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個人のブランディングで苦労話を強調するのはアリか?

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicy No.0043 2021年9月23日収録
個人のブランディングで苦労話を強調するのはアリか?

苦労話は注目されやすい

俺の言っている個人のブランディングには2つあります。

1つは表に出ていくとき、ビジネスをしていく上で人にアピールするときに使う、個人としてのブランディングという意味合い。あとは普通に生活していても「あの人ってああいう人だよね」ということで、在り方が伝わって個人のブランドが確立されていくので、日々の生活の中で、周りの方との関係においてブランドづくりが必要だという2個の観点があります。

ただ、やることの大本は一緒。表だって何かを伝えていくときのブランディングと、一個人としてプライベートも含めて、ほかの方に自分というブランドを認めていただくという大本で話をするので、そう受け止めてもらいたいと思っています。

「個人のブランディングで苦労話を強調する」のは、それだけでピンとくる人もいると思うけれど、ピンとこない人もいると思うのでお話しします。

俺はビジネス歴が長く、経営者としてキャリアを結構積んできているので、プロフィル紹介のはやり廃りを見てきているんです。今も本を出されているし、アマゾンで検索したら出てくるけど、神田昌典さんというマーケッターで経営コンサルタントの方が、1999年に『90日であなたの会社が90日で儲かる!』という本を出しました。そこから日本におけるダイレクト・レスポンス・マーケティングという分野が一般化したのです。

アメリカにあったダイレクト・レスポンス・マーケティングのノウハウを神田昌典さんは英語ができるので日本語化して、ご自身の経験を踏まえた上で本にされました。

彼のプロフィルは「金なし、人脈なし、なんとかなし。何もなくて大変な状態から会社を立ち上げてうまくいった」みたいなものでした。もちろんその方の本を読むと、そこが強調されているんだよね。

でも、それが今も脈々と、いろいろなところを通って、いまだにTwitterとかを見ると、「借金何億。社員が逃げて、自分は精神的にショックを受けて、うつになって、今はビジネスを頑張っています」みたいなプロフィルが、結構見受けられるのです。

これに関しては個人の勝手なので、いいとか悪いとか言うつもりは全くない。でもブランディングで、その方自身がブランドになっていこうと思ったとき、苦労話強調はどうなのかというのをブランドづくりの観点からお話ししたい。

本を出している著者の方でも第1章を丸々苦労話とか、衝撃的なエピソードに当てている人も結構いるんだよね。これも本をつくる上でのテクニックだけど、好き嫌いの問題ではなくて、ブランドづくり、ファンづくりの上でありかなしかというか、どういう影響があって、どうしたらいいか考えてみたいと思います。

自分がブランドであるために最初は興味を持ってもらわないといけないから、センセーショナルなことを言ったほうが注目を浴びられます。たとえば、だまされて数千万持ち逃げされたとか、会社で横領があって倒産寸前だったとか。しかし、こういう「びっくりさせ型」の注目の在り方は、何度も使えないのです。

起業した当初とか個人のブランドとして出て行こうと思うとき、最初にそれを言いたければ言うのは全然いい。けれども、オオカミ少年ではないけれど、ずっと衝撃的なことを言っていれば、だんだん「この人って、いつもこれか」となるわけです。

だから俺は煽り型のマーケティングを全然いいと思いません。自分が関わっているクライアントやビジネスでやらないと決めているのは、そこにあります。

昔からのお店の商売のやり方で「閉店セール商法」というのがあります。昔は新宿東口に出て歌舞伎町に行く途中でも、そういうお店があって、今もあるのかな。ズバリ言うと、閉店するから安くしていますというのを常にやり続けて、お客さんが来るという。でも、それでは、そのとき来たお客さん、そのとき見たお客さん以外の、いつも見ているお客さんは絶、対に買わなくなるよね。

これはスポーツで言うドーピングみたいなものなのです。体をむしばむけど、センセーショナル型マーケティングとかプロフィルアピールというのは効きます。かわいそうだからさ。なので「やることに意味はありますか」と言われれば、売ることに関しては意味があります。ただブランドになるという意味からは一番遠い捉え方だよね。まずそういう観点が1つあります。

マイナスとか衝撃的な事実でまず興味を引くのは、人間関係で言えば「かまってちゃん」と同じ。こういうラジオのような公的な場では言いにくいけど、かまってもらいたいがために自分を傷つけたりするような注目の浴び方というのは、ないとはいえない。子どものときも「おなか痛い」と言うとか、人間な根本的な心理として、あると言えばあるじゃないですか。

ビジネスでそれを使えば人の心は動くけど、それを使うか使わないかは、その人とブランドが、どうありたいかです。

もう一個の狙いというか、センセーショナルなことを言えば注目を浴びるから、それをやっているんだというのは何度もやれない。あとは、それをやるの、やらないのというのを考える必要がある。

