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6年通った東京大学を卒業する(したい)ので印象に残った授業をまとめてみた

今年の3月で学部一年から修士1年まで6年通った東京大学を卒業するので、これまでに受けた授業の中でも特に印象に残っている授業をまとめました。


前期課程(学部1・2年)

社会1

この授業では映画「ハンナ・アーレント」を皆で鑑賞し、アドルフ・アイヒマンの罪や社会の仕組みについて考察をしました。
アドルフ・アイヒマンとは、第二次世界大戦中多くのユダヤ人を収容所へ移送したナチス戦犯の一人で、戦後の裁判により死刑が確定し、執行されました。
映画の中ではその裁判の実際の映像が使われています。

特に印象に残っているのは、アドルフ・アイヒマンが多くの罪なき人々を死に追いやった当事者であるにも関わらず、全く罪の意識がないことでした。
裁判を通して、裁判官からの「業務を行う中で、多くの人々を死に追いやっていることに対して罪の意識は感じなかったのか」という質問に対して、「自分は誰かに命令されたやっただけ」という言い訳を口にし、非難を浴びる様子が描かれていました。

しかし、この映画の主人公である社会学者のハンナ・アーレントは私たち「普通の人」でもアドルフ・アイヒマンのような虐殺を行う「罪人」になりうるということを主張しました。
ヒトラーの政治は官僚制を採用しているために、アイヒマンには当事者意識がなかったのではないかとしています。
すなわち、常に上からの命令に従って「業務」をするだけで、自分の行った「業務」がどのような結果をもたらすのか全く考えられていなかったというのです。
それが、アイヒマンの「自分は誰かに命令されたやっただけ」という言い訳につながったのです。

この官僚制による「当事者意識のなさ」は現代社会にも大きな影響を与える問題です。例えばオウム真理教でも官僚制のようなヒエラルキーを設定し、これが罪悪感を感じにくくしていたとされています。
この授業を受けたことで、「常に当事者意識」を持って生きること「自分の行ったことによる影響」を常に考えながら生きることの大切さを学びました。

また、この授業は自分のいた科類の必修授業だったため、友達と一緒にアイスを食べながら授業を受けたり、課題の内容を共有したりと、青春らしいことができたのが楽しかったです。

教育臨床心理学 / 教育心理Ⅰ

これらの授業では心理について学びました。

教育臨床心理学ではうつ病や強迫性障碍、統合失調症など身近な精神病について学びました。
この授業を受けるまで、それぞれの精神病が何かわかっていなかったのですが、それぞれ何が原因で発症し、どのような経過を辿り、どのような症状を発症するのかについて理解をすることができました。
全て早期の治療が良いとされているので、身近な人で、この授業で学んだような症状を発症している人がいたら、通院を薦められるかなと考えています。

教育心理Ⅰでは子供を教育するにあたって必要となる心理の知識について学びました。特に印象に残っている知識は2点あります。
一つ目は、子供は叱るよりも褒める方が成績が上がるという研究です。私は叱られて育てられてきたので、その研究結果にとても驚きました。自分に子供ができた時には褒めて伸ばそうと思いました。
二つ目は、「ご褒美」をあげることの危うさです。例えば、ある研究では、子供達に対して「絵を描いたらご褒美をあげる」と約束をしました。その後、研究者達が子供達の前からいなくなると、「絵を描いたらご褒美をあげる」と約束された子供達は、約束されていない子供達に比べて、絵を描き続ける割合が減ってしまいました。つまり、「楽しいから絵を描く」から、「ご褒美をもらうために絵を描く」にモチベーションが変化してしまったのです。確かに、一見ご褒美をあげた方が一生懸命取り組むように見えますが、ご褒美がなくなってしまうとその行為をやる意味がなくなってしまうのです。私も家庭教師をしているため、「ご褒美」をあげることの危うさに気をつけながら授業をしています。とは言いつつも、やはりご褒美をあげた方が勉強の進みが良くなるので、ついついご褒美をあげてしまいます……難しいですね……

全学体験ゼミナール (森に学ぶ(ふらの)前編 北海道の大地に学ぶ)

この授業では北海道にある富良野岳に登りました。
富良野には東大の演習林があるため、その関係で富良野に行きました。

富良野岳は1900m級の山で、私はそれくらい高い山に登ったことがこれまでの人生でなかったため、とても印象に残りました。
変わりやすい山の天候や、標高が高くなるにつれて綺麗に咲く高山植物が見れたことなど山のことについて多くのことを学ぶことができました。

