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ブランドとブームの違い。これがわからないとブランディングできない。

コテツ note 第5回 #コラム #note

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」

「コテツのブランディングと商売の話」コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。
このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で
語った内容を文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
Voicyもお聞きください。

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【お知らせ】

2022年4月より、小哲津のブランディングと商売の勉強会のコテツゼミの
六期生がスタートします。
コテツが直接講師となり、半年間でご自身やビジネスのリブランディングを
学ぶ講座です。10人限定となる予定です。
3月から募集開始。こちらのnoteかVoicyで告知します。

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Voicy No.0005 2021年7月30日収録
「ブランドとブームの違い。これがわからないとブランディングできない。」


1、バズった先に、ブランディングがあって、ブランドになるは大間違いだ。

 今日のテーマはブランドとブームの違いです。
 今ビジネスをやっていると、スマホでネットの使い勝手が非常によくなってきているから、ビジネスでSNSとかを活用してバズらせてビジネスを広げていくやり方はベーシックですよね。使わない手はないと思っているんだけど、それをバズらせて、SNSとかネットとかスマホで一気に知ってもらうことができれば、先に自然と必ずブランディングができて、ブランドが付いてくるかというと、それは全く別なものだという理解が絶対に必要です。

 バズった先に、ブランディングがあって、ブランドになる。
これ間違ってます。
これが大火傷の原因です。


2、今あなたはブームづくりをしているの?ブランドづくりをしているの?

 ビジネスをやっている人が、今はブランドづくりをやっているのか?、ブームづくりをやっているのか?自覚がありますか??

それはブランディング=ブランドづくりと、ブームづくりは戦略が全く違うから認識をしたほうがいいということなのです。この放送を聞いてもらえれば解ります。

 ブームづくりがよくなくて、ブランドづくりが素晴らしいとか言うつもりはありません。というのは、俺が自分でスイーツブランドとかチョコレートブランドを日本で展開するときに、テレビ・雑誌・ネットで1~2年の間にすごく露出してブームをつくってみたことがある。あるブームを作ろうと思ったブランドは、2年間でTVで30回、雑誌ネットで60回ほど取材を受けました。行列ができますよ、そういうふうに仕掛ければ。そういう一気に売ってみるやり方は自分も経験済みだし、今自分はブームを作ってるんだと意図してやるんだったらそれでいい。

 けれども、なぜ今日、この話を説明しておきたいかというと、ブランドをつくろうと思っているのに、ブームづくりのやり方をやってもうまくいかないし、ブランドづくりのやり方でブームをつくろうと思ってもうまくいかないから。アクセルとブレーキを両方いっぺんに踏んでいるみたいになるんです。違いがわからないと。


3、ブームとブランドってそもそも何なのか?

 ブランドというのは「あなたじゃなきゃ駄目」というファンとの信頼関係をつくること。ブームというのは、多くの方に知っていただいて、短期的な需要をぐっと一気に押し上げること。その先、そのブームが続くか続かないかというか、ブームと言っている時点で、需要の押し上げが終わったあとは下がってくることを見越してやるというのがブームだよね。
ブームは需要を一気に押し上げるので短期で終わるのです。

 ブームとブランドのつくり方の一番大きな違いは、ブランドづくりは手前からやるところ。ビジネスオーナーの近いところからやるのがブランドづくり。熱のある人が波紋が広がるように近い人から広がっていく。近いところが熱々になって、それが内側から外側に広がっていく。地球も中心はマグマみたいに熱々でしょ。地表は冷えてるけど。コアが極熱。だから冷めないんです。

 ブームづくりは遠くからやる。多くの人に一気に網掛けをして、少しずつでも欲しいと思う気持ちの分母を多くの人に持ってもらうというのが、ブームが起こる要因です。誰も熱々までいかないけど、みんなちょい熱にはなる。数は多いけど極熱でもなくコアがないので冷える時は全部一気に冷える。

ブランドというのは、人数が多いか少ないかというのは別として、「あなたじゃなきゃ駄目」というブランドに付いてきていただくファンの方がいらっしゃることなので、これは順序が違うんです。


4、タピオカやチーズドック、パンケーキ、カラー綿飴は、ブランドか??

 タピオカとかチーズドックとかカラー綿あめとか、あるじゃないですか。ブームと言ったらわかるようなものとしては、その辺が思い浮かべやすいと思う。俺は原宿のほうにオフィスがある関係で、原宿で一気にブームになっているものというのは見る機会が結構多かったんです。
 コロナになる2年以上前までは結構はやって、1~2年でブームが去ってみたいな。それはもっと5年、6年さかのぼればパンケーキブームというのもあって、一時期は数百店舗あったけど、2年ぐらいでブームが去ったら原宿エリアに4~5店しかないということもありました。

