「生き方」を学べる人生で一番大切な1冊。〜三浦綾子 著『塩狩峠』の紹介〜
三浦綾子 著『塩狩峠』(新潮文庫)を紹介します。
まずはじめに。
『塩狩峠』という作品は、今まで1000冊以上を読んだ私の人生の中で、一番大切な1冊です。この作品を初めて読んだのは中学生の頃ですが、今まで何度も再読してきた本。出会えた事に心から感謝している作品です。
人生最高の1冊と述べる理由として、この『塩狩峠』から私が学んだ事を紹介します。
自分の「正しい」を常に問い直そう。
人間は、知らず知らずに正しくない行いをしてしまう生き物なのだから。
裏表紙のあらすじと物語序盤を紹介しながら、「日々の生活で『正しい』を問い直す大切さ」を教えてくれる本である事を、このページでは説明していきます。読了目安は4分30秒です。物語序盤のネタバレを含みます。
根拠1:裏表紙のあらすじ
この作品、物語の衝撃的なラストが裏表紙に書かれています。
結納のため札幌に向かった鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた。
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。
三浦綾子(1973)『塩狩峠』新潮文庫、裏表紙
このあらすじの中に、「正しい」とは何なのかを考えさせてくれる裏表の事実があります。それは、
表:乗客の命を救った事。
裏:最初の2文字「結納」が表している事。つまり、結婚相手を悲しみのどん底に叩き落とした事。
永野信夫の最期の瞬間。
死して他人の命を守るべきか、結婚相手の為に生き残る可能性に賭けるべきか。
どちらが「正しい」選択なのだろう?
正直、私には分からない。
乗客の命を救った事は、人として褒められるべき「正しい」行いだと思います。しかし、結婚相手、大切にすると誓う相手を悲しませないように努める事もまた、正しいはずです。
私には、これから先の人生を共に生きていきたい大切な人がいます。だからこそ、永野信夫は最期「正しくない」事をしたとも思えるんです。
この作品は一見、乗客の命を救った青年の美談に思える作品です。しかし実際は、本当に「正しい」行いをしたのか、読者に考えさせる物語なんです。
根拠2:物語序盤の5章
明治十年の二月に永野信夫は東京の本郷で生まれた。物語は永野信夫が尋常小学校三年生の頃から始まります。最初の5章で描かれる「正しい行い」「正しくない行い」を見てみましょう。
第1章「鏡」
ある日、信夫と友達の虎雄の2人は屋根に登って日向ぼっこをしていた。
些細な口喧嘩から、信夫は胸を押され、屋根から転げ落ちてしまう。
信夫は、士族の自分が、町人の子である虎雄に突き飛ばされたと、恥じていた。
しかし、そんな信夫を父は叱った。信夫が「ぼく、町人の子なんかに…」と、自分を士族、友達を町人と区別したからだ。
父は信夫に「人間はみんな同じなのだ」と諭した。
第2章「菊人形」
母は信夫を産んだ二時間後に亡くなった、そう聞かされて約10年生きてきた。育ててくれた祖母は母を嫌っていた。
そんなある日、普段は構ってくれない父が、信夫に「菊人形を見に行こうか」と外出を提案する。そこで、変な女の子と出会う。父を「おとうさま」と呼んだのだ。
そのことを家に帰って祖母に話すと、祖母は父を「親不孝者!」と罵った。祖母は、自分は正しい、父は正しくないと決めつけていた。
その夜、祖母は脳溢血で亡くなった。
第3章「母」
祖母の四十九日もすんだある夜、母が家にやってきた。母は心の底から信夫との再会を喜ぶ優しい人だった。
信夫「どうして、この家にいてくれなかったの?」
父「おばあさまが、このおかあさまを気に入らなかったのだ」
母は、祖母が嫌っていたキリスト信者だった。信夫は祖母から、キリスト信者は悪者だと、教えられてきた。「人の血をすすったり、人の肉を食べる」「日本の国を亡す」と。
キリスト信者になると、実の息子でも勘当されることが多かった時代。嫁がキリスト教徒だったと分かれば離縁もやむなし、そう思われていた時代。
しかし、キリスト信者なのに優しい言葉をかけてくれる母。信夫にはどうしても、母が悪い人には思えなかった。信夫と父、新たに加わる母と妹、4人の共同生活が始まった。
