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容器でドリンクの味が変わる謎

ビール党のこだわり

「ビールは瓶に限る」

「缶ビールより瓶ビールのほうが美味い」

などという意見を聞くことがあります。


瓶と缶と樽で比較(1) 【酸化について】

醸造酒であるビールの敵は『酸化』です。

出荷時はビールは酵母の力によって組成が固定され安定した状態になっているが、酸素に触れることで酸化が始まり、味が変化してしまいます。

この変化のリスクが、容器によって異なるようです。

ビールを容器に充填するときに、多少なりとも容器に酸素が混入します。容器の液体量に対して酸素量の割合が多いほど、酸化のリスクは高まりますので、瓶や缶と比べて樽は液体量が多くて酸素の割合が低いことから酸化に対して有利なようです。

瓶と缶の比較では、瓶は栓をする前に水をピュッと吹き付けて泡立たせ、その泡が空気を追い出して栓をするので、酸素はほとんどない状態になるようです。

一方、缶は巻き締めしてパッケージするので、瓶と同じやり方ができないというのです。炭酸ガスを吹きかけて酸素を追い出す工夫をしていますが、瓶に比べると酸化はしやすいといえます。


瓶と缶と樽で比較(2) 【温度について】

温度については、高温になるほど酸化が進みます。その点でも不利なのは缶なのだそうです。

「缶は使い勝手がいいため、車のトランクにケースごと入れっぱなしにするなど、温度の高いところに無造作に置かれがち。買ったらすぐに冷蔵庫で保管してください」

日光もビールには悪影響となります。ビールは光に当たると、獣の毛皮のような「日光臭」を放つそうなのです。

「ビール瓶の多くが茶色なのは、少しでも日光の悪い影響を避けるため。ただ、それでも瓶は光の影響を受けやすい。実はコンビニやスーパーの照明も危険。照明のすぐ横に陳列されたビンのビールは、正直お勧めしません」

酸化で不利な「缶」、日光で不利な「瓶」。そうすると「樽」がベストと思われそうですが、瓶や缶の良さもあるようでして

「瓶や缶からグラスに注ぐと、泡が立ってビールの中のガスが抜けて、飲み口がマイルドになります。ビールを注ぐときは泡を立てないのがマナーとされていますが、マイルドが好みの方は、むしろ大胆に注いだほうがおいしく飲めます」

そして

泡と刺激感を楽しみたいのなら、樽生がおすすめだそうですね。

しかし容器は販売形態や流通環境によって移り変わってきたようです。

バブルの最中だった1987年、全ビールの容器別売上比率は、瓶が70.2%、缶が22.4%、樽が7.4%と、瓶がダントツだった。しかし、1995年に瓶42.5%、缶が45.3%と逆転した。背景にあるのは、コンビニやスーパーの出店増と酒類小売規制の緩和だ。かつてビールは酒屋が各家庭に配達するものだったが、コンビニやスーパーで自分で買って帰るものへとシフトして、持ち運びやすい缶が台頭した。
飲食店でも、瓶は樽に取って代わられつつある。樽が瓶を逆転したのは2005年(瓶27.0%、樽29.4%)。直近の2017年は缶48.3%、樽35.6%に対して瓶16.1%と、凋落傾向は明らかだ。

確かによっぽどな理由がない限り、同じ商品なら瓶より缶を買い求めることが一般的でしょう。


若者の酒への意識の変化

今の若者にとって酒のニーズが変わってきているのですね。

「若い消費者がお酒に求めるものが変わりつつあります。昔はお酒を飲んで酔うことも大きなニーズでしたが、いまの若い世代はお酒を飲み過ぎることをカッコ悪いと考える。現在は、相手とコミュニケーションしたり、本音を語りあって理解し合う時のツールとお酒を位置づけています。

そこでお酒をコミュニケーションツールと位置付けて

"さしつ、さされつ"が出来るように瓶の商品を強化しているようですね。


人口減と瓶の関係

また瓶にとって福音は、

「樽はメンテナンスが必要で、注いで出すときにも手間がかかります。一方、瓶は冷やして栓を抜けば提供できます。オペレーション改善になるので、飲食店さまに喜ばれています」

と、人口減によって人手不足が慢性化している飲食業界において、これから瓶が復権するかもしれません。


瓶の憂鬱

しかし瓶にとって将来が希望に満ちているとは言い難いようです。

クラフトビールが流行しており、多くのクラフトビールは瓶で販売されているのが主流でしたが、現実的には『瓶は捨てるのが大変』という声がありました。流通においても、小瓶は334mlなのに、背が高いために500ml缶の棚を取るという問題があります。そのような理由から世界的にはクラフトビールも缶へのシフトが進んでいるのが現実なようです。

