古き良き日本の魅力とeスポーツの融合 - BURNING COREが富山で始める新たな挑戦
プロローグ
私たちの世界は、革新と伝統の間で絶えず揺れ動いています。特にeスポーツの分野においては、リアルとバーチャル(オンライン)のシーンが交差することで、このダイナミズムが顕著に現れていると感じています。
私自身、約7年間、地方を拠点にしてeスポーツ事業をおこなってきました。その中で、例えば富山県高岡市の伝統産業である「高岡銅器」の職人さんらに記念品を作ってもらったり、老舗酒蔵でオールナイトイベントを行ったり、eスポーツが日本の伝統とどのように調和できるかについて、常に興味を持ってきました。
今回紹介するプロジェクトは、その日本の伝統を「eスポーツチーム」に取り入れる試みでもあります。
自己紹介ですが、eスポーツシーンで活動する日本のプロゲーミングチーム「BURNING CORE」の代表の堺谷です。
チームは主に2つの部門で活動しており、まず格闘ゲーム部門は、今年の夏にリリースされた「ストリートファイター6」を軸としてプロリーグ(SFL)に選手たちが参加したりと現在活動しています。このゲームは初心者にも遊びやすい仕組みになっているので、ぜひ格闘ゲームに興味がある方にはプレイしてみてはどうでしょうか。
もう一つの部門は、グローバルなeスポーツシーンでも代表的なタイトルとして広く知られる「League of Legends」です。国内のeスポーツチームが参加するリーグ(LJL)に、参戦しています。先日開催された世界大会「Worlds 2023」で過去最高の視聴者数を記録するなど、大きな盛り上がりを見せています。この大会の様子はアーカイブでご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。
背景
私は今年の6月にチーム運営会社の代表取締役に就任しましたが、それに先立ち約1年前から顧問としてチームに関わっていました。その当時から、チームには富山県出身の選手もいたため、チームの活動をより広げるために、富山県内での関わり方を模索し始めていました。
「なぜ富山県なのか」という疑問に対して、いくつかの理由があります。まず、今お伝えした通りチームには富山県出身の選手が在籍しており関係性が深いこと。それから、私自身が2016年から地元の富山県を拠点にeスポーツ事業会社「株式会社ZORGE」を設立し、日本eスポーツ連合の富山県支部を立ち上げるなど、地域におけるeスポーツの在り方を探り、地域の方たちからの協力を得てこれまで実施きました。
これらの経験から、富山県にはチームや選手たちを受け入れて、活かすことができる土壌があると判断しました。また、eスポーツの更なる発展においても、地域に対して重要な役割を果たすとも考えて、富山県に拠点を置くこととしました。
プロジェクトの立ち上げ、舞台裏
拠点を富山県に移すにあたって、今年の春頃から本格的に県内の複数の地域で検討をスタートしました。拠点移転の目標時期は選手の移動の負担も少なくするためにリーグのシーズン等を考慮して2024年10-12月頃を目標としました。
(参考リンク:東京都で活動していた際のゲーミングハウス)
建屋の候補もこれから、ただ場所を作っても地域に拠点を移す利点を得られないので今後のチーム活動を進めていく上でその地域での関係性や協調体制、チームの更なる成長が想定できる環境など、それらを検討してからの拠点整備となると、かなりタイトなスケジュールで更に半年程度後ろ倒しで整備することも考える必要もある状況でした。
ただ、刻一刻とリーグの体制やゲームタイトル等状況も変わったりする業界でもあるなか、後ろ倒しにすると今後の計画も立てにくいと思い、年内の目標に向けて整備したいという想いが強かったです。そんな状況のなか、ここではどこかは挙げませんが、短い時間でしたがクイックに対応していただいた自治体や商工会議所、民間企業等、ほかの地域で検討していただいた皆さま、本当に有難うございました。
そしていくつか話を進めているなかで、最終的には、まちづくり会社との縁を通じて、滑川市の市役所関係者にご紹介いただいたことが大きな転機となりました。これまで県内の複数の自治体、周辺だと魚津市や上市町などとeスポーツ事業を行ってきましたが、滑川市でこれまでeスポーツ関連の事業を行ったこともなければ、自分たちと関係性のある事業者も居なかったりと、正直考えもしなかった地域でした。
滑川市は県中央部に位置する人口約3万人のコンパクトな都市で、ホタルイカや海洋深層水など豊かな海の資源を有し、3,000メートル級の北アルプス立山連峰を望む自然に恵まれた地域で、リフレッシュしてパフォーマンスを発揮する意味でも面白いと思いました。
滑川市の海岸沿いには、「瀬羽町通り」という大変趣のある通りがありまして、ここは文化財の建物がいくつか立ち並んでおり、映画のロケ地として使われたり、ここ近年は若い方たちが人気のカフェや雑貨屋さんをやっていたりと県内でも珍しい雰囲気のあるエリアです。
そんな瀬羽町通りで、文化財の登録に向けて改修中の建物があると聞いて足を運びました。
そこは、築104年の歴史を持ち約30年間放置されていた建物で、当時は下駄を販売したりと商店として栄えていた建物でした。かつての繁栄を物語る貴重な遺産であり、改修は進んでいましたが、その後の活用の方法に課題が残されていました。
