見出し画像

6月の北海道の雪は幻か

これからどんどん寒くなっていきますが、北陸にお住まいの方なんかは、1メートルを超える雪が積もった朝には戦々恐々、車を取り出すために丸2時間も雪かきをさせられる羽目になってかなわんわ、という気持ちなのでしょうか。

その方々のご苦労は察しきれないものがあるのですが、なかなか雪が降らない地域にいる自分としては、やはり雪はどこか非日常的で、幻想的で、テンションがアゲアゲになり、バイブスが高まってしまうものです。

色づきはじめた街、気づけば乗り遅れたみたい。目を閉じた僕は、冬の冷たさを今でも暖かく感じている。雪原の大地に二人きりの吐息が舞う。つないだ指先に大切な気持ちをおぼえたよ。駆け出す世界に心を奪われて、無邪気な瞳にゆれる。降りそそぐ雪は優しく笑顔つつむから、僕は永遠を願った。

……というのは丸々L'Arc~en~Ciel『winter fall』の1番の歌詞の引用ですが、雪はこのような美しい情景を映し出してくれるものというイメージがある。

この曲が冬の歌なのか春先の歌なのかについてはかれこれ20年ほど考え続けており、卒論のテーマにしようかと思ったこともありますが、すでに英文学のゼミに入っていたので断念しました。

ちなみに上記の引用は長すぎるので、文字数を稼ぎ過ぎですと先生に添削されてしまいますね。

「駆け出す世界に〜」からの引用でも伝わるので、AメロからBメロの部分は削るべき。あと、引用なのに勝手に句読点を追加するのもアウト。どこを強調したいのかをはっきりさせましょう。口頭諮問で突っ込まれるぞ。

まあ、この時期にまだ卒論を提出していないという人はあんまりいないとは思いますが……。もしいたのなら、こんなもん読んでいないでさっさと書きなさい。ダブるぞ。

ここではやはり、「降りそそぐ雪は優しく笑顔つつむから僕は永遠を願った」がポイントです。雪とは優しいものなのです。

作者のhydeさんは和歌山県のご出身ですが、やはり雪があまり降らない地域なので、どこか憧憬を持っていてこのような美しい表現をなさったのでしょう。

永遠を願った、ということは、永遠ではないと最初からわかりきっていたということです。雪はそのうち溶けます。だいたい、水の塊でしかないのだから当然です。とても儚い。

人の夢と書いてはかないと読みますが、夢というのは現実にならないからこそ夢であり、表面的には綺麗に見える雪は実際には泥も砂も混じっていて、それを優しく感じるのは本当は勘違いです。

などと述べてしまうとドラマチックさの欠片もありませんが、粉雪はざわつくアスファルトの上シミになっていく……、おっと、これは全く違う曲の歌詞の引用ですね。

高校の修学旅行では北海道に行ったのですが、6月にもかかわらず雪が降っていて、釧路空港に着いてすぐに長袖の服を買っことが印象深いです。

数時間前まで滞在していた大阪とはまるで気温が違いすぎて、半袖のままだと凍えそうだったのです。

バスガイドさんによると、さすがに北海道とはいえ、6月に雪が降るのは相当に珍しいことなのだそう。

旅行の具体的なルートは忘れてしまったのですが、摩周湖を訪れた記憶があります。日本で最も透明度の高い湖と呼ばれ、雪化粧の中でのその景色は美しいものでした。

帰りのバスでは、北海道ならでは(なのかどうかはわからないけど、地元ではまずあり得ない)の、ずーっと交差点のない、恐ろしく長い一本道の脇に積もる雪を、ずーっと眺めました。

というか、途中からバスガイドさんが休憩に入り、クラスメイトは疲れて寝てしまうため、それしかすることがなかった。

たまにガソリンスタンドが見える他は、建物がほとんどないので、文字通りに真っ白な世界。歩道に人が通らないので、誰の靴跡もない。もともとそういう色だったかのように、雪がただただ光っていました。

こんな綺麗な景色がすぐそこにあるのに、みんな寝るなんてもったいないなあ……と思いつつ、かくいう自分もいつの間にかうつらうつらして寝ていました。

目覚めると、もう窓の外は真っ暗になっていました。どこだか忘れましたが、宿泊先のホテルに着いたのです。

雪があんまり降らなかった地域へと移動したのか、それとも自分が寝ていた数時間のうちに除雪車が頑張っていたのかは不明ですが、とにもかくにも、修学旅行の3泊4日、それ以降に6月の北海道の雪を見ることはありませんでした。 

ちなみに他の日はいずれもカラッカラの晴天で、せっかく買ったフクロウ柄の長袖のシャツの出番はなし。もしかしたら、初日のあの雪は幻だったのだろうか。

どちらだとしても、だんだん忘れつつある修学旅行の思い出はどんどん美化されていっています。

実際は多少は靴跡が付いていたのだろうし、車は通るのでタイヤ跡はいっぱいあったはずですが、一面の銀世界が広がっていたような気がするのです。勘違いかもしれないけど、別に願わなくても思い出は永遠で、その雪はずっと溶けない。 

サウナはたのしい。