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奈良出張記(2)

 中高生のころからひとり旅が好きでカプセルホテルが定宿だった。一度だけユースホステルに泊まった。

 新年を大阪のカプセルホテルで迎えたこともある。

 ソウルもことばが出来るようになるとソウル駅裏のサウナが定宿になった。二段ベッドが並ぶ。1泊16,000ウォン(1600円)は破格だった。

 一方で北朝鮮に行くと特級ホテルに泊まる。平壌なら高麗ホテル、羊角島国際ホテル、普通江ホテル。特級である理由は、外国人と市民を隔離するところに目的があるとはいえ、その国の首都の最高級ホテルを制覇しているのは小さな自慢だ。しかも北朝鮮の。

 日本のホテルは全然ご縁がなかった。講演をするようになってから、その土地の一流ホテルで講演することになった。羽田日航ホテルが初めてだった。高山は温泉旅館をとってもらった。陣太鼓が鳴り迎えられ(午後9時のことだった)、露天風呂に入っていざ寝る時になって、どのボタンを押しても部屋が真っ暗にならなかった。帰り道は駅までセンチュリーで送ってもらった。

 大阪ヒルトンホテルは痛快だった。アメリカ資本のホテルでならず者国家とされる北朝鮮の話をするなんて思いもしなかった。

 今回は奈良ホテル。タクシーが山に入っていくとそこにホテルがあった。クラシックホテル。

 荷物を降ろし、担当者にあいさつをして名刺交換をする。「あとは座っていたら」と勧められるけど、いそいそと動いてしまうのは貧乏性。機材をチェックする。スライドが用意されていない!トラブル発生。

 スライドある無しだとぼくの講演の出来は全然違ってくる。しかし一流ホテルのすごみはトラブルのあった時。あっという間にスライドが用意され、HDMIケーブルをつなぐが画面が映らない。「ピンケーブルありますか!」と叫ぶように言うと冷静なホテルマン氏は「ありますよ」と持ってきてくれ、スライドは準備が出来た。会の始まる5分前のことだった。

 そのホテルマン氏の笑顔を見て、ぼくは安心したのだ。ああ、何とかなる。胃が少し痛く、昼食は少し残したけど、ぼくは過去最高の講演をすることが出来た。

 講演の良しあし、特に今のクライアントに言われているのは時間だ。1時間半。プラスマイナス5分まで。

 初めのころはこのあたりが実にへたくそだった。だが今回は神がかっていた。1時間30分5秒。あれだけドタバタあってこれはすごい。

 講演を終え、拍手に一礼しタイマーを見て、後ろを向いてガッツポーズをした。
 奈良ホテルのホスピタリティあっての今回の講演。「また泊まりに来ますね」とは言ってはみたけれど、さていつになることやら。

■ 北のHow to その149
 奈良に行ったなら、奈良ホテルに泊まりましょう。大阪なら大阪ヒルトン。ペーペーのぼくがそれなりのクオリティの講演が出来るのも、みんないいホテルマンと地方の担当者の方のおかげです。


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