[救急] 血管作動薬 / 昇圧薬① 考え方-1

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[1] 血圧が低下したときに

いわゆるショックを考える。
ショックの際にはショック分類を考慮するが、基本的には血圧を上げるためには輸液が重要。循環血液量減少性ショックでも血液分布異常性ショックでも血管内には絶対的 / 相対的な体液不足があるため、これを細胞外液で補充することが必要である。閉塞性ショックではドレナージが重要であり、神経原性ショックではアトロピンの投与で血圧を上げるわけだが、やはり頻度としても「基本は輸液」で良いと思う。

輸液+αで検討すべき昇圧として血管作動薬がある。カテコラミン作用の違いによってそれぞれの特色が出てくる。まずはカテコラミン作用を検討する。

[2] カテコラミン作用

カテコラミン受容体はGタンパク共役型受容体であり、7回膜貫通型の構造をとる。カテコラミン受容体としてはα1、α2、β1、β2、β3が知られている。
このうち、循環動態に大きく作用するのはα1、β1、β2の3種類である。細かい話がいろいろあるらしいが、ざっくりと強心作用と血管収縮作用に着目する。

α1作用:血管収縮
β1作用:心収縮力↑、心拍数↑
β2作用:血管拡張、気管支拡張

フェニレフリン(ネオシネジン®)とイソプロテレノール(プロタノール®)以外はα作用とβ作用を併せ持っており、それぞれの強さの割合がすこしずつ違う。
α作用とβ作用の強さは以下の図の通り。

画像1

手術中の低血圧によく用いられるエフェドリンは直接的なα1、β作用があり間接的にノルアドレナリンを放出する機序もあるためやや複雑であり、上図に含めていない。α刺激としてはノルアドレナリンより弱く、β刺激としてはドブタミンより弱い。

[3] カテコラミンの使い分け

上記の図から考えて、最も純粋な血管収縮薬はフェニレフリン、最も純粋な強心薬はイソプロテレノールとなる。
しかし、救急外来でこれらの薬剤を使うことは少なく、通常血管収縮作用を求めるならノルアドレナリン、強心作用を求めるならドブタミンを用いる。フェニレフリンとイソプロテレノールがpureすぎるためである。

<α作用> 血管収縮
フェニレフリンを用いて血管収縮をさせると、圧受容器反射によって反射性徐脈となる可能性がある。また、末梢を強く締めるために心臓にとっては後負荷が高まり、1回心拍出量が低下する。ノルアドレナリンはβ1作用(心収縮↑+心拍数↑)が少しあるため、反射性徐脈と1回心拍出量低下がほぼ起きない。よって、循環不全時に用いる血管収縮薬のスタンダードはノルアドレナリンとなる。

<β作用> 強心+血管拡張
イソプロテレノールを用いると、pureなβ作用を発揮して血圧が低下することがある。何故かというと、β1刺激で心拍出量は上がるのだが、β2刺激で血管拡張が起きてしまい血圧が低下してしまう。
イソプロテレノール以外の薬はα作用を持つので、α1刺激による血管収縮でβ2刺激の血管拡張効果は見えなくなる。
また、イソプロテレノールはβ刺激作用が強すぎるために頻脈や頻脈性不整脈を起こす可能性がある。よって、循環不全時に用いる強心薬のスタンダートはドブタミンとなる。ただし、すでにショックになっている症例ではやはりβ2刺激の強いドブタミンは単剤で使ってはいけない。ノルアドレナリンやドパミンで末梢を締めて血圧を少し上げておいてからドブタミンを投与するべきである。

<敗血症性ショックの時には>
上記の原則でα作用とβ作用の兼ね合いを考えて昇圧薬を選ぶが、敗血症性ショックの時にはノルアドレナリンの方が良い、という結論が出ている。
目標としては平均血圧で65mmHg以上を目指すとよい。

[4] まとめ

とりあえずの理解として、以下のように考える。
✓ 強心薬として心拍出量を上げたいときにはドブタミン
✓ 血管収縮薬として血管抵抗を上げたいときにはノルアドレナリン

ドパミンとアドレナリンはαとβのバランスがイレギュラーなので、次回にまとめる。

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