そんな課題よりも、この雰囲気に凄い魅力を感じて、初対面の地主さんにその場で「ここに、eスポーツチームの拠点を置きたい」と図々しくも、すぐにお願いしたのを今でも覚えています。
瀬羽町通りは江戸時代には宿場町として栄えた過去もあるのですが、実際に拠点を整備するとなるとゲーミングハウスも併せて準備することも必要で、日本各地・海外からもチームと契約した選手たちが集まり、ここでシーズン中に寝泊りして大会に参加することは、どことなく現代の宿場町というのをストーリーも感じます。
地域の、通りを散歩するおばあちゃんや、近所の歴史ある方の家のなかを見せてもらって話を聞いたりそういう機会もあり、そんな話の中で印象的だったのが「最近若い人たちが足を運んでくれるようになって通りの雰囲気も凄い変わって嬉しい。あと、若い人らも住んでくれたらいいのに~」と。
仮に選手たちが住んだとして、これまでの生活を見るとデリバリーを頼むこともあったなかで、そういうところで困ることもありそうと伝えると「ご飯なら〇〇さんとか、あのお店とか、すぐそこのあそこも作ってくれたりしてくれるがじゃないかね。お願いしてみようか?」と。
チームとしても今後若手の選手育成にも注力していきたいと想いもあったなかで、地域の方たちに応援されて助けていただき、地域に選手たちが育てられている状況をイメージすると、かなり自分の思い描く地域に根差したチーム像に近いものがありました。
そうした背景や、まちづくりの視点からのeスポーツの展開、チームの誘致とeスポーツに対する滑川市役所の前向きな姿勢、なにより地主さんのご理解、様々なご縁もあり、富山県滑川市「BURNING CORE TOYAMA GAMING BASE」の設立に結びつきました。
BURNING CORE TOYAMA GAMING BASE
30年間放置されていた古民家を改修し、建物としてもチームとしても新しいチャプターの開始になります。
歴史や文化をそのまま感じられるよう、建物の改修に準じて出来る限りそのままを活かして、入口から縦に広がった奥行、特にその先に見える庭や蔵が素晴らしかったので、その景観も活かして壁などで遮らずに一望出来るように。
富山は冬場は寒いので暖房をし効率的に効かせるためと、集中できるように音などをある程度遮断する目的で、選手たちの練習スペースはクリアなガラスで間仕切り。写真で紹介します。
この、東京から富山への拠点の移転は単なる地理的な変更ではなく、歴史と未来、地域コミュニティとグローバルな視野の融合を目指して整備しました。要望に耳を傾けて整備にご協力してくださった大工さんや電気工事屋さんなど、皆さん、ありがとうございました。
地域との連携
滑川市とは、私が代表を兼任しているeスポーツ事業会社ZORGEと、まちづくり会社のTOYAMATOと、先だって10月に3者で「滑川eスポーツプロジェクト実行委員会」を発足いたしました。
初年度は、まずは地域の方たち向けの取り組みをメインとして、子どもたちから高齢者向けの取り組みなどを展開するほか、ライブ配信を通してのオンライン企画として滑川市のPR等を行っていきます。勿論、BURNING COREとも連携して更なるシナジーを作っていく構想です。
拠点施設から徒歩数分のところにある「滑川高校」の生徒会の方たちに来ていただいて、滑川の未来や夢を語るスクールも開校して「eスポーツと滑川」を主題として初回のディスカッションを実施しました。
自分たちの思い描くイメージはあるものの、それをただ一方的に表現するのではなく、地域の方たちにも理解してもらい、地域と一緒にイメージを具体化していきたいと思ってます。
新たな一歩に
拠点を富山県へ移すことと併せて「BURNIG CORE TOYAMA」へ、チーム名の変更とロゴマーク含めたリブランディングを今後実施します。こちらに関しましては、ロゴマークの発表と共に後日あらためてお知らせします。
eスポーツ業界は、昨今サラリーの高騰等からチーム存続が難しくなるケースが国内外で同時多発的に生じていたり、改めてeスポーツの価値を見つめ直す転換期でもあります。ポジティブな意味で。
eスポーツと聞くと、競技的なシーンやエンタメ性の強い興行などが印象強い一方で、これまで地方ならではの視点からeスポーツやゲームカルチャーのシーンを見て、体感して、実践してきました。今回「古き良き日本の魅力とeスポーツの融合」とのタイトルにしましたが、まだまだこのテーマにおいては入口に過ぎませんが、開拓出来る領域や、可能性、更なる広がりがあると感じてます。
だからと言って、「eスポーツの更なる繁栄のために」なんて、主語の大きなことを言うつもりもなく、まずは自分たちの近くの、周囲の地域の方たちに、ひとりでも多く応援してもらえるように、ここから挑戦していきたいと思ってます。
今回の記事、ゲーマーやeスポーツ業界以外の方達にも読んでいただけると嬉しく、関わる人や触れる人が増えてくれると有難いです。ぜひ、そういう方たちはこれをきっかけに、大会の配信や、チームの試合も見てみてください!
いよいよ、今月末から選手たちが集まってくることを考えると楽しみです。
以上、SNSでも良い反響があったので、舞台裏含めて想いをまとめさせていただきました。
長くなりましたが、全部読んだ方… ggです!
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