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お客様の言いなりは、ブランドにはなれない。ブランドにはスタイルがあるものだ!

コテツ note 第4回 #コラム #note

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」

「コテツのブランディングと商売の話」コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。
このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で
語った内容を文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
Voicyもお聞きください。

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【お知らせ】

2022年4月より、小哲津のブランディングと商売の勉強会のコテツゼミの
六期生がスタートします。
コテツが直接講師となり、半年間でご自身やビジネスのリブランディングを
学ぶ講座です。10人限定となる予定です。
3月から募集開始。こちらのnoteかVoicyで告知します。

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Voicy No.0006 2021年8月2日収録

「お客様の言いなりは、ブランドにはなれない。ブランドにはスタイルがあるものだ!」


1、ブランドは、独自固有のスタイルを持っているものだ。

 今日のテーマは「ブランドにはスタイルがあるものだ」ということです。

 俺は経営者なので、聞いてもらっている方に、商売でもセルフブランディングでも使って、いい結果につながってほしいから、実践的な内容で話そうと思っています。ブランドづくりとかブランディングで結果を出すには、「ブランドとは何か」ということが、とにかくわかっていないと始まりません。

 ブランディングがうまくいかない理由は、「ブランドとは何か」がわかってないまま、完成予想図がないような状態でやってるから。SNSを頑張るのも、ブランドとは何か、ブランディングは何かがわかってないからうまくいかないので、流行りのツールやアプリを使うとか、広告出しまくるとか手段を頑張る前に、目的がブランディングならば、そもそもブランドってどういうものか、ブランディングって何かを理解してはじめないと何も得られないよ。というのがここ最近のコテツのVoicyのテーマです。なので、しばらくブランド・ブランディングの基礎の基礎の話が結構多くなります。
 
 まず、ブランドというものを理解するに当たって、『スタイル』があるものだというのが必須です。ブランドは、その『ブランド固有のスタイルを持っている。』ということです。

スタイルというのは見た目のデザインの個性だけでなく、ビジネスプロセスだったりコミュニケーションスタイルだったり、そのブランドが持つカルチャーや哲学だったりという無形の部分でも、独自のスタイルがあることが大事です。

 ブランドのスタイルというと「表面的なデザインにおける個性ですか」みたいに捉える人が多いけれども、決してデザイン的個性だけではないです。
 強いブランドはカルチャーがすごく色濃かったりします。何を大事にするか?どういう人間関係性を重視するか?というようなことも。その独自固有のスタイルは有形無形あり、いいブランドほどそれが強く染み付いている。「体臭」が強いというか。これはあくまでも比喩表現で、その組織の体臭が強いようなところを、強いブランドは土台として持っていたりします。


2、ブランドのスタイルって、どのようなもの?


 ブランドのスタイルで、いくつか実例をあげますね。

 シャネルであればシャネルスーツ。黒(ブラック)ね。シャネルはやっぱり黒の色がベース。これにはココ・シャネルという創業者の思想があり、そこにスタイルがあり、ココ・シャネルがコルセットを着けていた時代に、女性の解放という意味で、コルセットを取ってジャージ素材とかツイード素材とかを使って、その当時はあまりなかった生地感とシルエットのスーツをつくった。それがシャネルスーツ。シャネルのスタイルというのは、ココ・シャネルが好きだった黒中心。

 あとは、よくココシャネルが着けていたパール。真珠のネックレスを首元に着けるというスタイルですよね。ゴールドのものを着けたら駄目というわけではないんだけど、ココシャネルのスタイルは違います。黒にパールを合わせる、それがシャネルのスタイルです。無形のものからのスタイルだと、シャネルは思想とスタイルとして女性の解放でココ・シャネルが始めたブランドなので、未だにメンズの洋服をやっていない。これもスタイルですよね。売れることを考えたらメンズもやればいい、ただ哲学に反する。売れる売れないを超えて、貫き通すものがある。そのようにブランドには、やはりスタイルがある。