 ブームというのは、とにかく知ってもらって、興味を持ってもらって、一度購入してもらえさえすれば、いいというやり方。深く知ってもらうとか愛着とかじゃなく、とにかく一気にたくさんの人に、ただの興味を持って一回買ってもらう。2度と買うわけじゃないので1、2年で一回買う人が一巡する。そもそも5年~10年にわたって愛し続けていただくビジネスのやり方では決してありません。そういう割り切りがあればブームづくりに集中できるから、それはそれで、1つのビジネスのやり方です。


5、ブランドは、深く知って愛着を持って繰り返し繰り返し買っていただくもの。

 ブランドになった場合、事例はこのあといろいろ説明しようと思うけど、繰り返し離れずに、スイッチされずに、ファンになって買っていただくかたちをつくるのがブランドづくりなので、ブームとは全くつくり方が違うのです。

 タピオカとかカラー綿あめとかの場合は、まずその商品自体に対する表面的興味がすごくある。カラー綿あめを一度買ってみて、味が気になる人っていないじゃないですか。カラー綿あめという綿菓子に赤とかピンクとか青とか紫とかに色を付けて、帽子みたいな、富士山みたいな形にしたりするのが、ちょっとはやっていたのね。そうすると、それを写真に撮って、インスタに上げたいじゃないですか。

 そういう方が原宿に来てカラー綿あめを買うんだけど、おそらく竹下通りの中にあるお店が、最初にカラー綿あめをやって、そのあとカラー綿あめがめっちゃ面白がられているのを見て、近隣に店舗が増えていったイメージです。カラー綿あめの味の深さや素材に文句付ける人は多分非常に少ないだろうし、原宿の竹下通りのど真ん中で始まったカラー綿あめの1店舗目が、最初はそこでしか買えないから集中したけど、それ以外の近隣で買えるところも増えてきたら、原宿の元祖のお店じゃなくても写真さえ撮れればで他の店でもカラー綿あめを買う。あなたじゃなきゃダメ!状態ではないですよね、ブランドとしての。そのときにはもう、ここのブランドのカラー綿あめじゃないと自分は駄目だっていう人は、少ないですよね。

 チーズドックとかもそうだけど、ホットドックのチーズが入っているやつを伸ばして、チーズがレインボーになっているので写真が撮れるのであれば、どこのお店で買ってもいいかなと思う方が大部分だと思います。レインボーチーズドックの写真は撮りたいけど、買うお店はどこでもいい。これはブームです。


 これってブランドの、例えばヴィトンが好きとか、無印良品が好きとか、ナイキのスニーカーが好きな人のように、「それ、どこのものでも一緒でしょ」と言われても、そのスタイルが好きで、その思想にほれ込んでいて、もともとそのブランドがずっと大事にしてきているイメージに憧れがある人からすると、「ほかのなんて、もっての外」みたいなところがある。ヴィトンが好きな人は、鞄ならどこでもいいでしょじゃなく、ヴィトンじゃなきゃダメ!という愛着がありますよね。


6、表面的な一時的な興味は続かない。あなたの商売はブームでいいのか?

 なので、ブームでは、あくまでも表面的に興味のフックが掛かれば、一度購入するなり体験していただくことだけを目的にすれば、そこのバズるとかインパクトあるとかの部分だけ頑張ることがすごく大事になってくる。

 コテツ的ブランド論の重要なポイントとして置いている「ブランドの在り方」とか「スタイル」とか「思考・思想による差別化」はやらなくていいから、ブームはブームで、ちょっと興味を持ってもらう。多くの人に1~2%ぐらいの興味を持ってもらうところに集中するというやり方でやれば、やりやすいですよね。

 ブランドの場合は逆で、1人でも2人でも、まず100%120%の愛情と愛着を持ってもらうようにやっていくもので、それが少しずつ増えていくというかたちがブランドづくりになってくるから、全く順序が逆。

 バズらせることによって、一回買ってもらうことはとても大事だけど、露出を増やしたりバズったりして一回買ってもらったときに、もしブランドにしていきたいのであれば、そのブランドの在り方、ほかと全く違う思想とかスタイルとかセンスとかを、きちっと興味を持ってもらって足を運んでもらった人に、エデュケーション(顧客教育)とかメッセージ性をもって伝えていかないと、ブームの先にブランドになっていく流れはつくれないんです。
ただ一時的な需要増に対して売り捌いて終わり。ファンづくりをしないのであれば、どんな盛り上がったブームでも、ブランドには転換できません。

 ブームは遠くの人から、少しでも興味を持ってもらうやり方、ブランドは近くの人から熱くしていくという方法だというので、やり方の違いです。
 このあとブランドのつくり方というところで、事例を挙げながら、ブームとブランドのつくり方の違いを、もうちょっと掘り下げていきたいと思っています。

7、ブランドは熱狂的支援者が思想とスタイルを語り、それが伝わっていく。

 ブームというのの例で、さっきタピオカとかチーズドックとかカラー綿あめとかのお話をしました。これがわかりやすいところの例なんだけど、決して食べ物に限っているわけではありません。アパレルもあるし、身につけるものもあるし、雑貨的なものもそうなんだけど、ブームで一気に売れて、数年でそのビジネスを終了するようなやり方を取っているものというので想像してもらえればと思っています。

