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上の原とはどこだったのか

バスが苦手です。特に、あまり知らない地域のバスが。

地元や隣の市あたりのバスならまだ、普段は自分では通らない道に入っても、なんとなく地理が把握できます。でも、初めて行くところのバスなんかだともう、走り出した途端にちんぷんかんぷん。

以前、群馬県を訪れた際に、伊香保おもちゃと人形・自動車博物館というところに行きたいと思って、アクセス方法を事前に調べました。ネットの情報では、JR渋川駅で下車して、そこからはバスあるいはタクシーで、と書いてありました。

駅からはずいぶんと距離がありそうで、タクシーを使うと相当な出費になるだろうなあと思い、伊香保方面に向かうバスに乗りました。

そのバスが伊香保方面行きであること、そして、伊香保おもちゃと人形・自動車博物館の最寄りだという上の原という停留所で下りれば辿り着けることを、何度も確認して乗ったはずでした。

そして揺られること30分。商店や民家の多い渋川駅周辺を離れたバスは、だんだん山の中へと入っていきました。

街からこんなに近いところに山があるのか……と感動しつつ、景色を眺めてみる。地元にも摂津峡せっつきょうという景勝地はありますが、それとはまた違う色合いを見せる、赤々と映える山。

それを過ぎると今度は、昭和の匂いを感じさせる木造の旅館が建ち並ぶのが見えました。それは伊香保の温泉街でした。

そして、バスはそこで停まり、そこが終点であることを運転士のおじさんが告げました。

ん?いや……、あれ?ちょっと待って。上の原を通っていないのだが?別に、山を超えた温泉街まで来るつもりはなかったのだが?

そうやって混乱しているうちに、バスはさっさと去ってしまいました。

仕方がないので、温泉街を少しばかり歩き、5月下旬の美しい森林の風景を楽しんだのですが、その頃は風呂屋に興味がなかったので、伊香保温泉には入らず。いったい何をしに行ったのか。

旅行シーズンではなかったからか、自分以外には地元民っぽいおばあちゃんたちしかいませんでしたが、おばあちゃんたちは普段から見慣れているであろう山の美しさを絶賛し、日本に伊香保があって良かった、と感慨深げにおっしゃっていました。

そのご当地自慢を耳に挟みつつ、もしかしたら、さっきは本当は上の原を通っていたのだけど、自分がうっかりしていて気づかなかっただけかも……と、山道の坂を下りながら考え直しました。

そして帰りのバスでは、ひとつひとつのバス停に注意を払って、上の原で下車しのがさないようにと気を張っていたのてすが、どういうわけだか、そこでも上の原を経由せずに、渋川駅へと戻ってきてしまいました。

未だに、あの時どうしてあのバスが上の原に連れて行ってくれなかったのかわかりません。ルートを変更していたのか?ていうか途中の山はなんだったのか?幻影?上の原ってどこだったんだ?

あるいは、伊香保おもちゃと人形・自動車博物館なんて本当はなかったのか?有名なきさらぎ駅の話みたいなやつか?

しかし、公式ホームページでは、芸能人が来訪している写真がたくさん載っている。中川翔子さんや、ガレッジセールのおふたりや、ももいろクローバーZの皆様は、実際に伊香保おもちゃと人形・自動車博物館の中に入ることに成功しているもよう。

なぜ自分は行けなかったのか。何か徳を積まないと辿り着けないのだろうか。

ちなみに近くには珍宝館というスポットもあり、その名前のとおりのモノを模したアートが大量に展示されているらしい。うーん。行きたい。

あと、生命と性ミュージアムやら、アダルト保育園なる怪しすぎるところもあるらしく……。まだおまえには早かったということなのだろうか。なんせ14歳ですし。


サウナはたのしい。