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最初からブランドにする気でやる。

Voicy No.0131 2022年3月16日放送


鍋3万円?!


今日のテーマは「最初からブランドにする気でやる」です。

ここ数年、日本国内発祥の独立系ブランドで頑張っているものが結構出てきています。昔、そういうドメスティックブランドといえばアパレルの世界でしたが、家電とか日用品でも頑張っているものが出てきています。

コテツのイチオシどころか、激推しの日本を代表するブランドは無印良品です。無印良品というのは思想が中心なんですよね。

これは今日の問題ではないから軽くしか触れませんが、商品力だけじゃなくと言ったら失礼だけど、無印良品という思想で世界に出ているのがすごいなと思っています。

日本人は思想とか哲学とかを人に伝えて認めてもらうというのが、あまりうまくありません。「物に魂が宿る」ということで、「すごく物がいい」みたいな話は大好きだけど、思想・哲学・スタイル・センスでかみ合って結果として物を買ってもらうという構造に、どうしてもなりにくい。

けれども、それが本当のブランドです。
無印はそれに該当します。

ここ数年、独立系のブランドで、「それが好き。これじゃなきゃダメ」というファンを抱えているブランドが出てきていて、オレはそういうのを継続的にウォッチしています。

バーミキュラというキッチン用品のブランドがあって、フラッグシップショップが東京の代官山という場所にできたので、この前、そこに行ってきました。

個人で1回行って、コテツの勉強会のグルコンでも行き、コテツゼミの中で、さらに希望した人でやっているグループコンサルがあり、その方たちと視察でも行きました。面白いところ、ブランドとか世の中の変化わかるようなところということで、バーミキュラのフラグシップを行き先に選んだのです。

その後さらに自分で2回ぐらい行っていて、ここ1カ月半ぐらいで4回ぐらい行っているかな。

バーミキュラはキッチン用品の会社で、鍋とかフライパンとか、あとは炊飯器――ライススポットという言い方をして炊飯以外もできるんだけど、それを売っているブランドなのです。

価格帯が、鍋だと3万円前後がおそらく一番出ています。

ライスポット(炊飯器プラス調理器具)で、さっきの「電子的に火力の調整とかを行うものが付いている鍋」は9万円弱のものがメインです。

9万円弱の炊飯器といってもいいですが、フライパンの中心価格帯が1万5000円から2万円かな。

キッチン用品は、今も金物屋さんに行けば鍋釜は1000円前後からありますよね。もっと安いのも多分あるだろうし、1000円から2000円なら十分使える鍋やフライパンが手に入る。

そういうものがある中で、鍋で3万円、炊飯器9万円、フライパンで2万円という価格帯でやっているのです。

オレは、ちょっと前まで家電ブランドのブランディングをやっていました。

商品開発の段階からいろいろ見て回って情報収集し、ブランドのポジション的にも製品のポジション的にも、ぶつかる、ぶつからないで見ていきました。9万円の炊飯器は自分がやっていたブランドとぶつかりそうだったので、その時点でバーミキュラを炊飯器の方から眺めていたんです。

でも、やっぱり家電量販店で並んでいる状態での戦いを想定しているので、名古屋のほうにバーミキュラのフラグシップの場所があったのに、見に行っていませんでした。

その後、東京の代官山にバーミキュラハウスというものができたと知り行くようになったんだけど、バーミキュラって、そもそも最初からブランドにする気でやっているんです。

どういうことかというと、日本人は安く、普及格帯でまず多くの人に買ってもらい、何か実績を積んで高くしていって最後はブランドになるとか、特殊なポジションを取るみたいな考え方をします。

ほかにはバルミューダという高級家電のブランドがあります。バルミューダもバーミキュラも最初からブランドでやっていこうと決めているので、普及価格帯の商品を出だしから出していません。

バーミキュラの場合は、最初から日用品としての1000円、2000円の鍋より、ライフスタイルとか嗜好品として鍋を求める、可処分所得が高く文化度の高い人しか対象にしてないなとオレは見ているの。

これは、あくまでも全部コテツの見解です。

バーミキュラがブランドのメッセージとして言っていることはWebとかを見ていただければと思うんだけど、自分はその立ち位置とか戦略を読み解いてしゃべっています。

別にバーミキュラが可処分所得が高くて文化度の高い人しか対象にしてないとは言ってないので、誤解のないようにお願いします。

コテツの、いわゆるプロとしての見解です。
裏側で、ある意図を読み取っているところなので。

物を売ろう、ビジネスをやろうというときに、まず日用品というカテゴリーに入ろうと思うのか。もっと安く普及価格帯でやるとして、いわゆる日用品のカテゴリーとして捉えられるようにやるのか。

それとも、
ライフスタイル購入とか嗜好品のカテゴリーに入るつもりでやるのか。

これはスタート段階でとても大事なことです。途中から切り替えるのはめっちゃ難しい。嗜好品というのは機能・用途として、生活においてはどちらかというと無駄かもしれないものです。

嗜好品といってわかりやすいのが、タバコとか酒とかコーヒーとかじゃないですか。絶対なくならないし、タバコなんて煙ですからね。それで年間何万円か払っているわけ。

シガーバーとか、最近はシーシャバーとかもあったりして、ああいうのも全部そうですけど、あれは嗜好品で、機能とか用途としては意味がないものですよね。

壁に釘を打つためにトンカチを買うという、用途とか機能を買うのから離れています。

でも、「いやいや、バーミキュラって鍋ですよね。フライパンも売ってるし、炊飯器も売っているわけですよね」と言うけれど、バーミキュラは機能と用途を売ってるわけじゃない。そんなのは満たされて当然です。

