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ブランディングとマーケティング、集客の違いがわかれば、うまくいく話。

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」

「コテツのブランディングと商売の話」コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。
このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で
語った内容を文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
Voicyもお聞きください。

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Voicy No.0004 2021年7月29日収録
「ブランディングとマーケティング、集客の違いについて」


1、集客さえうまくいけば、ビジネスはうまくいくという幻想

 ブランディングとマーケティングと集客の違いは、とても大事です。

ビジネスの作戦を立てる上で、この3つがごちゃごちゃになっていると、うまくいきません。この違いをなぜきちっと理解したほうがいいかという前に、俺がなぜブランドにたどり着いたかというのを話します。ビジネスをやる上での必然で、わかりやすくなるかと思うので。

 俺は26歳で会社を起業して社長になるんですが、その前にもちろんサラリーマンの期間がありました。そのときは営業会社で、業務として営業をやっていたんです。飛び込みテレアポの、ほんとに体育会系の営業会社で、初めて入った会社だったので、世の中の仕事というものの世界観は勝手にそれが全てだと思い込んでしまったのです。

 俺はピュアで、熱心に仕事をやろうと思っていたし、その会社でも「営業ができれば仕事で困らない」と言っていました。それは事実でもあるし、そのとおりだとも思う。目の前の人を説得し、納得して買っていただくことはとても大事だと思っていたというのが、自分のビジネス理解の第一段階です。なので、まずセールスの重要性を感じ、セールススキルを得ました。

 でも、飛び込みテレアポし営業力を磨き続けていて、途中で思うんです。真面目に営業をやって数字を積み上げていったとしても、一人で売るには限界がある。もっといい売り方があるのではないか。そこでマーケティングに気付きます。

 当時、自分が起業したときは2000年前後。アメリカからダイレクト・レスポンス・マーケティングといって、日本では神田昌典さんの感情マーケティングというのが、ちょうど入り始めたころでした。

 そのときはネットがまだビジネスで使えるツールにまで至ってなかったので、ファクスDMとか郵送DMを打って、感情をあおり立てて、見込み客に行動を起こしていただいて、営業の見込み数を一気に増やしていました。それはマーケティングの中でも、今思えばただの一分野に過ぎないんだけど、そのときはすごくはやったし、俺もダイレクト・レスポンス・マーケティングがわかればビジネスは相当やりやすいと思ったのです。常に見込み客の引き付けができるマーケティングさえできれば、ビジネスの成長は簡単だぐらいに感じてました。

なので、興味のある方に自ら一歩前に出ていただくというマーケティングを、自分はそこで学びました。
 それは集客策ですよね。ものを売るにあたって説明会をやるか、お店にお越しいただくのかで、集客策(集客のためのマーケティング)をすることを学びました。自分は会社を大きくしていくにあたって、それを一所懸命やってうまくいきまして、会社は数年で10億を超え20億に。自分は1社目の会社が非常に速やかに成長するという、うれしい経験をするのです。


2、マーケティングは、永遠ではない。効果は下がってくる現実。

 会社がダイレクトレルポンスマーケティングで、ぐんぐん成長します。「勝ちパターンを得た!」と調子にのりました。いくら広告かければ売り上げがどのくらい戻ってくるかが計算できるのです。まったく本線から外れますが、ベンチャー経営者って、マーケティングがあたって急成長すると調子にのるのです。自己万能感が肥大化して何もかもがうまくいくと勘違いする時期があります。俺もそんな感じだったような気がします。恥ずかしい。

 広告費をめちゃくちゃかけて、見込み客を集め売り上げを上げるというのを毎月やり続けます。計算がたつので。ちょうどgoogleがリスティング検索エンジン連動型広告もスタートしたときだったので、自分の場合は年間で十数億円をこの広告をかけて、見込み客から問合せ電話をかけていただくというビジネスを展開していました。

 ただ、ビジネスをやっている方は大体そうだと思うんだけど、とにかく「集客さえうまくいけば」と言うんです。これはほんとにその通りという側面はありますが、俺は途中で不安になってしまいます。集客の広告って、だんだん反応が下がるものです。なぜかというと競合がまねしてくるし、消費者がそういう広告に慣れてくるから。


