見出し画像

30 マザコン

 出産後、1か月ほど経った頃、私はマッサージに行きたくて仕方ありませんでした。妊娠中から腰も痛いし、授乳や家事育児で疲労がたまっていました。体がキツイと心もキツイのです。昼夜関係なく3時間おきの授乳、その合間におむつ、お風呂、寝かしつけ、上の子の世話、そして家族の食事、洗濯、掃除・・・もう全く休む暇はありませんでした。夫が早く帰ってきて家事を手つだうことは、ありません。機嫌が悪くない日があれば、それだけでありがたいと思うことにしました。

 この頃は、だいたい家では機嫌が悪かったように思います。常に眉間に皺をよせていました。そして子どもに対してだけは、帰宅後すぐはベタベタしますが、すぐに自室に行って携帯ゲームをするか、再び出かけていきました。


マッサージに行く許可を取る


「ごめん、もうキツくて。来週マッサージに行きたいんやけど、いいかなぁ。もう腰が重くて。」
モラ夫「別にいいよ。わかった。こどもたちの面倒見てたらいいんやね」
「ありがとう。じゃあ日曜に予約入れてみる」
モラ夫「ミルクとかいろいろ準備していってね。俺わからないから」

 今なら、準備も後片付けも一切する気がないこのセリフに腹が立ったかもしれません。当時は、夫の洗濯物も私がたたんで、クローゼットにしまっていました。でなければ、ずっと床に放置されるのです。甘やかしと言われるかもしれませんが、何を言っても変わろうとしない人に言い続ける労力は、私に残っていませんでした。さっさと片づけてきれいな家で過ごす方がストレスはありません。

なぜかついてくる=行動チェック


 マッサージに行くことを反対されるのでは、とハラハラしていましたが、快く承諾してくれて、その時は嬉しく思いました。夫は文句は多いけれど、話せばわかってくれる時もごくたまにあるのです。
そして産後マッサージに行く日を心待ちにして、当日の朝がやってきました。


モラ夫「どうやって行くん」
「電車で行くよ。じゃあ行ってくるね」
モラ夫「一緒に行こうか、心配やから」
「え・・・(何が心配なん?)」
 

 正直、その申し出は嬉しくありませんでした。やっと一人になれるのに、ついてこられては、お店に入る瞬間まで赤ちゃんの面倒は私が見ることになります。一人で家のことを忘れてゆっくりしたかったのです。そして、断ったら夫はなんて言うだろうか、また不機嫌になるだろうか、といろんなことが頭を駆け巡りました。
「でも待たせたら悪いからいいよ、一人で行けるし」
モラ夫「いや、別にええで」
(親切でついて来ようとしているのだろうか。単に子供二人を一人で面倒見るのが不安なのだろうか)
モラ夫「ミルク持っていけば大丈夫やから。ついでに上の子連れておもちゃ屋かゲームセンター行くわ」
「・・・そう、わかった」
 

 そして夫と、まだ赤ちゃんの息子と、じっとできない年齢の娘が店までついてくることになりました。娘は電車でお出かけできて楽しそうなので、結果的にはよかったのかな、と思うことにしました。赤ちゃんは、夫が抱っこすると泣くので、必然的に私がこども二人の面倒を見ながらの移動になりました。バスや電車などの公共の場で、音をたてたり声を出したりすると、たちまち夫は不機嫌になります。だから、どうか子どもたちが騒ぎませんように、とドキドキしながら移動しました。叱るときの声のトーンやセリフなども、あとからダメ出しされるのです。子どもっぽい話しかけ方もダメだし、娘の機嫌を取るために面白おかしいお話をしてもダメなのです。物語のように、良識ある、静かな物腰でいないと、すぐに注意されました。

モラ夫「みんな見てるで、恥ずかしいで。そんな子供向けの話し方して。あほかと思われるで。なんで普通に話できないの?」と。

モラハラ夫は外面が良く、妻の言動は恥さらしだと思っています。そして馬鹿にするのです。

モラ夫「じゃあゆっくりしてきな」
「ありがとう」
「ママ!ばいばーい」

そしてなぜか義母が来る

 娘は喜んでいました。おもちゃ屋さんかゲームセンターが子どもは大好きなのです。私はそういう場所で時間をつぶすのが苦手で、それより公園とか外の方が開放的で好きです。だからたまに夫が連れていくゲームセンターも、気分が変わっていいのかもしれない、と思うことにしました。
30分が過ぎたころ、チラッと店の外を見ました。すると、なぜか義母も来ていたのです。義母が赤ちゃんを抱っこし、娘は買ったおもちゃを早く開けたくて騒いでいるようでした。普通、息子の妻のマッサージに来ますか?

(なんで?お義母さんまで呼んだら、待たせることになるやん。余計に気を使ってゆっくりできない。私だけ自分のしたいことをして、そのために義母や夫や子供たちを待たせることになってしまう。30分もある。ああ早く終われ。赤ちゃんが泣きだしたらみんな疲れてるし不機嫌になっちゃう)
 
 言いたいことが頭の中をぐるぐるして、せっかくのマッサージなのに全くリラックスできませんでした。そしてマッサージが終わると、私は急いで外に出ました。
「終わったよ~ありがとう!」
できるだけ平静を装って言いました。
モラ夫「・・・うん」
夫は不機嫌でした。
「あ、ミルク飲ませた?一時間だけど大変だったでしょ」とできるだけ明るく声を掛けました。
モラ夫「・・・とっくに」
 

 義母も疲れているようで何も言いません。なんて言って呼び出したのでしょうか。
「お義母さんもわざわざ来てくださったんですね、すみません」
元義母「いやなんか、あなたがマッサージ行くから来てって呼ばれたのよ」
「そうですか・・・すみませんまだ赤ちゃん小さいのに勝手なことして」

(やっぱり夫だけで子どもの面倒を見るのは無理だったんだな)

出かけてもいいけど家事育児は完璧にしてね という束縛

 マッサージ行ってもいいよと言ったのに、全然面倒見てくれないし、すぐ義母に頼って最後は不機嫌ってなんなのでしょう。結局、私が楽しむことが許せないのでしょうか。母親なのに子供を放置して楽しむのは罪とでも言いたいのでしょうか。
私は、疑問と罪悪感で一杯になりました。その後、夫が服を見たいというので、みんなで夫の買い物に付き合うことになりました。機嫌を直してくれるなら、その方がマシです。ぐずる赤ちゃんを抱っこして、夫の買い物にみんなで付き合いました。
帰りはへとへとです。すっかり日も暮れて、夕ご飯をどうするか、考えて提案しなければなりません。食べに行くのか、買い物に行って作るのか、お義母さんも招待するのか。そもそもその元気が私にあるのか。すべて私で段取りを決めなければいけません。どっちにしてもゆっくりすることは永遠になさそうでした。
 ネガティブな感情がぐるぐる。楽しんだ後は罪悪感。いいことだけで一日終わることはないのです。夫はいつも自分中心で、私だけが楽しむことは許せないのです。
 このように、二人目を出産した後は、私が一人で自由に買い物に出かけたり映画を観たりできる日は一度も来ませんでした。


よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは出版費用に当てたいと思います。すこしでも世の中のモラルハラスメント 被害者の参考になれば嬉しいです!