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【読書日記】11/7

『君をみつめてる』の作者ジミーは台湾の人です。私たちと同じ東洋人なので、彼の作品は親しみやすいです。理屈っぽいところがなくて、自然や人間の感情をまるごと抱きしめてしまうような柔らかさがあります。

この本は喜怒哀楽といった人間が持つあらゆる感情を、時にユーモラスに時に切なく、時に幻想的に描いたもので、哲学的であり同時に詩的なところもあります。ジミーの描く優しくて温かみのある絵が本当に好きです。それを眺めていると、心の中にいろいろな感情が湧きあがります。

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104ページの象をかついで出勤する話が好きです。押し潰されそうになっても、必死になって歩いている男の姿が描かれています。かなり大変そうですが、慣れっこになっているとか。象のことが心配という思いやりが好きです。シュールで馬鹿げた話ですが、ドン・キホーテ的な男の行動を応援したくなります。どんな人間も、こんなおバカなところを持っている気がします。

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『西行物語』は、『山家集』の詞書や西行の説話をまとめたものを、現代訳したものです。読みやすい現代語訳なので、すらすら読めます。西行は貴族から武家へ覇権が変わるときに、自分らしく生きた人であることが分かりました。

西行は桜の歌人と思っていたのですが、恋や月の歌にも良いものがあります。「逢ふまでの命もがなと思ひしはくやしかりける我心かな」。これは、あなたに会えたら死んでも良いと思っていましたが、会うことができたらもっと会いたいと思い、命が惜しくなりましたという切ない恋歌です。

「いかでわれ今宵の月を身にそえて死出の山路の人を照らさん」。これは西行の宗教心がよく出た短歌です。冴え冴えとした月の光が、脳裏に浮かんできます。月の光のように死にゆく人を照らしたいという、優しさが好きです。

西行は歌人と僧侶という二つの面を持っていました。歌を作るのは祈りのようなもので、僧侶としての修行の支えになったそうです。だから西行の歌は、他の貴族たちの歌にくらべて優美なところはありませんが、清らかで澄み切ったものが多いです。

西行は平清盛のように権力を持って、自分の思うままに行動することはできませんでした。でも彼の人生は和歌を通して美しいものを求めつつ、僧侶の修行で煩悩を断ち切り、人々の幸せを願った幸福なものでした。西行のようになるのは不可能ですが、彼の生き方を少しでもお手本にしたいです。

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