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よもやよもやではない敗戦。―カタールW杯アジア最終予選―

首都圏で震度5強の地震が発生した数時間後、今度は日本代表に激震が走ることになるとは誰が想像しただろうか?

初戦のオマーン戦を落としたものの次の中国戦で辛くも勝利し1勝1敗の日本は、ベトナム、オマーンに連勝し2勝0敗としているサウジアラビア戦に挑みました。

相手ホームということもありキックオフの時間は日本時間でAM2時。さすがにリアルタイム視聴は厳しかったので朝早めに起きて何の情報も入れずに視聴という形で見逃し配信をフル観戦しました。

結果はすでにご存知かもしれませんが1-0での敗戦となりました。
気分が重い中で勤務に赴いたのですが、下を向いていても仕方がないですね。

まずは各選手寸評から。


サウジアラビア戦各選手寸評

GK:権田
前半に相手のチャンスを防いだのは正面に来たということもありセービングとしてはそこまで大きな見せ場なしか。失点シーンもバックパスを奪われて1対1の状況になっていたのを決められたものなので仕方がない部分はあるが、股下を抜かれているしなんとか止められなかったかという気はしてしまう。他のシーンでは失点のところ以外にも不用意なバックパスがいくつかあったがそれらを冷静に処理できたのは良かった。

DF(センターバック):吉田
相手に交わされる部分は少なかったものの失点シーンでは完全に抜けさだれてしまった。他にもゴールキーパーとの連携でもズレがあったりとここ3戦ではやや評価が落ちるか。疲労が溜まっているのかもしれないが。

DF(センターバック):富安
大きなミスはなかったが、目立ったビルドアップも見られなかった。これは自分だけではなく周りの問題もあるだろうがセリエAでもやれているだけに最終ラインからのビルドアップももっと意識してほしかった。

DF(左サイドバック):長友
この2戦とうってかわって目立った攻撃参加はほとんど見られなかった。守備から入るというのが今回の戦い方としての決め事だったのかもしれないが、結果的に富安のビルドアップの機会を減らし、前線の左サイドでは南野が孤立してしまった。

DF(右サイドバック):酒井
攻撃参加が目立ち、オフサイドにはなってしまったが大迫への惜しいクロスも見られた。しかし、失点シーンの柴崎に対するパスは不用意だったかもしれない。

DF(左サイドバック):中山 ※後半46分に長友から交代
出場時間が短いため特筆すべき点はなし。1点ビハインドですでにアディショナルタイムに入った状況で交代ということ自体が謎。リードしている側がやるのならばわかるが・・・。

MF(ボランチ):遠藤
オマーン戦と比べるとだいぶ本来の動きに戻ってきた印象。ただ守備面での貢献は見られたが攻撃へのシフトチェンジはそれほどうまくいってなかった。

MF(ボランチ):柴崎
前半のミドルシュートこそ光ったものの、致命的なバックパスのミスで相手に1点を献上してしまった。酒井からのパスは不用意だったかもしれないが、それでも富安が中央でフリーになっていたし、権田まで戻すという選択もできたという状況では判断ミスと言わざるを得ない。ただそれ以外にもパスミスがあったり、ポゼッションから簡単にロストしてしまったりと全体として大きく精彩を欠いた印象。

MF(ボランチ):守田 ※後半28分に柴崎から交代
入りこそ凡ミスも見られたがその後は短い時間ながら運動量豊富で、一度奪われたボールもすぐにチェックに行って奪い返すなど前を目指す姿勢は見せた。

MF(左サイド):南野
長友の項にも書いたように慣れない左ウィングだったためかうまく攻撃に絡めず。中央に入ってきてのヘディングは良かったが相手キーパーの好セーブで防がれてしまう。

MF(右サイド):浅野
ロングパスに反応しサイドでフリーになるシーンは演出したが、そこからゴールにつなげることはできず。

MF(中央):鎌田
大迫への決定的なスルーパスは見事だったが、見せ場はそれ以外には特になく、全体としてはオマーン戦よりは少しマシだったという印象。

MF(左サイド):古橋 ※後半14分に南野から交代
投入序盤はそれほど目立ったところはなかったが、一番の見せ場は原口のセンタリングに斜めに走り込んであわせようとしたところか。惜しくもミートはできなかったが合っていればゴールにつながっただけに非常に惜しかった。