3、無印良品は思想をデザインにして、スタイルにしている。

 日本発のブランドで、とても優れたブランドとして、無印良品があります。と無印良品と聞いたときに想像する、売っている衣類とか文房具とか家電のスタイルがある。それはデザインスタイルもあるし、思想的スタイルもある。思想として過度なものや過剰な装飾のものは出さない。ネイビーとかベージュとか、白というか生成りの色があって、家電もステンレスとかの特徴的なシンプルスタイルみたいなものですよね。

 過不足のないいいもの。という思想自体にスタイルがあって、それがブランド活動全般やデザインにまで行き届いている。

 これはもう、売れ筋をデータで把握してそれに合わせて商品を出す。とかではないんです。

 真逆のやり方を言うと、ユーザーがいろんなことを希望してくれたとして、「言われたことはそれぞれに合わせて何でもやります。どんな形にでも対応しています」というのは受託メーカーのビジネスのやり方になるのです。ブランドにはなりにくいというか、ならないですよね。

 言われた通りのデザインや仕様や予算を実現する。作るもの出すものは、依頼してくれたお客様によって全部違う。なぜならば全て要望に合わせるから。
これは受託メーカーです。

 ここは補足が必要なんだけど、俺は、受託で言われたものをつくっているメーカーよりもブランドのほうが上だというつもりも全くない。言われたことにきちっと対応して、全お客様に違うものを提供して、それでビジネスがリピートして、繁栄して、お客さまが喜んでくれるというビジネスのやり方はそれはそれで素晴らしいこと。

4、『スタイルを貫くブランド』になるのか?『言われた通りやるメーカー』になるのか?

 けれども、『ブランド』になるのと『メーカー』になるというのは、出だしの段階で、南極に向かって踏み出すのか、北極に向かって踏み出すのかぐらい違います。真逆です。ビジネスをやっているブランドオーナー、ビジネスオーナーが、明確に、意思としてどっちで行くか決めるものです。

 出だしで真逆に向かう、『ブランド』になるか『メーカー』になるかだから、ビジネスオーナーがどう考えるか判断基準として例を挙げて説明します。

 アクセサリーで、ビジネスオーナーが例えば指輪をデザインと製作してつくれると。指輪をつくる技術も上がって、どういうものもつくれる。シルバーは溶かせばどんな形にでもなるわけで、つくろうと思えば、技術力があれば、シンプルなものも華美なものも、つくれるわけです。あと、「こんなデザインでつくってくれ。あの●●のブランドみたいに。」と言われても、つくれるわけ。

 指輪をつくれる能力のあるビジネスオーナーが始めるに当たって、「お客様一人一人の希望に合わせて、言われたとおりにどんなものでもつくって、納品させてもらいます」と言った場合は『受託型のメーカー』になる。そうではなくて、「俺のつくる指輪はこういうデザインなんだ。こういう個性で、こういう思想の下に俺はつくっているんだ。なので、買ってくださる方は、この形とか思想のファンの方が買ってくれればよくて、別な形がいいとか別なスタイルとかデザインがいいという方は、ほかに行ってください。」となると、それはブランドとしての一歩を踏み出すことになるわけです。どっちでもいけるじゃないですか。


 実際に今世の中で売られているものに、これは超有名なアクセサリーブランドだけど、クロムハーツってありますよね。クロムハーツのお店に行って、ほかのブランドの形のものをつくってくれと。例えばゴローズっていうインディアンジュエリーのブランドがまた別にあるんだけど、クロムハーツとゴローズというのは全く別な思想、別なスタイルを持つブランドです。クロムハーツのお店に行って、「ゴローズみたいなデザインのを作ってほしいんです。同じシルバーだったらつくれるでしょう」と言って、クロムハーツがつくると思いますか?