それもしっかりクオリティーを高めて手間かけているけど、ブランドが提供するものはライフスタイルとか嗜好品とか、それを持っていることによる自分のステータスの確認なのです。

出だしから、それも一緒に認めてもらおうと思ってやっていることが、ブランドのスタートとして良かったのかなと思っているんです。

バーミキュラ公式HP 


インナーブランディングからやる。


バーミキュラハウスに行きましてスタッフの方としゃべると、バーミキュラのブランドとしてのあり方、哲学、メッセージ、スタイル、センスが、すごく感じられます。

スタッフの方の総評を述べさせてもらうと、ものすごく、いいスタッフがそろっていいます。さすがバーミキュラ代官山のフラグシップショップ立ち上げ時に揃ってる方々だ、という質です。

このスタッフの質が高いというのは、よく教育されてるとか、何か統一されたマニュアルに沿ったのを粛々とこなしているから、ではありません。

ブランドが本当に好きなスタッフを集めて運営しているので、バーミキュラというブランドのあり方、哲学、メッセージ、スタイル、センスを各スタッフ自身の方が自分なりに解釈し直して、そこに付加をしてお話をしているんです。

ですから話していると、ブランドの熱が伝わってくるんだよね。

自分が話した方もご自身でバーミキュラを使っていて、好きになって入れ込んで、この仕事をやっているという方でした。

コテツのグループコンサルで視察に行ったときに、その仲間に話していた方は、名古屋のフラッグシップ店に行って、たまたま社長さんと話す機会があった。「バーミキュラの考えに触れて私は働きました」みたいなことを言っていたようです。

なので、インナーブランディング――近いところから厚くするというのがブランドですし、それもできているなと思いました。

話の中で、「バーミキュラはゆっくり過ごす時間を提供しているとか、最高の手料理をつくる楽しさを提供している」とありました。

これはコテツのブランド論の根幹なんだけど、プロダクトというのは商品自体、サービス自体で、それのクオリティを高めるとか、その商品自体やプロジェクト自体で喜びを得てもらうというのが大前提です。

だから、商品やサービス自体で満たした上で、「それを提供して、その先に何があるの?」ということがブランドです。

フェラーリを買った人は、フェラーリに乗って移動することを買っているのではありません。

イタリアのフェラーリレッドの車に乗ることによって、自分のスタイル表明をしているわけ。生き方を表明したいし、周りに見てもらいたいわけです。

それと同じように、バーミキュラのフラグシップのスタッフの方は
「ゆっくり過ごす時間を提供したいというのが、本当のところです」
と言います。

なかなかでしたね、本当に。

地階に、バーミキュラ製品でつくっている、素材の味を生かしたレストランがあります。

「1階のショップを見てきました」と2階のレストランでパンフレットを机に置いていたら、「ここで食べたのとは別のものを地下の試食で出すので、試食の時間を確認してきますね」と言われます。

その2階のスタッフも、「購入を考えていただいているんですね」と1階のショップスタッフのところに降りていって確認してきてくださったんですけど、これはおそらくインセンティブの問題じゃない。売れたら歩合でということではないのです。

そのときは、まだ代官山店ができて数カ月のようでしたが、立ち上げのスタッフの方の熱がそれぐらいというのは、簡単なようで、なかなかできないことだと思いました。

今日お伝えしたかったのは、普及価格帯で機能や用途とか値段の勝負だけで数を売っていれば、もちろん気に入っていただく方もできるということです。

けれども、そもそもブランドにする気があるのなら、スタートからファンづくりをする設計で行ったほうが絶対いいというところです。

東京の代官山に出店したのも、すごいと思っています。

いろんな地域で聞いている方いらっしゃると思うのでご説明すると、東京の代官山って、東京以外の人からすると、「何それ、どこ?」みたいな感じだと思う。

銀座は高級なものが多いけど、いわゆるオールドスタイルのものも結構多い。それにラグジュアリーブランドがある。若者の街は渋谷と新宿。人が集まるし、お金も相当動いている。消費も激しい。

代官山は、渋谷からひと駅、電車に乗っていったところなんだけど、大きなショッピングのビルがないんです。

路地裏に小さくアパレルのお店とか、ケーキのお店とか、古着のお店とか、食器の店とか、こじゃれたカフェとかなので、一店舗がすごく小さいし、代官山に歩いてこれる人というのは高級住宅街から来るんです。

渋谷の松濤というところとか、そもそも代官山エリア一帯には、目黒の方に向かっていく大きな家が建っている住宅街があって、そういう人たちが足を運んで見てくださるだろうと予測した立地です。

代官山という駅は1日に降りる乗降客も普通の地方都市に比べたら少なくはないですが、東京においては新宿・渋谷・池袋とか、三軒茶屋とか中目黒とか吉祥寺とかに比べたら全然乗降客は少なくて、何もないのに行くような場所じゃない。

小さめのお店を狙って美味しいところに食べに行くとか、ちょっと気に入った洋服ブランドのお店があって行くような場所なので、そこにお店を出したのも、なかなかな判断だろうと思っております。

以上、久々野智小哲津でした。

本文は
コテツがVoicyの「ブランディングと商売の話」で語った内容を
文章化し加筆したものです。
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上のVoicy音声は下のリンクからどうぞ!

https://voicy.jp/channel/2089/292304

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