 今の俺は、全然いいと思わないけど、その時よくやっていたのが、今も他のマーケティングでよく見るのが感情に訴えるような「あおり型の広告」です。ユーザーの不安感やコンプレックス解消できるような感情を「煽る広告」はその広告が出たときの反応がピークです。かければかけるほど広告の反応率やコンバージョンは下がってくるわけ。これはドーピングみたいなものだよね。それをやっている間は集客が効いて、わーっとお客さんがいっぱい来るんだけど、インパクト重視で広告をつくっているから見慣れれば反応はどんどん落ちるし、広告は掲載を止めたとたんに新規が入ってこないから売上の土台が危なくなる。

3、世の中の優良企業は、広告をかけまくっているのか?そんなことないよな。

 自分は会社を経営して急成長し、数十億まで一気に行く中で、とにかく集客策がバカ当たりしたし、集客策をバカ当たりさせることが、ビジネスで大事だと思っていたわけ。
 だた、ふとしたときに経費の広告費の比率が上がり続けるし、競合も同じような広告かけてきて終わりなき競争だなと。世の中のビジネスを改めて勉強すると、別な視点が生まれてくるじゃないですか。そこで目に付いたのがブランドです。バカみたいに広告費をかけて集客に血眼にならなくても、売れ続けているものがある。ルイヴィトンとか虎やとかスタバとかだ。スタバも広告費はかけてないし、これは何なんだ? これはブランドなのか、となるわけです。

 世の中には広告かけまくらないと売れない商品と、愛されてブランドになって自然に売れ続けているブランドというものがある。その違いは大きいなと気づくわけです。広告だとか話題になれとかバズれとかそういうのと無縁のブランドいうのがある。これはなんだと。 

 そのときはやり方がわからないから、ブランドっていうのは何なのかなと思っている中で、自分は幾つか会社と事業をやっていたので、新規事業をやる中でブランドに関するビジネスをやりたくなり、フランスとイタリアで、日本にまだ入ってきてない独占契約ができるチョコレートブランドを見つけてこようとします。高級チョコレートブランドを日本で独占販売し、アジアの独占販売権をもって展開したいというところで、ブランドに触れてみようとしたのです。
 マーケットの状況としても、自分はセールス・マーケティング・集客を学び、ブランドをビジネスを通して身につけたいという自分の次のステップとして。

 15年ぐらい前かな、サロン・デュ・ショコラとかも含めて、バレンタイン商戦における高級チョコレート市場がすごく伸びてきたというのがあった。自分がやる新規ビジネスで決めていることがあって、値下げ競争に巻き込まれることはやらない。相見積もりとか、どんどん価格が安くなるとか、そういうビジネスはやりたくないんです。これはまた別なときに話すので、ここはするっと進みます。

 高級チョコレートをデパ地下とかで値下げして買っている人は見たことがない。それで高級チョコレートの日本での独占販売をしたいと思って、フランスとイタリアで日本に入ってきてないチョコレートブランドを調べたら、かなりあったのです。


4、マーケティングができても、ブランドは全く創れないという現実


 フランスに飛んで交渉を始めなんとか扱わせてもらえるようになって、チョコレートを扱い始めますが、これがマーケティングの知識とか集客の知識で全然売れません。

フランス行くたびに、チョコレートのブランドオーナー家に「コテツ、なんで売れないの? どうやってるの?」と言われます。自分は自信がありました。なんたってマーケティングで急成長ベンチャーを経営していて業績はいいですから。その時点で、会社としてはきっちり累積で年商数百億円ぐらいは売ってきている経営者としてマーケッターとしてビジネスの経験があったので、「こんなふうにやっている」というマーケティングと集客の話を調子に乗って説明すると、「駄目だね。それはもうブランドにならないね」みたいなことで、「なんで???」と。

 実際は、マーケティングをどんなにやってもブランドにならないんです。実際には。
今はなぜかわかるけど、その時はネット広告とテレビに出たりしてブランドになれると思い込んでいる。他の事業でうまくいってるから。でもまったく違うんですね。悔しいけど。

 そうしたら、そのブランドオーナー家の当主が、「学びに来なさい。こっちに来るたびに紹介してあげるよ、ヨーロッパのブランドを」と。フランスは、チョコレートに限らず一族で永くファミリービジネスでやっているヨーロッパのブランドが多いし、俺も売れてないという事実がある。ビジネスでその高級チョコレートを自信満々に売ってすでにデパ地下とか路面店とかが始まっていたのに売れない事実で、さすがにこれはまずいと、ブランドを学ぶことになるわけです。

