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入社10年目管理職になるためのヒント パート1‐⑨

こんにちは、茶っプリン@中小企業診断士 です。

新年になりました。皆さんはどんな年末年始を過ごされましたか?
私は、もうすぐ受験を迎える息子が冬季講習漬けだったので、初詣は近場の神社にお参りしたり、一人で実家に行ったりと、まったりした時間を過ごしました。あとは部屋の片付け。まだまだ綺麗になったとは言えませんが、少し整理できて、気持ちもスッキリしました。今年は年男。ウサギらしく、飛び跳ねる一年にしたいと思っています。

さて、1年の計は元旦にありと言いますが、皆さんは今年の計画を立てましたか?今回は、会社の進む方向を決める「事業計画の立て方」のお話です。

前回までのあらすじ

前回までの相談内容とあらすじはこちらをご参照ください

X社社長の悩みとコンサルの提言内容

事業計画についての相談

コンサルタントBは、X社社長に面談を依頼された。

社長「銀行から資金を調達するにあたって、事業計画を作る必要がありますが、作り方がわからなくて…。Bさんたちは補助金申請なんかでよく事業計画を作っていると聞いたので、教えてほしいんですよ。」

B「総務部長は、これまで事業計画を作られたことはないですか?」

総務部長「いや、お恥ずかしい話なんですが、今まで親会社に言われるがままに動いてきたから、誰も書いたことがないんです。」

B「そうでしたか。実は、事業計画は事業を展開する上でとても役に立つツールで、上手に使いこなせば、素晴らしい経営のサポーターになります。今回、資金調達がきっかけになりましたが、それ以外の時にも、常に事業計画を策定して、それに基づいて経営されると、良いサイクルができると思います。」

社長「へ〜、そんなもんですかね。」

総務部長「でもBさん、私、年末年始の休み中に、事業計画の作り方の本も読んでみたんですよ。でも、何か難しい言葉が並んでいて、もう全然書けるイメージが湧かなかったんです」

B「たしかに本を読んでも、なかなかわからないですよね。ただ、事業計画って、ポイントはある程度決まっているんです。大雑把に言うと、次のような点です。」

そう言うと、コンサルタントBは紙を取り出し、さっとペンを走らせた。

  1. 自社の理念や事業にかける思い

  2. 事業環境の分析

  3. 課題・リスクと解決策

  4. 戦略・目標・行動プラン

  5. 投資計画

  6. 収益計画

  7. 資金計画

B「細かい点を挙げると、他にもたくさんありますし、別の切り口もあるのですが、おさえておかなければならないのは、だいたいこの7点に集約されます。」

社長「もう少し具体的にイメージできると良いね。」

B「では、船の航海に例えてみましょうか。」

Bは、X社社長と総務部長がイメージしやすいよう、航海を例に説明をし始めた。その概要は、以下の通りである。

1.自社の理念や事業にかける思い

船で遠くに行く場合、目的地と目的がある。例えば、目的地がアメリカだとして、目的はアメリカを旅したいのか、荷物を運びたいのか、途中で探検をしたいのか、それによって準備するものは全く違ってくる。自社が「どこに向かっているのか」「どんな思いを実現したいのか」がまず重要である。

2.事業環境の分析

目的地と目的が決まったら、次は自社の置かれている環境を分析する。目的地までの距離、気候、波の状況、持っている船の大きさや強度、重い荷物の有無、乗組員の数・年齢層、周囲を航行している船の様子など、様々な角度から分析する。

ビジネスの場合は、自社、顧客、競合他社の分析や、自社の強み・弱み・機会・脅威、経済や技術環境の変化、法規制の状況なども加味する。

3.課題・リスクと解決策

太平洋を航海するのに、小さな釣り船で行くのは無謀だ。大きい船を買うか、最低でも船の補強が必要になる。目的に向かうにあたって、解決しておく必要がある事柄が「課題」だ。また、航路上に台風が発生すると、非常に危険性が高まる。そうした「リスク」も想定して、どう回避するかも検討する。ここを楽観視すると、途中で遭難してしまう。

