下にあったときがあるので、アメリカのビジネスのやり方がすごく浸透していたんだ。

コマーシャル、ワーディング、コピーライティングという言葉とビジュアライズをうまく使って、1960~1970年の日本が経済的に大量生産期で伸びたときの成功体験があるので、ブランドづくり、ブランディングよりは、マーケティングで売れる発想も強いし、言葉にして伝えていくというのもマーケティングですごくしっかりやっていたのです。

それがヨーロッパのブランド、特に高級チョコレートみたいに、味の差を言葉で説明できないものに自分が最初に触れてビジネスをやってみて、すごく苦戦したんだよね。最初は全然売れなくて。

高級チョコレートは各地域で伊勢丹のようなデパートがあったら、バレンタイン時期にバレンタイン催事をやるのです。そうすると、バレンタインの催事会場には少ないところでも50ぐらい、多いところだと500ぐらいチョコレートブランドが集結して売るのだけど、500ブランドのチョコレートの味の違いを言語化して伝える必要がある。

これって無理なんです。カカオの味は、ビールの味の違いとか、タバコの味の違いみたいなもので、もう感覚値なんだよね。そうなったときに、言語化で勝負することが無力とまでは言わないけど、いかに難しいかと感じたのです。

人に関しても商売のブランドに関しても全く一致しているところだけど、人の感性、五感はやっぱりすごい。もともと動物は生き延びるために本能から五感が発達している。嗅覚、相手の雰囲気、相手が汗をかいているのか、体温が高いのか、言葉にできないけど感じているんです。

そうなると、人対人でも絶対そうだしブランドでもそうだけど、長く付き合っていけばいくほど言葉だけでなく行動。行動だけでなく、何がそう突き動かしているのかという信念を感じることになるんです。

これを受け止めている自分、あるいはお客様、ファンの方が言語化して、何か数値化して、この人の信念は1200点とか、ドラゴンボールのスカウターみたいに見ているわけではないけれど、このブランドは本気でそれを言っているなとか、今の時代ははやりだから取って付けたようにSDGsを持ち出しているなって感じますよね。

人対人だって、そうじゃないですか。長く付き合えば付き合うほど、言葉だけではない、その人の信念みたいなこととか在り方とか、大事にしているものは何かとか、感じるじゃない?

ブランディングには、やはりそれがすごく重要だと思っているのです。人の場合も企業がやっているブランドの場合もね。


マーケティングテクニックだけでは

ハイブランドとか、日本だと「とらや」とか、続いている強力なブランドというのは信念が貫かれています。コマーシャル的よりアルチザン的。職人的というか、思想とやってきたことや技術や流儀を大事にするところがあるのも、そうですよね。

環境に対する姿勢とか、お客様やファンの方に対する考え方は、言葉でどう表現しても、それを超えて伝わってくるものがあるというのが、自分がブランディングをやっているときに、とても強く感じるところです。

どなたの何のケースというと角が立つので言わないけど、ネット上における謝罪のことも、何か問題を起こした人が謝罪を出したりするときも、言葉のチョイスとかはもちろんあると思う。

こういう謝罪をしようということで、ある程度定石があると思うけれど、結局その謝罪も普段から相手の情報を少しずつでも目にしているから、この人が本気でこの言葉を書いたのか。それとも誰かに書けと言われて書いたのかというのは、なんとなく感じるところが多いじゃないですか。

ブランディングで取って付けたような言葉遊びのようなものがすごく嫌いで、自分がブランドコンセプトをまとめるに当たって、かなり時間をかけるのです。通常の企業さんのクライアントだと3カ月とか半年とか、いろいろコミュニケーションを取りながらじゃないと、ブランドコンセプトとか在り方はキャッチアップできないなと正直思っている。

耳障りの言い言葉でフレーズを置こうと思ったら、おそらく1週間でできます。よくありがちなのをやろうと思えば。ただ、それって在り方に根ざしていないんですよね。

なので、ブランディングと言ったときに、耳障りのいい、かっこいい言葉遊びでフレーズを置くことだとか、急にビジュアライズしたものを今っぽくすることはやればできるけれど、結局、言葉とかビジュアライズ化しきれない、そのブランドの持っている在り方とか姿勢とか哲学が伝わっていってしまう。そこに乗ったものを出さないと、途中から違和感があってうまくいかないよね。お客様とかファンの方は、そういうことを感じるので。

そう思うに至ったのは、俺がマーケティングテクニックをさんざん学んだから。商売を拡大して大量に売るためにマーケティングテクニックを使ってきたからこそ、その限界も知ることになりました。

もちろん今もさまざまなクライアントさんのときに活用するけれど、自分は1つめの会社を大きくするときに、5億から30億ぐらいまで一気に上がるに当たっては、途中経過でそのあとは鈍化するのだけど、かなりネット広告を活用しました。

毎月数億円かけて広告を掛けていたので、そこで言葉を変えたら反応が上がるとかさんざんやってみて、最後はそれだけやっていてもしょうがないなと思ったら、ヨーロッパのブランドオーナー家と接点があったので、ブランドづくりをしなきゃダメだなと自分の足りないところとして感じたので、俺自身が一番強く感じています。

ブランドも、そもそも人がつくり出したもの。個人をブランドにしようと思ったら、その人自身がブランドじゃないですか。いいブランドは、ブランドオーナーや創業者の思想を大事にして脈々と生きているのです。その伊吹がプロダクトに乗ったりマーケティングの中の表現とか全体のトーンにつながっていったりします。

スティーブ・ジョブズが、シンプルで美しいiPhoneをつくりました。初代のiPhoneは裏が鏡面仕上げになっているものは、日本の中小企業のすごく特殊な磨き方をするところに依頼したとか、まあ無駄ですよ。ただ商品をつくるとなれば。原価を考えれば。

あとはイヤフォンコードを白にしたのも、美しいiPhoneでシルバーと白でいくには、コードは白がよかったのでしょう。

そこに思想を感じますよね。だってコードって黒にして目立たなくするか、色を選べたほうがいいもの。日本の企業なら絶対に色を選べるようにします。みんなで合議制で決めているので、「1色よりは5色のようが売れますよ」とアンケートを採ったら当然「色を選ばせてくれ」となる。それをスティーブ・ジョブズは彼の思想で、あの色味にしたんだよね。その美意識。

言語化といっても一部しか表現しきれない。「わかったよ。じゃあ、どうしたらいいの?」となりますよね。

個人のブランディングに関しては、究極的には「生き様で見せるしかない」と思っています。

以上、久々野智小哲津でした。

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