もう一個が、結局めちゃくちゃ谷底に落ちて上がってきたというドラマとか、そこから復活したんですという伸びしろの中で何が起こったかというのを見せたいという意図があると思う。

これに効果がないとは言えないけれど、マイナスからゼロになったのは、商売で言うとスタートラインに立っただけ。だから、これもいつまでも使えないのです。ファンやお客様の期待にお応えして、いいベネフィットを出していくためには、ゼロになりましたという事業とか、ゼロ地点まで来ましたという人に、いつまでもお客様は付いていかないですよね。

人生においても、不幸な出来事があって、そこから立ち上がることは、もちろん自分も拍手を送りたいことはいっぱいある。けれども立ち上がったあと時間は流れているので、その方が歩き出すかどうかというのはめっちゃ大事。

さっきの「センセーショナルなことを言って注目を浴びる」という、絶対当たるけどドーピングみたいなやり方と、マイナスがゼロになりましたという物語を、ゼロから5になりました、10になりましたという物語に切り替えていかないと、これまたブランドとしては続かないですよね。

ブランディングは、あくまでもファンの方やお客様との関係構築です。関係構築と思えば、商売のテクニック以上の上位概念で、最後はファンとの関係構築にかかっているのです。なので、こんなふうにやったら人の心がつかめるみたいな考え方をしている人がブランドになることはないけれど、センセーショナルなことを言って、自分の不幸物語でびっくりさせて、そのあとマイナスがゼロになったドラマを言う。もちろん、物事が世に出ていくときとか、きっかけをつくる上ではいいでしょう。


いつまでも昔話してる人

普通の人間関係に置き換えてみると、会うたびに昔話を言っている人と、たびたび会おうという気にならないじゃないですか。久々に会って、お互い会っていなかった間のことを、こんなことがあった、あんなことがあった、いや、俺仕事変えてさとか、いやいや彼女にふられてさとか、え、そうなの?という話は、久々に再会して1回か2回は聞いていられるけど、5回会っても10回会っても昔の話をずっとする人と興味が高まってもっと会いたいかというと、そうじゃない。

ブランドというのはファンの方との関係をつくって、ファンの方に付いてきていただくことがとても大事だし中心的な要素。なので、ブランドというのは未来へのビジョンの共有が必須なのです。

これもよく聞く話で、わかりやすい事例なのでお話しします。

ももいろクローバーZ(ももクロ)が出てきたときに、ももクロに限らずアイドルはこういう流れが多いのですが、「武道館でやりたーい」みたいなことがあります。ももクロが出たてのときに、俺がたまたま見かけたのは相当前だけど、新宿駅東口の外の広場で、営業で無料ライブか何かをやって、お客さんは結構いたかな。でも武道館を埋めるほどのファンは、無料でやっても当然いなかった。

これは結局、未来へのビジョンの共有です。ブランドとファンの将来の期待というか。これがファンの方が熱くなって応援したり、付いてきてくれたりするポイントなのです。応援とか支援ですよね。応援経済というふうに今はなってきていますが、これを考えたときに、いつまでも後ろを向いている人にファンが付いてくることはない、となりますよね。

海外のハイブランドは、ほんとにこのバランスを意図的に取っているんです。たとえばシャネルであれば、ココ・シャネルが女性の解放をうたって、小さなブティックで洋服をつくり始めました。コルセットから解放できたらいいのになみたいな、小さなブティックの苦労話とは言わないけど、でも戦いですよね。

苦労話とは銘打ってないけど、いかにココ・シャネルがさまざまな時代の流れの中で困難に打ち勝ったかという過去のアーカイブから見られるドラマと、あとはシーズンごとに出される新作と、さらに、ああいうハイブランドの服であれば、過去のアーカイブとか出来事を今の旬のデザイナーを入れて再解釈し世の中に送り出して、過去のアーカイブと未来への提案のバランスを常に両面で取っています。

車も、昔からある名前の車をモデルチェンジして出していく。過去の名作といわれていたものも、もちろん性能が変わって技術的進化に合わせていくのもあるけれど、諦めないようにというところです。

なので、今日のテーマである「個人のブランディングで苦労話を強調するのはアリか?」に関しては、スタート当初とかファンの方とか周りの方との関係構築のために、それで引きつけたいという方法をとるのであれば、それは1つのやり方だと思います。

ただ、それをずっとやり続けると、いいブランドにはなかなかなりにくい。さらに、そういうファンとお客様が寄ってくるのです。自分のお客様とかファンを前向きな、いい人でそろえてブランドを前に進めていこうと思っても、ずっとこっちが苦労話とかマイナスの話とか、不況の中で頑張っていると言っていると、ずっとそういう方たちを引きつけ続けることになるので、あとは、それをいいとするかどうかですね。

今日はこのぐらいにしておきます。

以上、久々野智小哲津でした。


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