第4章「桜の下」
四年生になった、とある春の日、桜の木の下で級友たちが噂話をしていた。トイレに女の髪の毛と血、そして聞こえる女の声。一同「おばけが出るんじゃないかな?」
信夫「おばけなんかいないって、おとうさまがいっていた」
松井「そうかい。じゃ、ほんとうにおばけが出るかどうか、今夜八時にこの木の下に集まることにしないか」「みんなもくるだろうな。どんなことがあってもだ」
夜7時半、雨が降り出していた。信夫は、つまらない約束だから行くのはやめよう、と考えた。しかし父は言った。
父「信夫、行っておいで」「約束を破るのは、犬猫に劣るものだよ」「信夫、守らなくてもいい約束なら、はじめからしないことだな」
学校に行ってみると、たった一人、来ていた。
吉川「約束だからな」
松井は来ていなかった。信夫も父に言われたから渋々来た。
吉川は「雨降りだから、仕方がないよ」と松井たちを責めなかった。吉川をほんとうにえらいと思った。
第5章「かくれんぼ」
桜の木の約束以来、信夫と吉川は親友になった。吉川の家に遊びに行くようになった。吉川の妹、ふじ子とも仲良くなった。
吉川の家には、僧が来て、仏壇を開け、経をあげていた。自分の家では、祖母が死んで以来、仏壇は閉ざされたままだった。祖母をかわいそうに思い、母が冷たい人間に思われてきた。
別の日、吉川が「いいものを見せてやろうか」と言ってきた。1冊の本だった。中には地獄と極楽の絵があった。
・地獄って悪い奴たちが落ちるところ
・いい人たちが行ける極楽
信夫は考えた。地獄に行った奴は、一度だけ悪いことをしたのか? 毎日悪いことをしたのだろうか? ただの一度もよいことをしなかったのだろうか? 極楽に行く人は悪いことを一度もしたことがなかったのか? 妹と喧嘩をする自分は悪い。自分は地獄に行くのだろうか?
夏休み最終日。
虎雄、ふじ子、妹、信夫の4人でかくれんぼをした。虎雄が鬼のとき、信夫の隠れる物置小屋にふじ子がやってきた。一緒に隠れた。いつまでも見つからないといいな。信夫は「甘っ苦しいような楽しさ」を覚えた。
信夫が鬼のとき、吉川に会った。吉川は北海道に行くと言った。吉川とふじ子、大切な2人と別れることとなった。信夫の心の中で、ふじ子への想いが消えることはなかった。
結論
このページの本題に戻ります。
序盤の5章を読んでいただければ分かるように、信夫は日々の生活の中で「正しい事」「良い事」は何かを教えられる、考える。
・人を見下してしまう事。
・固定観念に縛られて疑わない事。
・約束を些細なものと軽んじてしまう事。
どれも日常生活で犯しがちな「正しくない事」です。物語の最後まで、信夫は自らが犯してしまう「正しくない事」を問い直し、正そうとする。
そして(しかし)、永野信夫は人生の最期に「正しい事」と「正しくない事」を同時に行い死んでしまう。
以上のことから、『塩狩峠』という作品は、「正しい」と思える事は本当に「正しいのか」を問うきっかけを与えてくれる作品だと思います。「人間の生き方」を学べる良書だと断言します。
私は今までに1000冊以上の本を読んできました。中学生の頃から1週間に1冊読んだとして、1年で50冊、20年で1000冊以上です。そんな人生の中で、私が一番出会えて良かったと思える作品が『塩狩峠』です。
私が初めて中学生の頃に読んだように、ぜひ中学生に読んでほしい。この作品から「人間の生き方」を学んでほしいと心から願っています。
まとめ
三浦綾子 著『塩狩峠』は「生き方」を学べる人生で一番大切な1冊。今まで1000冊以上を読んできた私が薦める、中学生にぜひ読んでもらいたい、「人間の生き方」を学べる本。
『塩狩峠』から学べるのは、自分の「正しい」を常に問い直すことの大切さ。人間が知らず知らずに正しくない行いをしてしまう生き物である事を戒めてくれる。
物語の最初から最後まで、主人公・永野信夫は、人々が犯しがちな「正しくない事」を正そうとする。『塩狩峠』とは、日々成長する信夫から、人間の生き方を学べる作品。
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