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夏八木 秋成
2023年9月20日 18:12
前回のお話はこちら第一話とあらすじ10 薄いグレーのカーテン越しに朝の光が差し込んで、柔らかく部屋の中を包み込んでいく。 東京と違って、この辺りは5月でもまだまだ肌寒いから、私は眩しさに眉間を寄せながら毛布を顔半分のところまで掛け直す。 遮光カーテンにしてくれれば、あと2時間は眠れるはずだ。これから更に日の出の時刻は早まるのだし、すっかり夜型になってしまった私に朝日の目覚ましは強烈
2023年9月23日 14:45
前回のお話はこちら第一話とあらすじ11 母が休みの日は、なるべく一緒に昼食を取るようにしている。と言っても、私はいつも通り明け方に寝るので、昼ごろに尿意と空腹で起きるだけで特に生活リズムに変わりはない。 台所から忙しなく聞こえてくる料理の音をしばらく聞きながら、私は次第に増えていく左腕の傷を一本ずつ指でなぞった。東京にいた頃のものは大分薄れてきてはいるけれど、じっくり触ると盛り上がっ
2023年10月4日 16:06
前回のお話はこちら第一話とあらすじ12 ほぼ毎日のように、丸子(まん丸の子供だからと、気づいたら母が名付けていた)は花をベランダに置いて行った。ちょうど私が煙草を吸う昼過ぎにやってくるものだから、その花を私が拾って花瓶に生けるのがルーティンとなっていった。 丸子の持ってくる不思議な形の花を調べると、「オダマキ」という名前であることを知った。紫色のものが日本では主流のようだけど、西洋オ
2023年10月11日 23:17
前回のお話はこちら第一話とあらすじ推奨BGM13 今夜はいつも以上に肌寒くて、太陽の温もりを捨てた風がくたびれたジャージの隙間を駆け抜けていった。コンビニの前を通り過ぎて、そのまま山の方へと進んでいく。観光用に作られた広めの道路には、車はおろか野生動物の気配すら無かった。私と風にざわめく木々の葉だけが、世界を動かしていた。『あんたがまなちゃんとこ行こうとしたら、連れ戻せんくなっ