MF(右サイド):原口 ※後半14分に浅野から交代
古橋の項でも書いたセンタリングが唯一といっていい見せ場か。

MF(中央):オナイウ ※後半28分に鎌田から交代
ゴールに向かう姿勢は見せたが決定的な場面は作れなかった。

FW:大迫
酒井のクロスに反応した部分(オフサイドだったが)と、鎌田のスルーパスで抜け出してシュートを打ったところがハイライト。ただいずれもゴールはならず、またそれ以外の場面では特に目立ったところがなかった。


結果として、大迫のシュートが決まっていれば、古橋のシュートが決まっていれば、という形はあったが1-0で敗戦となってしまいました。


リスクを冒さないことが最大のリスク

 某格安携帯電話のCMのようになってしまいますが、森保監督の問題点としてはこれがありますね。サウジアラビア戦のスタメンは中国戦から4人が入れ替わっていますが、その4人とは、室屋→酒井、古橋→南野、久保→鎌田、伊東→浅野です。酒井と南野は怪我から復帰した2人で、久保、伊東はそれぞれ怪我、カード累積による出場停止ということで、結局の所スタメンはほとんど変えていないというのが事実です。
 例えばこの試合で失点につながるミスをしてしまった柴崎のところは途中から入った守田や川崎で大ブレイクしブンセスリーガのデュッセルドルフに移籍した田中碧を使うことはできなかったのか、あるいは大迫に代わってオナイウ阿道をスタメンにできなかったのか、などもちろん試合が終わってからの結果論ですがあまりにも長いこと固定メンバーで来すぎてしまっている印象が強いです。
 途中での交代カードの切り方も疑問です。失点シーン以外にもパスミスやポゼッションからあっさり奪われるシーンが頻発していた柴崎は本来真っ先に交代するべきでした。しかし実際にはウィングの2人、南野と浅野を古橋と原口に交代しましたが、南野も浅野も動きが悪いとかそういったことはありませんでした。後半はほとんど見せ場のなかった大迫は最後まで使い続け、1点ビハインドのアディショナルタイムでなぜか長友を中山に交代するという采配もよくわかりませんでした。

戦術的な引き出しの少なさ

 これは前回の記事でも言及したことですが、フル代表でもオリンピックでも日本代表は固執しているかのように4-2-3-1の布陣を使い続けています。ポジション的な配置だけでなく、攻め方としても1トップの大迫に当ててそれを2列目の選手が合わせに行く、という至極シンプルなもので、これを何年も使い続けていることに違和感を感じざるをえません。
 結果、オマーンにはしっかり対策を取られ、大迫とトップ下の鎌田、ボランチの2人が徹底マークされてゴールをすることができず、次の中国戦では伊東の突破から大迫が決めてなんとか勝利を収めましたが、それ以外に相手のゴールを脅かすようなシーンは皆無でした。
 そしてサウジアラビア戦では左サイドの連携の悪さなのか戦術的なプランとして抑えめに行ったのかはわかりませんが、左サイドからの攻撃は全く機能せず、右サイドからの展開で大迫あるいはさらにファーサイドの南野に合わせるといったパターンと、ほかは鎌田が大迫に出したスルーパスのみでそれ以外の攻撃パターンが全くありませんでした。2次予選までの明らかに格下の相手との戦いならばこれで通用したのですが、相手の強度が増してきた途端に全く機能しなくなっているようでは、この後さらに本戦に進めたとしても惨敗するのは火を見るよりも明らかです。後半にオナイウ阿道が鎌田に代わって投入されたあたりで意図的かどうかはわかりませんが、オナイウが高い位置を取ることで大迫との2トップのような形になりいくつかシュートチャンスが生まれたようには思えますが、中継を見ても選手たちが混乱しているような印象すらありました。結局の所は選手の個に頼ってなんとかしていたというような形でした。監督更迭の議論が巷で揶揄されるのもこれでは仕方ないでしょう。

オーストラリア戦に向けて

 4日後にはもうオーストラリア戦なので、このタイミングで大幅な選手の入れ替えや別の戦術を試すのは極めて困難でしょう。そしてこのタイミングで監督を代えるというのもなさそうなので、となると今あるコマで、手持ちの戦術で戦わざるをえないわけですが、せめて選手起用ぐらいは柔軟性を持たせないといけないでしょう。せめてスタメン発表のときぐらいは、これなら行けるかも?と思わせてほしいものです。
 サウジアラビアは直前にスタジアムの全席開放をしたため満員御礼の状態で、森保監督の言葉を借りれば"完全アウェー"だったのですが、今度のオーストラリア戦はホーム。もうそれを言い訳にはできないのだからしっかり結果を残してほしいです。

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