品質の安定性という面では、光への曝露だけを気をつければ断然、缶より瓶といえそうですが、重量や割れる危険性などから瓶は敬遠される面があり、手軽な缶になってしまう点は否めません。


コーラの場合

コーラも「瓶の方が缶より美味しい」といわれる飲み物の1つです。

コーラ大手の日本コカ・コーラ広報によると、

「コーラは、どこの国で飲んでも全く同じ品質、中身になっています。当然、味も変わりません」

ということです。
容器が違っても中身は変わらないということになります。

飲んだときに瓶のほうが炭酸が多く感じるのは、容器の材質によるのだそう。

以下の解説が参考になりました。

コーラにはペットボトルもありますが、缶と比べると二酸化炭素が溶け出しやすい材質で、時間の経過とともに炭酸が抜けやすいといいます。そのため缶よりも炭酸が弱く感じるということ。同じことが缶と瓶の比較にも通じ、缶よりも炭酸を変化させる要因の少ないガラス瓶のほうが炭酸が抜けにくいということなんです。


コーラの容器での違い

瓶が美味しいと感じる理由のひとつ、瓶は190mlと少量で、おいしいと感じている間になくなってしまうのに対して、缶の350mlでは量が多いので途中で飽きてしまうから、というのは私はよくわかります。

炭酸水でも500mlと比べて1000mlは割安でお買い得なのですが、いっぺんに飲みきれないので、冷蔵庫に入れておくとどんどん炭酸が弱まっていき、終盤はただの水に近づき残念な状態になることが大容量のデメリットです。

ところで味の違いについて、清涼飲料水評論家(って清涼飲料水評論家っていらっしゃることに驚きました)の清水りょうこさんによると

瓶入り製品がおいしく感じるのは、ガラス特性、「内容物に影響しないこと」と瓶の「気密性の高さ」のようです。一方、缶は機密性が高いのですが、直接口を付けて飲むと、金属が口に触れたり、金属の匂いを感じるため、味が違うと感じるのかもしれないようです。

またペットボトルのほとんどは空気を通すので、炭酸ガスなどが少しずつ抜けていくそうです。そのために味も変わりやすいようです。

こちらでもビール同様に、味の品質としては瓶が優秀で、缶、ペットボトルと続くようです。しかし扱いやすさは全く正反対の序列になるようです。


救世主となるポカリ

自宅で水分補給が必要な世帯に向けて「ポカリスエット」の無料配布を始めたというニュースは、多くの方々に賞賛される話題となりました。


ところでポカリスウェットといえば

缶とペットボトル、そして粉があるのですが、どれが美味しいとかの話題を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

私が子供の頃もこだわりを互いに述べ合う光景がよくありました。

これに関連する話題で興味深いことがわかりました。

とある方が

「缶のポカリは一気に飲めるけど、ペットボトルのポカリはなぜか一気に飲めない。味が違う気がする」

ということに気付いたそうで、販売元の大塚製薬に訊ねたところ、大塚製薬はそれについて

「缶とペットボトルは容器の素材の特性上、原材料の一部が異なります」

と回答しました。

具体的な違いは「果汁」だそうで、缶とペットボトルの表記はどちらも果汁ですが、実際にはその内容が異なるようです。

 容器によって原材料が変わる理由は、容器包装の素材が持つ特性によるようです。

粉末のポカリでは「金属以外の容器をご利用ください」と注意書きがあり、その理由として「ポカリスエットの成分が金属を錆びさせてしまう可能性がある」との記載があることから、ここにはポカリの性質が関係しているようです。


1980年にタイムスリップ

ちなみに1980年の発売時の味や材料に近いのは缶とペットボトルですと『缶』だそうです。

理由は、発売時からある缶(と粉)は基本的に変更はしていないそうです。


おわりに

ビール、コーラともに充填される際は同一でも、容器の素材で味が変わってくるのはあながち間違いでは無かったようです。

それに対して、ポカリは容器によって製造段階で違いがあるようで、容器の性質だけでない味への違いが生まれそうです。

さらに前述の療養者への水分補給はもとより、熱中症対策にも活躍するポカリですが、薄めてならないことを公式ホームページでも注意喚起しています。

ポカリスエットは、「水分とイオン(電解質)のスムーズな吸収」を探求し、現在の内容成分に決定しています。ポカリスエットが甘いのは、水分の吸収をより速くするのに適した糖分を、適切な濃度で配合しているからです。水で薄めてしまうと「水分とイオン(電解質)のスムーズな吸収」が損なわれてしまうのでおすすめしておりません。

カラダに吸収されやすい飲み物だけに薄めると効果が鈍るのですね。

しかしお酒のポカリ割は避けたいですね。水などと比べ吸収されやすいことから酔いやすくなってしまいますから。

手元に容器の異なる同一飲料が並んでいる時は、味やテクスチャの違いを楽しんでみるのも楽しいかもしれません。


おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。