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小説

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2022年1月の記事一覧

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(10)

(続) (目次)

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(9)

 病気のせいで思うように小説が書けない。詩だけは何とか数日に一回のペースで書けているけれ…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(8)

 この章までこのスタイルで書いてきたわけだけれど、ふと一つの疑問が私の頭に思い浮かんだ。…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(7)

 「H氏賞と芥川賞を同時受賞する」というような馬鹿みたいな夢を語っても恋人は笑わなかった…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(6)

 「詩人か作家になるかでなければ何にもなりたくない」と私が言ったとき、恋人は「それなら詩…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(5)

 メイフラワー号が故障してしまったので、我々は最終的に電車を乗り継いで熱海までたどり着い…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(4)

 熱海に旅行に行く途中で恋人の車が故障してしまったことがあった。  それはあまりにも突然のことだった。そのとき、恋人は運転席でハンドルを握っていて、私は助手席にいた。車(世界的シェアをほこるトヨタ社製のコンパクトカーだった)がもくもくと煙を上げ始めたのに気がついたのは恋人だった。私は100パーセント完璧に眠りこけていてそんなことには全く気がついていなかった。  恋人が切り裂きジャックに遭遇したかのごとき叫び声を上げて、私はそれで目を覚ましたのだった。 「どうした?」と私

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(3)

 三軒茶屋の「はあとぶれいく」という喫茶店の前で我々は落ち合うことにした。私も恋人もSNS…

はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(2)

 ミレニアル世代であるところの我々は、SNSで何回かメッセージをやりとりして会うことになっ…