 もちろんこれは例え話で、俺も確認はしていないです。クロムハーツのお店に行って「ゴローズのデザインをつくってくれ」とコテツ、おまえやったのかと言われれば、やってないけど、おそらく受けないと思います。

 ゴローズという表参道でよく原宿方面に行列ができているブランドがあります。ゴローズというのは、高橋吾郎さんという方がインディアンの中に入って、インディアンネームまでもらって、インディアンの思想を元にインディアンジュエリーをつくっているという伝説のブランドです。
 吾郎さんという方はもう亡くなったんだけど、そのゴローズのインディアンジュエリーが気に入った方は、少しずつしか買わせてもらえない。もちろんゴローズの販売方法自体がブランドの在り方なんだけど、ゴローズというブランドは、最初はお客さんが好きなものは買えないのです。

 ゴローズのブランドのものをちゃんと持っているかどうか、ブランドのファンかどうか確認した上で、買い足していくやり方でレベルの高いものが買えるようになる感じなんだけど、ゴローズに行って「クロムハーツみたいなアクセサリーをつくってほしいんです。なんでそういうのをやらないんですか。俺の好みはこれじゃないんですよ」みたいなことを言ったら、「それはうちじゃなくていいじゃないですか」となります。

 もちろん、クロムハーツやゴローズに行って、「最近流行りのアクセサリーはこういうデザインのですよ。こういうの売れば売れますよ。」と言っても、やらないでしょう。


5、ブランドってそもそも万人向けじゃないから、ブランドなのだ。


 建築家で安藤忠雄さんという方がいらっしゃいます。安藤忠雄さんというのは、代表作が「住吉の長屋」という作品名というか、個人宅ですよね。教会とか美術館もつくっていて、今も個人宅もやっています。知り合いの知り合いがお家をやってもらったということで見たことがあるんですけど、安藤忠雄さんという方の建築スタイルは、コンクリート打ちっ放しの建物です。安藤忠雄で画像検索すると、ものすごく勝ち気でエネルギーがあふれているご本人の写真とともに、コンクリート打ちっ放しの建物が幾つか出てくるんですが、これが安藤忠雄さんという建築家のスタイルなのです。

 安藤忠雄さんはこれで世界的ブランドになって、世界中から安藤忠雄建築にしたいという依頼がある。そうそう、表参道ヒルズも安藤忠雄さんの建築です。
 その安藤忠雄さんに、「ヨーロピアン調のお城みたいなおうちをつくってほしいんです」って言わなくないですか? それを言ったらやるのかな。安藤忠雄建築事務所でそういうのを受けるか俺はわからないけど、基本的には安藤忠雄さんにお願いする人というのは、安藤忠雄のスタイルをつくってみたいとほれ込んでいる方が、わざわざ依頼するわけです。

 これはクリエーティブな世界だとすごくわかりやすい。デザイナーというか洋服のクリエーティブディレクターで、エディスリマンという人がいるんです。これはちょっとマニアックかな。ディオールオムというディオールのメンズのブランドを立ち上げて、すごくぴたぴたのスキニージーンズ(黒の細いデニム)とかをはやらせた人です。そのあと、この方はサンローランに移って、また黒のスキニーデニムに、結構タイトめのジャケットとかスカジャンみたいなのをはやらせた。
 
 その方がディオールのあと、イブサンローラン、そのあと今セリーヌに行って、クリエーティブディレクターをやっている。デザインのトップね。そうすると、またエディスリマンスタイルのものを出してきて、そのコレクションに出たときは、セリーヌと過去のサンローランやディオールが似ていると大騒ぎになった。ディオールでもサンローランでもセリーヌでも、エディスリマンスタイルで同じような細身のスーツじゃないかと。全く一緒じゃないかと。
 
 でも、それを買う人は、エディスリマンのスリムなスタイルが好きなわけです。例に出したのは俺がそもそも好きなんだけど。ブランドというのはスタイルがあって、そのエディスリマンに「今オーバーサイズもちょっときてるじゃん。アメリカのラッパーみたいなのも、結構はやりだよね。なので、オーバーめの肩が落ちたジャケットとかパンツとか、超太いのとかワイドなやつをやってほしいんだよね」みたいなことを言うのは別にいいと思います。ただ、おそらくやらないと思うんです。それは彼がそういうスタイルが好きではないからですよね。美学とか思想とか哲学にスタイルがあって今売れるとわかってもやらないんですよ。


