グルメと異国情緒
今や街のそこかしこで見かけるインドカレー屋さんですが、一体いつ頃からあんなに増えたのでしょう。
少なくとも自分が学生の時分には、そう頻繁に見かけるものではなかったはず。
ネパール料理店を謳った看板や、タージマハルエベレストのようなチェーン店は以前からちょくちょく存在しましたが、個人や家族での経営っぽいインドカレー屋さんというのは、かつては珍しいものでした。
それが今や、街にすっかり溶け込んでいて、え?いつの間にこんなところに?と思うような立地にある。
PayPayやLINE Payなどのバーコード決済が使えることをやたらと強調しているところが多く、メニューはAランチorBランチといったように、ざっくりと分かれていることが多い。
昼間にいったん閉店して、夜になると再開するという、こだわりのあるラーメン屋みたいな営業スタイル。スパイスの仕込みとかがあるのだろうか。
何度か中に入って食べてみたことがありますが、どこに行ってもナンがでかい。これ食い切れるのか?と心配になるほどでかい。
しかも、店舗によってはおかわり無料だったりする。こんなアホみたいにでかい小麦粉の塊を何回もおかわりするのはギャル曽根さんくらいだろと思いきや、ルーを漬けているうちにだんだん足りなくなっていき、いつの間にかすっぽりなくなっていたりする。
おかわりをすると、ナンが焼き上がるまでの数分間は待つことになるのですが、だんだんルーが固まっていくのを眺めながら、ろくに聞いたことのない音楽を聴く。本当に聴いたことのないような音楽だ。
いやもちろん、実際はポケットの中のスマホでSpotifyを検索すれば聴ける曲なのかもしれないけど、この店内のスピーカーからしか流れることのない特殊な音楽なのだと思ったほうが楽しい。
ビッグアーティストを何人も知っているアメリカや、ヘヴィメタルが日常的にチャート上位に入っているというフィンランドとかのヒットソングならまだなんとなくの想像くらいはできるが、インドの楽曲となるとまるでわからない。
さらに大抵はインストゥルメンタルなので、歌詞を読み取ることもできない。まあ歌詞があったところでヒンディー語だと思うので、どちらにしても聴き取れないだろうけど。
謎に満ちたI-POP(India-POPの略、いま私が勝手に考えた造語)に酔いながら、今度はチャイに口を付けてみる。
このチャイというのも不思議だ。インドふうのお茶ということだが、どう考えてもお茶にしては甘い。
日本の基準からすればだいぶ辛いカレーに、日本の基準からすればだいぶ甘いお茶。形式としては似たような料理なのに、国が違えば味は全く変わる。
このような異国情緒が身近に感じられるのがインドカレー屋ですが、そもそもマクドナルドやケンタッキーが日本に上陸してきた当初も、こういう不思議な感覚だったのかもしれません。
今では見慣れているので何も珍しくありませんが、赤髪の変なピエロや白髭メガネのでかいおっさんがハンバーガーやフライドチキンの店の看板にいるの、ものすごいインパクトだったのではあるまいか。
マックシェイクなんて未知のドリンクだったはずで、マックフルーリーなんて一体どうやって食すものなのかさっぱりわからなかったでしょう。
と書きながら気づいたのですが、自分、マックシェイクを飲んだことがないし、マックシェイクがどういうドリンクなのかよくわかっていない。
どちらかといえばモスバーガー派とはいえ、マクドにだって何百回も足を運んでいるし、他人がマックシェイクを飲んでいるところも見ているはずなのだが。
ちなみに関西人でもマックシェイクと言います。マクドシェイクとは言わない。マクドフルーリーとも言わない。
初めてのマックシェイクはどんな味なのだろう。脳内でハンバーグラーやグリマスといった往年の愉快な仲間たちが迎え入れてくれるのだろうか。
かつてマクドのトレイシートに描かれていたあいつらは、一体どこに消えたのやら。昔はハッピーセットのおもちゃといえば、あいつらがクネクネ動く人形だった。
というようなことを考えながらフードコートを歩いているうちに、昼休みが終わりそうになったので、テキトーにコンビニに寄って帰りました。
異国情緒もいいが、やっぱ部屋の隅っこでどん兵衛を啜るランチタイムがいちばん落ち着くよなあ。
サウナはたのしい。