14ひきのぴくにっく(14匹シリーズ 第5回/全12回)
【はじめに】
間が空きましたが…
5作目です。
本作も3作目のやまいもに引き続き、野外活動が主となっています。
さて、これまでも災難に見舞われることが多いろっくんの本作での運命はいかに?
【解説】
1.家の庭にて
おばあさんとおかあさんを除く12匹の姿が家の外から見られます。
にっくんとごうくんが粛々と水運びを行っているなか、
食卓にも使われる円卓傍に立って、おとうさんが今日はピクニックへ出掛ける提案をします。
ろっくん、なっちゃん、はっくんが飛び跳ねて狂喜乱舞している姿から、みなが楽しみにしている光景がありありと伝わってきます。
2.室内で出発の準備
楽しみにしていたイベントとは、始まってしまうと必ずや終わりを迎えるのでどこかに物哀しさが付随するものです。
ゆえに得てして、お出かけなどは出発前の準備の時こそが楽しく、
ワクワクとした高揚感があります。
運動会の朝のいつもより早い時間から慌ただしく賑わう台所の雰囲気は非日常でありながらとても子どもながらに楽しい…そんな思いは誰しもあるのではないでしょうか。
厨房にて、おかあさんとさっちゃんがおにぎりを握っており、
食卓では、おじいさんは笹の葉らしき葉を丹念に拭き上げています。
傍らではおばあさんがその葉でおにぎりを2個包んでおり、
よっちゃんがさらに布で包んでいます。
くんちゃんはおにぎりを厨房から食卓へと運ぶのを手伝っています。
とっくんはにっくんに着替えるのを手伝って貰っています。
にっくんは面倒見がほんとうにいいお兄さん。
隣では食卓に腰掛け、何やら笛のようなものを小刀で手入れしている様子なのがいっくんです。彼は長男として独特のオーラを放っていますね。
そのまた隣では、もはや恒例となってまいりましたごうくんとなっちゃんの揉め事。ここでは水筒を2人で取り合いしています。
もう周囲も2人のやりとりにはとりたてて注目もしていません。
唯一関連してそうなのは、はっくんが2人の方を振り返りながら水筒抱えて駆けています。
3.出発
エナガの雛鳥が巣から顔を出し泣いている光景を見ながら、
14匹一行は野道を歩いて行きます。
みなが鳥のいる空を見上げているなか、最後に駆けてきているのはろっくんです。
彼はマイペースなんですね、それが彼の良さですね。
ゼンマイの芽吹きやアマガエルの鳴き声に春を感じつつ歩き続けます。
ごうくんは木の枝を振り上げ先頭を行きます。気質としてはリーダー肌なのでしょう。やまいも(第3回)の回で先頭に立っていたはっくんも2番手に位置しており、引率が好きな性分は今回からも覗えます。
最後尾を歩くいっくんは、縦笛を吹いています。
なんと彼の特技は笛をふくことだったのです!
それで先程は念入りに手入れをしていたわけですね。
4.野原にて
くんちゃんはスミレの花をみつけて嬉しそうです。
なっちゃんとはっくんは木陰に隠れ、ごうくんが探しています。
それをにっくんが微笑ましく見ています。彼も一緒に隠れているようでもあります。ここでも距離感の近い親しみやすいにっくんの人柄が表れています。
山吹、ちごゆり、フデリンドウと草花が紹介されています。
次は開けた野原に出ます。
ごうくんとはっくんは木に登ってより高いところから眺めを楽しんでいるようです。2人の運動能力の高さと活動的な面が表れています。
心配なのは、同じように木に登ろうと試みているろっくんです。
見ているものをハラハラさせるのがろっくんですね。
大きなヒキガエルを見ながらあるいていると、モンシロチョウかな?
蝶がよっちゃんの右耳にとまります。
周りは微笑ましく見ているのですが、直立不動となっているよっちゃんがまた可愛らしいです。
ヒキガエルに驚いているごうくん、はっくんですが、
にっくんにしがみつこうとしているのはろっくんです。
ビビりなのもろっくんですね。にっくんも少々ビックリはしているようですが。
池でカエルの卵を見つけます。みんなの見立てではさっきのヒキガエルの卵ということです。
いっくんの笛の音に耳を傾けつつ、土筆の生える道を一行は歩きます。
5.小川にて
橋の架かる川にやって来ると、
トノサマガエルが川を飛び越える様に触発されて、
にっくん、ごうくん、はっくんも飛び越えます。
もうこうなると、「自分もやりたい!」と気持ちは強いのが、
ろっくんです。
彼はそこで行動に移すところが素晴らしい。
これまでの経験から保守的になりそうな子もいるかもしれないなか、果敢にチャレンジします。
結果は、
じゃぼーん!
あえなく川に落ちてしまい、心配したトノサマガエルも集まってきます。
にっくんが引き揚げてくれています。
いっくんも駆け寄ります。
6.ろっくん悲劇のその後
タンポポの綿毛が舞い、揚羽蝶が跳び、
パンツ一丁のろっくんが歩きます。
濡れたろっくんのシャツはTの字に組んだ木の棒の先に干されており、
それをにっくんが担ぎながら歩いてくれています。
ごうくんとなっちゃんは濡れたズボンを木の棒に干して2人肩に担いでいます。
いっくんはまた笛を吹いています。
7,昼食
お待ちかねのお昼御飯です。
野原にみんなでまるく座っておにぎりを食べています。
はっくんはなにやら木の実のようなものに手を伸ばします。
それを見てとっくんもおかあさんにねだっているようです。
ろっくんは川に落ちたことをネタにされたのか、頭をかきながら笑っています。
失敗も笑ってのけられるろっくんの人柄というか精神的タフネスさが愛らしい。
ろっくんの服は地面に棒を立てて干されています。
水筒を持っているなっちゃんと、蓋のコップで飲んでいるごうくんはまたもや水筒を巡って一悶着ありそうですよ…。
ここの食事シーンはパズルになっていることから、作者のお気に入りのシーンの1つなのでしょう。
8.食後の愉しみ
みんなで丸く手を繋ぎ、まんなかに手で眼を隠したはっくんがしゃがんでいます。かごめかごめでしょうか?みんなで遊んでいるシーンでおしまいです。
タンポポにとまるカエルや揚羽蝶、地を這うアリやテントウムシも描かれ春の陽気が伝わってきます。
【読み聞かせ】
出掛けていくワクワク感や、今回の主役はやはりろっくんでしょうか。
彼の勇姿、彼の川に落ちちゃうシーンが見せ場ですよね。
そこまでの盛り上がりをいかに持って行けるか、聴き手も楽しみにしているところです。
【(独断の)対象年齢】
いつもと同じく1歳半くらいから楽しく読めると思います。
【書誌情報】
14ひきのぴくにっく
いわむら かずお
童心社
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