 ここまでは前置きで、このあとのチャプターで、ブランディングとマーケティング、集客の違いを具体的に説明しようと思います。


5、ブランドになれば、ビジネスは年々、楽になっていく。

 ヨーロッパのブランドオーナー家と組んでブランドビジネスやってみたら、他の事業が急成長して意気揚々だったコテツ青年が、はりきって日本で展開した高級チョコレートではっきりと苦戦をします。「ブランドをわかってないな」と言われ学ぶのですが、今になってみて、この違いがわかります。

 これは自分が体験したうまくいかなかった経験ですが、私がアドバイスに行く企業、あるいはコテツゼミという勉強会やグループコンサルで接する人のほとんどが、集客とブランディングの違いをわからないから、つくり方がわからないものを必死につくる感じになっている。その時の自分を見るようで心苦しい。集客やSNSがんばるのと、ブランディングはまったく別なのです。

 集客さえうまくいけばうまくいくと思っていた俺は、そこで反省をするわけです。
 
 ブランドになると、年々ビジネスは楽になっていくものです。歴史を積み重ね、ファンの人が積み上がっていくから「あなたじゃなきゃ駄目」という方が増えていく。ファンを増やす速度はあるにしても、相対比較を越えて、信頼関係がある「あなたじゃなきゃ駄目」というファンの方が積み上がっていけば、年々楽になるんです。ほんとはね。

 けれども、ただ新規の集客だけで勝負すると、お客さまのリピートがなく、お客さまが愛想を尽かしていった場合、ザルみたいに新規を取り続けるしかないわけです。ファンになって離れていかない。それはサブスクみたいに仕組みでロックするのではなく、愛着をもって生涯に渡り関係したいと思っていただく。そういう方が年々増えれば。それがブランドです。

 経営を20数年してきて、当初の俺がそうだったように、すごく強く感じることを言います。これはショックかもしれないですけど、「集客が重要」と言っている人の何割かは、既存のお客さまが逃げすぎなのです。穴のでかいザルで水をすくっているから、集客し続けなければ成り立たないビジネスの構造になっているんです。だからファンが積み上がっていかない。

 これは今日のテーマではないから別なときに話しますが、『ブランドとしてのファンづくり』を集客やSNSとまったく別にやらなきゃいけないわけ。集客とファンづくりを両面頑張らなきゃいけないんだけど、集客で当たったときのビジネスの伸びたるや、ドーパミンだかアドレナリンだかわからないけど、何か変な物質が脳内で出るぐらいうれしいじゃないですか。ビジネスが伸びたときはお客さんがいっぱい来て、ビジネスの醍醐味みたいなのを感じてしまうので、地道にコツコツやらなければいけないファンづくりのほうをあまりやらずに、集客だけやるようになります。どんどん新しい人に買ってもらいますが、ファンとして居着いていただけないので、集客をやらざるを得ない。ファンづくりをしていないので常に新規を取らないと成り立たないザルビジネス状態。売上好調でも構造的に新規取り続けないとファンがいないので成り立たないビジネス状態の人がいます。そういう人に「とにかく集客大事」と言っている方が必ずいます。

 買っていただいた方の中で全員がファンになることはないけれど、ブランディングとかブランドづくりのやり方がわかれば在り方がきちっと決まる。どういうふうに関わっていきたいか伝わっていけばファンの方が残っていくので、ずっと新規を取り続けなければいけないことになりません。ブランドづくりがちゃんとなれば、フォロワーが増えた減ったという一番薄い関係の増減に一喜一憂しなくてよくなります。

 今日のテーマのブランディングとマーケティングと集客の違いです。例え話をしますとマッチングアプリ。どなたかと恋愛をしたいと思ったときに、マッチングアプリは効率がいいです。すてきな写真を撮り、「グッド」とか「いいね」をもらいやすいようなプロフィルを書き、会ってもらいやすいやりとりの文章を覚える。これはずばりマーケティングです。マッチングアプリを頑張るというのがマーケティング。接点が増えて、それで毎週のように新しい方とカフェや食事に行くことがあれば、うれしいじゃない?