 では、ブランドはどういうつくり方をしていくかだけど、最近、非常にうまくできているな、すごいブランドになったなと思うのに、Aesop(イソップ)というスキンケアブランドがあります。グローバル・スキンケア・ブランドね。ここがほんとに、この5年ぐらい、自分がよく見ている都内に関しては、地道にブランドづくりを繰り返していった結果、ブランドとしてブレイクしています。

 SNS頑張っているわけでもない、広告ガンガン打つわけでもない、着実にブランドの思想による差別化を浸透させていってブレイクしているのです。

 平日でも並んでいるんです。行列をつくるのが別に目的じゃないにしても、イソップというブランドが大事にしていることも含めて、ファンがきっちり付いているという状況ができているから、非常にすごいブランドのつくり方をしたなと思います。ブランドのつくり方でポイントになるのは、一番近くの人から熱くなっていくことです。内側から、内側からっていう。
 イソップの解説を飛ばして、つくり方の話に行っちゃうんだけど、地球上最強のブランドはキリスト教です。宗教とブランドはすごく類似性があって、キリスト教はイエス・キリスト様の教えを宣教師が世界に広げていったわけです。最初、熱狂的支援者をつくるというのが第一歩で、そのブランドの考え方とか大事にしていることに共感し、強い愛着を持ってくれる人は、ほんとに少数でいい。片手でいい。5人いればいい。熱い熱いブランドの思想やスタイルや哲学をわかってくれる人ね。相対比較を超越して、このブランドじゃなきゃ駄目という、ブランドの実の部分をわかってくれる人というのが近くでできて、そこから中心がめちゃ熱くて徐々に広がっていく形のほうが、ブランドとしては強いのです。

 なぜ先ほどイソップのお話をしたかというと、イソップは今店頭に行くとメリットで売ってない。考え方とかスタイルで売っている。店頭に行くとメインンメッセージとして書いてあるのが、1980数年。ごめんなさい。これは正確じゃないので調べてください。そのメッセージの方向性が非常にブランドにとって大事だという話がしたいので、正確な数字は外しますけど、「19何十何年から、

(注:「2009年から」:この年、欧州連合が化粧品成分の動物実験の禁止を施行した)

動物実験を私たちはやってない」というメインメッセージなんです。
まさに思想の差別化。広告で煽ったりバズったりしない。


 やはり日本って家電とか自動車が強かった2000年ぐらいまでの売り方の癖がありまして、日本のブランドとかメーカーは、競合と相対比較してメリットを押したいんだよね。機能がいっぱいついているとか、本体が何グラムで他より軽いだとかを。哲学からくるデザインとか、スタイルとか自分たちの考えている思想で、ファンの方とかみ合わせようとするのはあまり得意じゃない、日本人は。ヨーロッパのブランドは特に、ファンの方と考え方とかスタイルとかを一致させてくるんです。

 シャネルスーツとかもそうなんだけど、ブランドにはスタイルがあって、考え方とビジュアライズされたものというか、見えるものと見えないものの中にスタイルがあって、スタイルの上には思想があって、ファンの方がそれを好きになり、支持をするというやり方を取ってくる場合が多い。それが内側――近いところからそのスタイルが大好きで、その「好き」が伝播していくかたちになると、めちゃ強いブランドになっていく。

 ブランドの場合は、ファンになった方が100%か120%熱くなっている状態を1人、2人、3人、4人と徐々に広げていくかたちになるので、ブランドになるか?どうかのポイントは、意図的に「ファンづくりをやるか?やらないか?」なのです。

8、よく買ってくれる顧客と、ファンは違うもの。


 今日の本題ではないので触れないけど、ファンとお客さま(顧客)というのはまた別物だし、買ってくださる方が顧客ではあるんだけど、たくさん買っている顧客がみんな熱狂しているわけじゃないということです。ファンは熱さと忠誠度。顧客が多くても他でもいいやという人ばかりだとブランドにはなりません。今日の話のブーム的な消費もそう。熱くてファンとして「あなたじゃなきゃ駄目」という人が出てくれば、ブランドというのは徐々に成立していくということですね。ブランドとブームの違い、伝わりましたかねえ。

 最近、あまり俺の得意分野ではないんですが、自分が消費者として、それにたくさん触れているわけじゃないので何とも言えないのが、ラーメンってどっちなんだと思いますよね。ラーメンのお店は「ここじゃなきゃ駄目」っていうことで、そこにほれ込んで通っている人もいるけど、今は寿命が短くなっている傾向もあって、意外とスイッチされちゃうのではないか。スイッチする。ほかでもいい。あるいは、なくなってもいいというと、それはちょっとブランドと違うので、ラーメンというのはどっち型でやるのがいいのかなとか考えたりはします。ラーメン屋のブランディングは依頼が来たことがないので、まだ研究というか、俺の知識も浅いところですけど、というところでした。
 以上、久々野智小哲津でした。

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