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【前編】「孤軍奮闘型リーダーのマインド」と「ファシリーダーのマインド」

マネジメント手法のひとつとして、1on1 の重要性がハイライトされています。業務推進・部下の育成やキャリア開発・メンタルヘルス管理などの手段として、上司・部下間の 1on1 には大きな有用性があります。
 
一方で、私は、管理職が1on1のスキルを身に付けて職場で実践すれば全てがうまくいくとばかり、上司・部下の関わりが 1on1 一辺倒になってしまうことに、危惧を感じてもいます。
 
本稿の前編では、メリットばかりが注目されがちな 1on1 のディメリットに敢えて意識を向けるとともに、その原因を探究します。そして、後編では、1on1 がうまく機能しない根本原因を解決し、個の主体性を引き上げ、チームの協働を促進する新時代のマネジメント手法「ファシリテーション型マネジメント」についてお話します。
1on1 と「ファシリテーション型マネジメント」は、相互に補完し合う、マネジメントの両輪と言えます。


1on1がはらむ否定的要素

ある人との会話で、「管理職の 1on1 地獄」というショッキングなフレーズに出会いました。その “あるある” を羅列すると、こんな感じです。

  • 部下との日常的な 1on1 に多大な時間を費やしているため、自分の時間がない。

  • 部下ともっと 1on1 をしてあげたいけれど、タイムリーに時間が取れない。

  • 部下たちに十分な支援ができておらず、思うように動いてくれていない。

  • 自分で考えられるはずのことも、1on1 で相談される。

  • 事件が勃発してから、部下との間で大事な情報が盲点になっていたことを知る。

  • 自分も部下も目の前のことを片付けるのに精いっぱい。

  • 管理職としての大事な業務に手が届かず、後回しになっている。

  • 至らない自分を責める。

  • 心身共に慢性的な疲労を感じて、モチベーションが低迷している。

書いているだけで気持ちが重くなってきますが、全てではないにしても、いくつか思い当たる節がある方はおいでかもしれません。
 
一般的に、責任意識が強い管理職が業務推進のために 1on1 を多用しすぎると、部下を自立させるどころか、かえって部下の依存が深まるという逆効果が生じる可能性は否めません。上司が、部下の代わりにバッターボックスに立ってしまい、自分が何とかしてあげなければと細かい情報を採ろうと介入します。部下は当事者意識が薄くなり、自分で考えることを放棄して、上司の答えをもらおうとします。その結果、上司の時間は枯渇して、重要なことに手が付けられないので、いつも緊急対応に追われるという悪循環になってしまうかもしれません。
 
個人的に上司と相性が良くない部下は、キャリア開発や人事考課の面談を「仮面 1on1 」でやり過ごします。内面では強い違和感や反発を抱えつつも、当たり障りのない表面的なやり取りをして、そのあげく、誰にも相談せずに離職を選んでしまうなど、残念な結果を招く危険性もあります。
 
こうしたことが起きてしまうのは、上司・部下が、良くも悪くも自分と相手だけの一対一の閉鎖的な関係性に陥って、お互いの特定の一面しか見えなくなり、視野が狭くなってしまうことが影響しているように思います。
 
本来はA部下とB部下の相互で話し合って解決すべきことなのに、どちらもその課題を上司に個別に相談してくるということも珍しくないでしょう。そんな時に、「じゃあ3人で話そう!」という選択肢を思いつけるかどうかで、その先が大きく変わるはずです。

関与の形式ではなく、マインドの問題

誤解を避けるために敢えて申し上げると、私は、1on1 という関与の形式がネガティブな結果を招く原因だと思っているわけではありません。
 
原因は関わりの形式や手法ではなく、上司のマインド(捉え方や思考の傾向性)にあると思っています。例えば、以下のようなマインドがその一例です。 

  • 業務の知識と経験がものを言う

  • 自分がメンバーを鼓舞し、導く必要がある(メンバーは自走できない)

  • 課題は解決すべきものだ

  • 誰の責任なのか?が気になる

  • 正しいか、間違っているか?が気になる

  • 答えは何か?が気になる

  • 違いや対立は厄介だと思っている

 上記は、私が「孤軍奮闘型」と呼んでいるリーダーのマインドの特徴です。
 
仕事ができて責任意識が高いリーダーにありがちで、常に自分が何とかしなければと肩に力が入っています。このマインドで 1on1 を多用すると、部下に過干渉になり、相手の話を聞くよりは自分の答えを押し付けてしまい、部下の依存や反発を招く否定的な影響をもたらしてしまうのではないかと、私は考えています。1on1 を頻繁に実施しているのにも関わらず、大事な情報を後から知ることになるということが起きてしまうのも、1on1 の場で上司が自分の知りたいことだけに意識を向けているからではないでしょうか?
 
スキルとマインドは、パソコンに例えれば、ちょうどアプリケーションソフトとOSに当たります。最新のZoomはWindows 7には載らないように、1on1 のスキルを有効に使いこなすには、それにふさわしいマインドの土台が必要です。
1on1 の研修では、「相手は自分とは異なる思考や行動のパターンを持っています、相手に興味を持ちましょう、傾聴しましょう、答えは本人の中にあります」と習います。これはいわゆる「コーチのマインド」ですが、研修で聞いて頭でわかっても、すぐに身につくものではありません。

マインドの開発には時間がかかる?

実を言えば、私も素の自分は「孤軍奮闘型」なのですが、人間の心理と行動を扱うNLPの学びや、20年余のコーチング体験(コーチングを学ぶ×受ける×提供する、3つを同時に行う)を通じて、少しずつ自分のマインドを「コーチマインド」へと、今も現在進行形で、作り替えてきています。 
 
「コーチマインド」の醸成には時間がかかります。スキルを使おうとしながら、うまくいかない試行錯誤や、なぜうまくいかないのか・うまくいったのか等の内省を繰り返しながら、自分の考え方の偏りや無意識的な囚われに気づいていく、コツコツとした日常の実践が必要です。プロのコーチでもない忙しいビジネスパーソンが、こうしたことに何年もかけるのは非効率で現実的ではありません。
 
では、どうすれば?
 
ここに朗報があります。短期集中型で、効果的にマインドシフトが起きるように用意された(株)ピュア・エッジの Edge Faci-Leader(エッジ ファシリーダー)のフィールドとプロセスの中に入れば、数か月である程度の体感が得られます。
 
「ファシリーダー」とは、“一対多” の働きかけから “多対多の対話” を生み出し、その場に居る個々の主体性を引き上げ、チームの協働を促進する新時代のマネジメント手法、「ファシリテーション型マネジメント」を駆使する存在です。「ファシリーダーのマインド」は、「コーチマインド」と重なり合うものですが、チームという多人数に一度にコーチ的に関わるという意味で、私は敢えて「ファシリーダーのマインド」と呼んでいます。
 
後編では、「孤軍奮闘型リーダー」と対比する形で、「ファシリーダー」のマインドとその影響力についてお話します。


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