 ただ、たくさんの方と出会えても、ほれ込んでもらうことがなければ、その方と恋愛はスタートできません。ほれ込んでもらって、マッチングアプリでいっぱい「いいね」をもらって、いっぱい出会う機会を増やすというマーケティングや集客活動をやっても、実際にその方自身が会ってみて全く魅力がない。話している内容もつまらない。深みも感じられない。この先何があるかビジョンも見えてこないとなれば、そのあと一向に、どなたもこの方と恋愛しようと思わなくなる。それがブランディングのほうの領域です。

 たくさんの人に興味を持ってもらう。=マーケティング
 これじゃなきゃダメ!と深く愛される。=ブランディング

 マッチングアプリで出会う数を増やす。それはいいでしょう。もちろんやったほうがいい。それと同時に、マッチングアプリで出会う機会があったならば、そのあと心底ほれ込んでもらって、「この人じゃなきゃ駄目だ」と思ってもらえるような自分づくりをするというのが、ブランディングなのです。

 となると、これは見せ方の問題ではありません。もちろん見せ方も大事ですが、その人が大事にしていることとか、その人の考えていること、その人と一緒になって、どういう楽しいことがあるかのほうが大事。それに見せ方が一致していればなおよし、というところです。


6、スタバ、GUCCIの二層戦略


 うまくいっているブランドは、集客策としてのマーケティングと、自分たちの在り方を知っていただいて、ほれ込んでもらうファンづくりのブランディングの二層構造で戦略を立てている。うまくいっているブランドというのは、その二つを並行して結構ちゃんとやっています。ヨーロッパのハイブランドは100年以上続いているところがほとんどで、ファンの方がきちっといます。しかも新規も増えているというのは、その二層構造を取っているから。

 例えばGUCCIでいえば、ここ最近ドラえもんとのコラボをやるというのは、新規の獲得を行う話題づくり戦略です。マーケティング=新しい人への興味づけ集客策ですね。
 話題をつくったあとどうするかというと、GUCCIにはパルチザンといって職人を大事にするという考え方がある。イタリアのある町にずっと職人を住まわせて、100年以上にわたってGUCCIの品質を守るために、職人の技術を守り通しているんです。ブランディング=自分達が大事にしているもの。スタイルや哲学を伝える。愛着を高める策ですね。

 ただ、職人が100年以上作ってますといきなり言われても、真面目な話だからいいブランドだと思われるんじゃないかと日本人は思います。実際はいきなり説教じみた話って聞けないじゃないですか。ヨーロッパのブランドがうまいのは、ドラえもんで集客をして話題をつくって、近寄ってきていただいた新規の方の中で、GUCCIがちゃんとものづくりをやっていることで心を打たれる人が出てくるだろうということで、ブランドの在り方を伝えるは、そのあとにやります。だから、「話題づくり」と「在り方を伝える」との二層戦略になっているのです。

 これはスタバもそうです。スターバックスは、もうコーヒーのブランドじゃない。売上的にはフラペチーノのほうが上回っていると思えるぐらい甘い飲み物のブランドだ。スタバは甘い飲み物のフラペチーノで話題づくりをしてお店にお越しいただいて、そこでこだわっているコーヒーとかを伝えていく作業をやり続けているのです。

 フラペチーノで集客、話題作り=マーケティング
 コーヒーへのこだわり、地道なセミナーで在り方を伝える=ブランディング

 なので、スタバでまあまあの広さの店舗があった場合、カウンターみたいなところでコーヒー飲み比べみたいなセミナーをやっているんです。あれって1円にもならないでしょう? でも、なぜやっているかというと、集客戦略としてのフラペチーノを機能させて、お店に来てもらったら、コーヒーをきちっとお勧めする活動をし続けられる。在り方と話題づくりの二層戦略なのです。

 ブランディングとマーケティングと集客の違いというのは、マッチングアプリでいうように、どうやったら多くの人から「グッド」をもらって、マッチさせて、顔を合わせられるかです。写真の撮り方、プロフィルの書き方、メッセージのやりとりだのというのを磨く側面と、興味を持たせる側面と、実際に一度購入しサービスを受けていただいたお客さまに対して、「在り方を伝えて」「ほれていただく」の両方をやらなければいけない。ほれていただけなかったブランドはどうなるか。ファンが全然できてこないので、永遠に新規集客を頑張らなければいけないことになるということです。
 コロナ禍で、お客さまがさーっと潮が引くようにいなくなったところは、ファンづくりをやってなかったところです。
 もっと具体的に話したいことがあるんですが、それは次の回でお話できればと思います。
 以上、久々野智小哲津でした。

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