4.戦略・目標・行動プラン

アメリカに無事に到着するために、どういう航海プランを立てるかが重要になる。例えば、天候が良ければ一気に進み、荒天が予想されるときは多少遠回りになっても迂回する。こうした方針を決めるのが「戦略」だ。また、いつまでにどこまで到達するかを決めるのが「目標」、そのために必要な準備や人の配置などを行うのが「行動プラン」である。

5.投資計画

計画した内容を遂行するにあたって、お金をかけて準備をする必要があれば、何にどれくらいお金をかけるのかを決めるのが「投資計画」だ。もし大きい船を買い直すのであれば、非常に多額の資金が必要になる。日々の運営や人件費に必要なお金についても、投資計画の対象として考えるとわかりやすい。
※但し、固定資産にならない費目は、投資計画に含めず、収益計画の経費として捉えることが多い。

6.収益計画

このプロジェクトで、いくら収入があり、いくら支出があるのかを、数表でまとめる。航海の場合はイメージしにくいかもしれないが、経費は毎日かかるだろう。その経費は結局誰かが負担することになるので、元々いくら資金があり、トータルでいくら経費がかかるのかの計画を立てておく必要がある。ビジネスの場は、想定される売上や原価、経費、支払利息なども含めて、「3年分の年間収支計画」と「1年目の月別収支計画」を立てることが多い。

7.資金計画

以上の計画を、すべて自己資金でまかなえれば良いが、X社のように銀行から借入が必要になるケースも多い。自己資金でいくら負担し、いくら借入をするのか、その資金で将来どれくらいの収益が得られるのか、などを検討する。貸した方は「貸したお金が、何年で戻ってくるのか」「本当に返してもらえるのか?」が心配なので、できるだけ安全な範囲で貸そうとする。すると、思っているより貸してもらえない可能性もある。お金を借りるには、利息の支払いも必要になるので、それも加味する。
※新株を発行して増資するなどの方法もあるが、ここでは割愛する。


コンサルタントBは、ここまで説明した上で、さらに付け加えた。

銀行は1〜5の計画の納得感と6の収益計画の妥当性を、細部まで確認した上で、7の資金計画に無理がないか審査します。また、融資後も、計画通り進捗しているかを、事あるごとにチェックしてきます。融資が焦げ付いたら、一大事ですからね。事業計画は、チャレンジングなものでないと会社は発展しませんが、一方で、達成可能な内容でなければ意味がありません。その辺りのさじ加減が難しいところでもあり、経営の醍醐味でもありますね。」

社長「なるほど、事業計画のポイントがよくわかりました。面白いけど、考えなければならない点が山ほどあるな…」

B「はい、事業計画を立てるのは面白いのですが、骨が折れる作業でもあります。でも、だんだん自社の状況がクリアになってきて、楽しくなってきます。」

総務部長「社長、イメージは湧いたのですが、当社の人員だけで事業計画を作るのは難しそうです。。」

B「私たちコンサルタント(中小企業診断士)は、補助金申請に限らず、経営に必要な事業計画作成のお手伝いができます。また、計画を形だけ作って、実行できない会社も多いんです。計画策定後の伴走支援も、私たちの大事な役割です。」

社長「そうだな、検討してみようかな」

B「なんと言っても、事業計画に思いと魂を込め、目的を成し遂げることが重要です。ぜひ社長の熱い思いを、私たちにぶつけていただき、お力になれればと思っています。」


いかがでしたか?
中小企業庁委託調査によると、事業計画を立てたことがある事業者の割合は53%に留まるそうですが、立てたことがある事業者の74%が「経営方針と目標が明確になった」と回答しています。

たかが計画と侮れないツール、小さな事業にも十分活用できますので、ぜひご自身の事業のヒントとして、トライしてみてくださいね!

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