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店、見せ、魅せ

比較的有名な観光地の育ちで、通っていた学校の周りは、土日ともなると観光客が押し寄せるのが日常風景だった。下校路までの道のりには小売りの店舗が多く立ち並んでいた。そういう環境の中で育った。

東京や大阪のような大都市ほど多種多様であったり、カルチャーの香りを感じるような施設が多くあったわけではないにしろ、世間の大多数の人たちと比較すると恵まれた環境に育ったと思っている。

ただ、奈良に「大仏商売」という言葉があるように、
学生の頃は、「この町では店を構えれば勝手に続いていく」ようにも感じていた。この町だからこその1次、2次産業を基にしたような物の販売をしておらず、地名に誘われてやってくる観光客だよりで営業しているだけの店に思えたのだ。
「この土地の地味があるからこその食事の提供をしている」ようなこと、「この土地に連綿と受け継がれる技術・産業だからこその商品を販売する」ようなことでないと、価値が低いと思っていた。
極端に言えば、程度の低い商売だと感じていた。

会社に勤めている今では、鼻で笑うような気持には全くなれない。責任も大して抱えていない一被雇用者の身からすれば、店を構え、商売を続けられるということはとても凄いことだ。逆立ちしても真似できないようなこと、まさに「業」だ。

それはともかく、中学生、高校生の頃から、お店に入り、買いもしない商品をジロジロ見て、店主と話すことを趣味にしていた。店の魅力は、商品と店主の人となりの両輪だと思っている。小店舗、非チェーン店の店は両方あって初めて店としてのベースが出来て、それから必死の経営努力と経済状況と運とかなんでしょうか。

そういった店主・商品を見た時に
「なんだこれは」
「頭の中にチェックしておこう」
「次は何が見れるのか」
みたいな気持ちが生まれると、次来る動機が生まれます。新規性であるとか、シャープなコンセプトであるとか、シュッっとしたデザインであるとか、グッとくる店主の売り文句であるとか、そういったことを出発点にして、その店のことを覚えるわけです。

こればっかりは通販では無理。通販のイメージ写真では捕まえられません。どうしても客の興味や心をガッチリグリップするパワーは店に勝てません。
せいぜい料金です。
通販サイトはいっぱい商品があって百科事典みたいで面白いんですが、商品の魅力を伝えるパワーに欠けます。その商品をどう捉えて、どう使って、何が良くて、何が新しくて、誰がどう評価して、自分のためにどうなって、そんな色々な切り口を熟考して取捨選択した商売トークと客を観察する力があってこそのお店だろうと思っています。

あと、個人的に思っていることとして、重要な情報や知識は基本的に捕まえるのに絶対コストがかかります。あるいは、クローズです。
だからこそ、人対人で言葉のやり取りをして、商品の購入に加えて、価値のある情報を得たいという気持ちが相まって、お店に行きたいと思っています。

お店の未来なんですが、通販には勝てません。その代わり、通販は運輸なしには成立しません。運輸も合理的に経営せざるを得ません。一人一人の家に行ってられません。(たぶん)
じゃあ、どうなるか。

PUDOみたいな宅配ボックスが店舗内に大量にあって
使い方を教えたり、運搬人の対応のために管理人を1人、2人雇って常駐するスタイルの店舗が増えて行くんじゃなかろうかと思ってます。

いちいち家だのマンションだの回ってらんねーわっていうことです。あくまでも大都市だけです。駅、あるいは大型トラックを停めるのに適した幹線沿いの土地などに、倉庫系の会社、運輸系の会社、宅配ボックスの会社、デベロッパーあるいはインフラ系の会社が組んでそんなことやるんじゃなかろうかと思ってます。
自動運転・自動宅配システムの出来にもよりますが、受け取る人の不在の問題もあるので、結局宅配ボックスなんじゃなかろうかと。

あと、生鮮食品系の商社・小売りあたりが冷蔵・冷凍系の宅配ボックスを兼ね備えたやつもそこに置きます。ホシザキとか三菱あたりと組んで。あとは、宅配ボックスへ入れたものを廃棄していい期間と権利の取り扱いだけ整備すれば完了です。入れてる期間の長さだけお金がペナルティで取られるとかもあるかもしれません。

お店は、そのファサード・店構えから人を惹きつけるかどうかが決まると思っています。でもそれは、運搬の技術や製造の技術の上に成り立つ、極めて脆く、利益率の低い行いなんだろうと。それでも、お店があるからこそ、人が知り、魅力が伝わり、広まっていくという状況は決して変わらないと思っていて、その点のみに絞ったショールームのような店舗が目的合理的に残っていく予想をしたい気持ちもあります。

たいがいのことは目的合理的には動かないので、あまりあてにはなりません。

お店というものがとても好きで、未来のお店がこの社会の中での商行為を成り立たせる上で、どういう立場を持つようになるか、とても気になるテーマです。

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