6、ブランドとしてスタイルを持つと、好き嫌いがわかれる。


 本当にビジネスをやるときに受託型で何でも受けるのか、ブランドとしてスタイルと在り方をファンに問うのかというのは最初の出だしで分かれる道だし、スタイルを持つということは、そのスタイルに合わない方は離れていき、そのスタイルに合った方は熱狂するというかたちなので、どっちにするかよく考えて決めたほうがいいです。

 「スタイルを決めたら、それ以外の人が買わなくなるから、売上が増えなくないですか」という人がよくいるんだけど、そのスタイルに心酔した人が強烈に支持してくれるので、そういうお客さまがきちっと付いてファンになっていく。スタイルが明確にあれば、ビジネスで全然売れないということはないのです。

 音楽もそうです。スタイルがある。イメージ的にあまりその方のことを詳しくない方でも、例えば長渕剛さんとか矢沢永吉さんにはスタイルがあるというのを、なんとなく感じられませんか。スタイルを絞るとお客さまは減るんじゃないかと言うけど、スタイルを持っていて、めちゃくちゃファンがいるミュージシャンの方を結構想像できるでしょう。なので、スタイルがあれば、それを好きな人がきちっと寄ってきてくれるというところです。


7、まわりに合わせて、正解を追っている限り、スタイルは得られない。

 今日は一貫してスタイルの話をしているのですが、この「スタイル」というのは日本人だとよくわからない人が多いです。日本人の文化的な特徴だと思いますが、年齢によって自分自身のスタイルを結構ころころ変えるんですよね。

 高校生になったら、高校生っぽい格好を周りの人に合わせてやってみて、大学生になったら、大学生ファッションを周りの人に合わせてやってみる。社会人とかOLさんになったら、OLさんっぽいファッションとOLさんが行くようなところに食べにいって、主婦になったら、専業主婦っぽい格好と千牛主婦がやるような行動スタイルをやる。
 周りの同調圧力なのと、自分のスタイルをどういう状況でも貫き通すという感覚がすごく少ないから、スタイルというのが個人レベルでもわからないのです。日本人は「何が今、正解なんですか」みたいに、年齢とか立場によって、そのときにおける集団の中での立ち振舞いや着るものや行くお店など正解を求めるので、自分のスタイルを貫くよりも、その場にそぐうようなこととか、今はやっているものは何かに、ちゃんと変えていく。

 自分はフランスやイタリアのブランドをやってブランドを学んだので、コロナでなければ(向こうへ)結構行く機会もあったんです。ヨーロッパの人はおしゃれだと言っている人は多いけど実は違って、意外と自分のスタイル以外のものは着なかったりするんです。日本人みたいに流行りを追って、ころころ自分の買う服を買えたりしない。いちいちネットと雑誌で流行りなんか調べて買っている人なんてない。

 フランスの男性は、全然流行りなんていうものには無頓着です。日本人って真面目だから、オーバーサイズのものがはやってきたとか、肩が落ちているジャケットが売れているとか聞くとちゃんと変えるという感じでやる。けれども、その分フランスの男性にはスタイルがあるんです。15歳ぐらいからずっと革ジャン着ている人は、60になっても70になっても革ジャンを着ているし、オーダースーツが好きな人は、オーダースーツを年齢関係なく着続けている。


 でも日本人というのは、ほかの人と違う格好みたいなのが嫌なのか、あまりスタイルがない。個人レベルでスタイルというのがよくわからないから、「ブランドはスタイルがあるものですよ」みたいなことを言っても、「スタイルって何ですか?」「今はどういうスタイルが正解なんですか」みたいなことで、スタイルとはほど遠い議論になってしまうのです。

 売れるように何でも変えるというのは別に悪いことではないけれど、ブランドになりやすいかというと、どちらかというと、ブランドとはほど遠いかなと思っていたりはします。
 ファンの方が、そのあなたがやっていらっしゃるブランドや、あなたのセルフブランディングにおいて「あなたじゃなきゃ駄目」というファンの方との信頼関係を構築するためにも、あなた自身のスタイル、あなたのブランドのスタイルを、ちょっと考えてみてはどうでしょうか。
 以上、久々野智小哲津でした。

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