はる、なつ、あき、ふゆ、そしてまたはる(6)
「詩人か作家になるかでなければ何にもなりたくない」と私が言ったとき、恋人は「それなら詩人にも作家にもなろう」と言ったのだった。
初めて恋人に詩や小説を見せたとき、恋人は本当にまじめに読んでくれた(それは付き合い始めてからわりとすぐのことだったと思う)。詩の一行一行を、小説の一行一行を、本当に真剣な面持ちで読んでくれたのだ。そんな人間に出会ったのは生まれて初めてのことだった。
「へえ」と作品をひと通り読んだ恋人は言った。
「つまらないものもあるし、おもしろいものもある」
「なるほど」
「つまらないものはとことんつまらないけど、おもしろいものは本当におもしろい」
「ありがとう」と私は言った。
それ以来、恋人は私にとっていちばんの批評家になってくれた。詩か小説ができればすぐに恋人にLINEをして見せたし、恋人もすぐに的確なコメントをくれた。例えば「ここは全然おもしろくない」とか「ここはとてもおもしろい」とか「ここはこう直した方がいい」とか「ここは全部削除した方がいい」とか、毎回ていねいに作品を批評してくれた。
私はこのような恋人と付き合うことができて、とても幸せだった。
(続)
(目次)
thx :)