またこの授業は、履修している生徒が6名程度だったため、先生や他の学生と密に関わる機会を持つことができました。さらに、山小屋のようなところに皆で泊まるため、先生・他の学生と関わる機会も多く、先生が学生時代にどのようなことを考えながら生きていたのかや、他の学生の今後の人生設計についてなど様々なお話をお伺いできたことが、とても刺激的でした。

富良野岳からの眺め

後期課程(学部3・4年)

学部後期では教養学部の学際科学科の総合情報学コースというところに進学しました。私は文系として入学したため、理転したことになります。

プログラミング基礎

この授業ではC++を学びました。
この授業はほんーとうに辛かったことを覚えています。
私は文系だったため、プログラミングをした経験がそれまで全くなく、文字通り泣きながら課題をやった記憶があります。

プログラミング基礎というかわいらしい名前をしているものの、凄まじい授業の進度と課題の量でプログラミング未経験の私の心をへし折っていきました。
部活の理系の先輩に泣きついたり、学科同期に聞いたりしながらなんとか課題をこなしました。
この授業で心底理系からそのままこのコースに来た学科同期達を羨ましく思ったことを覚えています。

この授業そのものは鬼きつかったのですが、この授業を通してプログラミングの基礎を学ぶことができました。
この授業で学んだことは現在の研究でも生かされています。

また、このようなきつい授業が多くあり、情報交換が重要となってくるため、自然と学科同期と仲良くなることができました。
企業でインターンをしていたり、プログラミングが得意だったりする同期が多くいて、私も負けずに頑張ろうと奮闘していたことを覚えています。
学科同期は皆親切で馬が合って、優秀で、多様な人達ばかりでこの学科に進んでよかったなと今でも思っています。よく何をしているかわからない学科と言われ、私も何をしている学科なのかうまく説明できないです(?)が、その多様性がとても好きです。

人間情報学III

この授業では人の考え方の特徴について学びました。

この授業で一番印象に残っているのは、下の問いです。

ある男が、自分の息子を「車」に乗せて、自ら運転をしていた。
残念なことに、その「車」はダンプカーと激突して、大破してしまった。
   
救急車で搬送中に、運転していた父親は死亡。
息子は意識不明の重体。
あまりに悲惨な事故だった。
  
救急病院の手術室で、運びこまれてきた患者の顔を見た外科医は息を呑む。
そして、つぎのような意味のことを口にした。
  
「自分はこの手術はできない、なぜならこの怪我人は自分の息子だから」
これはいったいどういうことか?

この問題の正答率はとても低くなっているのですが、みなさんはどういうことかわかりますか?
私は恥ずかしながらわかりませんでした。




答えは、
この外科医は「女医さん」だったのです。
とても簡単な答えですね。

この問題を通じて人が「無意識の偏見」を持っており、その「無意識の偏見」は決して人ごとではないということに対してとても強い衝撃を受けました。

私は女性ですが、それでも「女性差別をする」当事者になりうるということに対してとても恐怖を感じたことを覚えています。

修士課程

修士課程では学際情報学府というところに進学しました。

学際情報学概論II

この授業は学際情報学府の必修授業で、テーマを選んでグループワークを行うという内容でした。

この授業が特に印象に残っている理由は他の学生と関わる機会を持てたからです。
学際情報学府に進学してくる人は、海外の大学を卒業した人や起業を考えている人など、本当に多様な経歴を持っていました。
この授業では、そのような他の学生と関わることができ、今後の自分の進路を考える上でとても大きな刺激になりました。

研究

最後に授業ではないのですが、研究で最も勉強になったことについて書きます。

研究を通じて最も勉強になったことは「人への伝え方」です。
学部の頃はあまり人前でプレゼンテーションをする機会がなく、またプレゼンテーションをしてもそのプレゼンテーションに対してフィードバックをもらう機会はほとんどありませんでした。

しかし、研究を本格的に進めるために研究費を出してもらうためには、いかに自分の研究が有意義なものかを皆に納得してもらう必要があります。
また、学会では自分の研究を発表する際に異なる研究分野の人でも理解できるようにわかりやすく発表しなければなりません。

教授はそういった意味でとてもプレゼンテーションがうまく、「人への伝え方」について様々な方法を学ぶことができました。
この「人への伝え方」については企業に就職した後でも役にたつと信じています。

終わり

以上、印象に残った授業でした。
学部1年の、大学生活にワクワクしながら入学した日からもうすぐ6年が経つと思うととても感慨深いです。

修論を書き切って無事に卒業できるように頑張りたいと思います💪

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