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『Pythonデータ解析入門』 まえがきより

データサイエンスや人工知能(AI)を担う人材を幅広く育成するために,全国の高等教育機関で現在,数理・データサイエンス・AI教育が進められています.そのような教育の推進の中心を担っている数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムでは,「リテラシーレベル」と「応用基礎レベル」のモデルカリキュラムを公表しています.特に「応用基礎レベル」では,数理・データサイエンス・AIを活用するための基礎的な知識・スキルの習得,さらにそれらの専門分野への応用基礎力を習得することが目標とされています.

本書はこのような背景のもと,同応用基礎レベルの主たる学修項目を,数理・データサイエンス・AIで重要となるプログラミングとデータ解析の基礎を主軸として体系的に学ぶための教科書です.

2021年3月に公表(2024年2月に改訂)された「数理・データサイエンス・AI(応用基礎レベル)モデルカリキュラム」では,その学修目標が次のように記されています:

数理・データサイエンス・AI教育(リテラシーレベル)の教育を補完的・発展的に学び,データから意味を抽出し,現場にフィードバックする能力,AIを活用し課題解決につなげる基礎能力を修得すること.そして,自らの専門分野に数理・データサイエンス・AIを応用するための大局的な視点を獲得すること.

数理・データサイエンス・AI(応用基礎レベル)モデルカリキュラム


このような学修目標のもと,同モデルカリキュラムは『データサイエンス基礎』,『データエンジニアリング基礎』,『AI基礎』の3つの分類から構成されており,それぞれの分類はさらに細分化された学修項目を含みます.それらのうち,本書は特に数理・データサイエンス・AIの基礎となるデータ解析の点から,『データサイエンス基礎』の「分析設計」,「データ観察」「データ分析」,「データ可視化」ならびに『AI基礎』の「機械学習の基礎と展望」を網羅する教科書となっています.

本書は,東京大学において全学の学部生・大学院生を対象に開講されている2つの授業,「Pythonプログラミング入門」と「データマイニング概論」,において実際に学生が学んでいる内容に基づいて全体を構成・執筆しました.同授業は,同大学の数理・情報教育研究センターが提供する数理・データサイエンス教育の学部横断型プログラムの構成科目となっており,2018年の開講以来,文理を問わずこれまで数多くの学生がプログラミングやデータサイエンスの基礎を学んできています.

同授業の内容は,先のモデルカリキュラムの関連する学修項目を反映したものとなっています.加えて,学生が将来国内のみならず世界で活躍できる人材として成長するための礎となるべき知識を学んでほしいとの思いから,関連分野の教育において先進的な諸外国の大学の実際の授業内容を調査した上でシラバスの設計を行いました.このような設計思想は,本書の内容にも反映されています.

データサイエンスやAIの学びにおいては,関連する基礎的な概念の理解に加えて,それらの背景にある数理的知識の理解ならびプログラミングによる知識の実践の両方が重要となります.現実の課題解決や価値創造においては,数理とプログラミングが両輪となり駆動されることで,数理・データサイエンス・AIの知識を真に活用することができるようになります.

そのため本書では,データサイエンスやAIの基礎となるデータ解析の考え方や代表的な手法について,それらの数理的背景も含めて理解するとともに,Pythonプログラミングによりそれらの手法を実際に手を動かしながら実装することで理解を深めるような構成としました.これにより,数理的知識にしっかりと裏打ちされた骨太で真に応用力のある数理・データサイエンス・AIのスキルを習得することを目指します.

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