[救急] 血管作動薬 / 昇圧薬② 考え方-2

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[救急] https://note.com/putinorder/n/ncebe96dbf677
[血管作動薬①] https://note.com/putinorder/n/nd83141a09cb8
[血管作動薬③] https://note.com/putinorder/n/ne7975954c14a

[1] ドパミンの特殊性

前回、カテコラミンはフェニレフリンとイソプロテレノール以外はα刺激作用とβ刺激作用の両方を持つと学んだ。
カテコラミンのうち、ドパミンはかなり特殊な立ち位置にある。というのもドパミンはドパミン受容体への作用を持ち、ノルアドレナリンに代謝されてα1、β1、β2の刺激作用も持つからである。さらに、どの受容体への作用が強いかが投与速度によって変わってくる、という破天荒さである。

1) 低流量 1〜3γ:利尿作用
低流量では血管平滑筋に存在するD1ドパミン受容体に作用し血管拡張を起こす。D1受容体は腸間膜動脈と腎動脈に多く発現しており、腎動脈拡張作用を持つ。
カテコラミンのくせして強心作用も血管収縮作用もほぼないと考えられ、利尿目的に使われる。
と、されていたが、腎保護作用・利尿作用があるのかはかなり疑問視されている。おそらくその作用はないだろう、というのが現在の定説となりつつある。

2) 中流量 3〜8γ:β作用
ドパミンが代謝されてノルアドレナリンとなる。
中流量では主にβ1刺激による強心作用がメイン。
用量を増やしていくと徐々にα作用も増していく。

3) 高流量 8γ〜:α作用
高流量になるとβ作用は強くならずにα作用がどんどん前面に出てくる。
これは代謝されてα作用の強いノルアドレナリンが増えてくるためだと思う。
最大で20γまで使用しても良いが・・・

[2] アドレナリンの特殊性

アドレナリンはノルアドレナリンと同等のα作用を持ち、ノルアドレナリンよりも強いβ作用も持つ。ノルアドレナリンはほとんどβ2作用を持たないが、アドレナリンはβ1もβ2も強い作用を持つ。
αもβ1もβ2も強いため、強い血管収縮作用、強心作用、気管支拡張作用が発現する。カテコラミンは基本的には希釈して用いるが、心停止時のアドレナリンだけは希釈せずに用いる。
アナフィラキシーにもアドレナリンを用いる。この場合は原液を0.3mg 筋注する。

[3] ガンマ計算

もともと1μg=1γ、と決められている。
医療の世界では1μg/kg/minを1γと呼ぶ慣習になっている。このややこしい単位は例えば少女と力士を同列に語るのは乱暴では、という発想から来ている。
体重や身長が全く違うのに、同じ10mg ivではどこかおかしいことになりそうな気がする。そこで、投与量を体重で換算する単位としてガンマが作られた。

これは次のように考える。
1γ = 1μg/kg/min = 60μg/kg/hr = 0.06mg/kg/hr

シリンジポンプを使うときにはmgではなく、mL/hrで設定するため、mgをmLに換算する必要がある。
小学校からちょっとずつ習う質量パーセント濃度を考えると、1% = 1g/100g = 1000mg/100mL、つまり10mg/mLが1%となる。つまり0.3%ドパミンの場合は3mg/mLである。
体重50kgの人の場合は、0.06×50 = 3mg/hrが1γであるので、0.3%ドパミンは1mL/hrが1γとなり非常に分かりやすい。

次回は各々の薬の通常量などについてまとめたい。

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